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女神様に溺愛されたアイは宝石魔法を覚えて、モフモフな使い魔と一緒に異世界スローライフを送る  作者: 色石ひかる
第5石_エメラルド

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第33話_神殿と大聖女

 神殿の中に入って、今はタラーキンさんが私の目の前にいた。制服の模様になっている金色の2本線が目を惹いて、年齢は40歳前後にみえる。笑顔を見せてやさしい雰囲気だった。


「アイさんですよね?」


 確認するように聞いてくる。


「その通りよ、タラーキンさん。神殿に用事があって来てみたの」


「あのときは助かりました。いま神殿にいられるのもアイさんのおかげです。それで初めて神殿へ来たと思いますが、お祈りですか。それとも怪我の治療ですか」


 タラーキンさんは頭を下げたあとに、神殿へ来た理由を聞いてきた。


「私は異国から来て神聖魔法にくわしくないから、神聖魔法を知りたくて神殿に来てみたのよ」


「アイさんはすでに一般魔法を覚えていて使い魔がいますが、神聖魔法を使う神官になりたいのなら、使い魔と別れる必要があります」


 最初に注意事項を教えてくれたけれど、私は神聖魔法を覚えるつもりはない。


「異国の魔法を使えるから、神聖魔法を純粋に知りたいだけよ。ハンターギルドのリリスールさんに神殿ならくわしいと教えてもらった」


「リリスール様の知り合いですか」


 タラーキンさんがおどろいていた。


「この前、私もハンターになってリリスールさんから招待状も書いてもらったよ」


 ふところから招待状を取り出して、タラーキンさんへ渡す。タラーキンさんは招待状の中身を確認する。


「それでしたらワタシが神殿を案内しながら説明します。こちらにどうぞ」


 タラーキンさんの後を続いていくと、最初は大きな部屋に案内された。


「イロハ様に日頃の感謝を述べる部屋です。神聖魔法は光と影属性から成り立つ魔法で、人々の心と体を癒やします」


 前方にイロハ様が祭られていて、色つきの窓から幻想的な光が差し込んでいる。多くの人が前方でお祈りをしているのがわかった。


 そのまま大きな部屋をあとにして、神殿の歴史を聞きながら移動した。


「こちらが祝福部屋で、見習い神官の適正判断やイロハ様の啓示を感じ取れます」


 こぢんまりした部屋で、淡い明かりの中にイロハ様の像が置いてあった。中に入ると独特の部屋と感じた。


「何か不思議な感じがする部屋で、心が温かくなってきた」


「驚きました。アイさんには祝福を受ける資格があります。大神官でも祈る前に感じ取るのは困難で、聖女様になれるほどイロハ様に愛されているのかも知れません」


 タラーキンさんが私の顔をじっと見つめて少し恥ずかしいけれど、それほどまでに何かを感じられるのはすごいことなのね。イロハ様に愛されているのは確かで、誤魔化す方法も覚えてきた。


「私は異国出身だから、そのせいかもしれない。一般魔法も使えなくて、神聖魔法を覚えられないと思うけれど、宝石魔法という異なる魔法を使っているのよ」


「異なる信仰ですか、惜しい人材です」


「それよりも神聖魔法を教えてほしい。まだヒールしか見ていないのよ」


 これ以上、イロハ様関連だとおかしな発言もありうるので、話題を変えた。


「部屋を変えましょう。今の時間なら見習い神官が魔法の訓練をしています」


 移動して重たそうな大きい扉の前にくると、制服姿の男性がふたりいた。神官長であるタラーキンさんは偉いみたいで、私は止められることなく扉の奥へと入った。制服姿の人しか見かけないから、本来は部外者禁止の場所なのね。


 歩きながら、タラーキンさんが神聖魔法について説明してくれた。


「神聖魔法は怪我や病気を治すヒールと、状態異常を治すヒールラが基本です。大神官になると大怪我や大病が治せるヒールガが使えて、さらに聖女様は特殊な魔法が使えます」


 説明が終わるころに部屋へ案内された。部屋には少年少女が数名と大人がひとりいて、私たちは部屋の後ろに移動する。


 少年少女の服装はタラーキンさんと比べて簡素で、金色の線も1本だけだった。みんな真剣な表情で魔法を唱えている。リリスールさんに比べて、白色の淡い明かりが弱くて、明かりが点いている時間も長かった。


「魔法を練習しているの?」


 小声でタラーキンさんへ聞く。


「神聖魔法が使えて間もない見習い神官で、神官から魔法の訓練を受けています」


「杖などの道具は不要なの?」


 魔法使いといえば杖という認識があった。慣れれば不要かも知れないけれど、見習い神官なら使っていると思った。


「神聖魔法はイロハ様の加護で成立していますので、杖などよりも信仰心が重要となります」


「感謝の気持ちが重要なのね。誰でも神聖魔法は使えるの?」


 一部の人しか使えないのは知っているけれど、どの程度なのか把握したかった。


「一般魔法が使える人の中で、イロハ様の祝福を受けられるのは10人にひとりくらいしかいません」


「神聖魔法が使えるのは貴重な人材だから、訓練で魔法を上達させているのね」


 感心しながら練習をしている少年少女に目を向けた。たぶん私と同じくらいか、もっと幼い少年少女もみかけた。


「魔法も慣れは重要で、慣れれば魔力の消費も抑えられます。また誰でも怪我や病気は早く治したいですから、神聖魔法には冷静さも欠かせません。ほかに知りたい内容はありますか?」


「くわしく教えてくれて、とても勉強になった。タラーキンさん、ありがとう」


 タラーキンさんにお礼を言ったときに、別の少女が部屋に入ってきた。


 明らかに今までいた少年少女と異なっていて、きらびやかな服装で凝った模様もあって、桃色の線が5本あった。どことなく見覚えのある顔で、後ろから服装が異なる男女がふたり続いて入ってきた。男女は私よりも少し年上に見えた。


 入ってきた少女は神官に話しかけている。見習い神官の少年少女は訓練を止めてお辞儀した。タラーキンさんもお辞儀したあとに、小声で私に教えてくれた。


「大聖女様です。普段は王都にいて、後ろのふたりは護衛です」


 顔に見覚えがあったのは、この前街中で見かけた少女だったからなのね。


 大聖女様は神官と話し終わると、こちらに顔を向けた。大聖女様と視線が合って明らかに私を見ている。初対面だけれど、視線を逸らそうとしない。護衛が大聖女様に声をかけると、大聖女様は頷いて部屋をあとにした。


「大聖女様がこちらを見ていましたが、アイさんは知り合いですか」


「面識はないから、誰かと見間違えたと思う」


「そうかもしれません。ほかになければ入口まで案内します」


 神殿の入口まで戻ってきて、タラーキンさんにお礼を言って神殿をあとにした。

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