13話:帝国軍の三馬鹿トリオ~その2
帝国軍、第13魔導研究所――【エクス・マキナ】
「まずいですよ!!」
研究主任であるリッズが例によって例の如く、今日も所長のアルヴィンの部屋へと飛び込む。
「はいはい。いつもまずいですよ。そのおかげで予算カットされまくって火の車ですよこっちは」
秘書のレイナが目を細めてリッズを睨む。どうせまたろくでもない報告に違いない。
「もー聞きたくなーい。それよりリッズ主任、フェンリルの追跡はどうなったの? 早くレクス君のデータ回収したいんだけど」
デスクに突っ伏したアルヴィンがバンバンと催促するように手でデスクを叩く。
「いやいや、それどころじゃないですってば!」
「じゃあ、何なのよ」
「インペリアルデータバンクに不正アクセスがあったんですよ!!」
「そうですか。大変ですね。ところで……アルヴィン所長――」
レイナがリッズを無視して話を進めようとするのでリッズがバンとデスクを叩いた。
「大変ですね! じゃありません! うちのサーバー経由で不正アクセスされたんですよ! しかも外部から!」
「ええ……なんで?」
「なんでじゃないですよ所長! どう考えてもレクスの仕業ですよ!」
リッズの言葉に、レイナが冷静に返す。
「……レクスからの通信は全てブロックしているのでは?」
「そうよ~。奪われた日にすぐにやったわ」
「だったんですけど……どうも……フェンリル経由でアクセスしたようで……」
「はあ!? なんでフェンリルが脱走した日にブロックしないんですか!?」
レイナが呆れたような声を出した。
「……フェンリルに通信網へとアクセスする機能は付いていないの。あるのは、本体であるレクスとのリンクだけ。だからブロックもくそもないのよ」
「どういうことですか?」
「んー。考えられるとすれば、レクスが自身の機能を、フェンリルへと移した……かしら」
「そんな簡単な事で!?」
レイナは天井を仰ぐ。どうしてこうこの研究所はトラブルが多いのか。
「そうでもないわよ。抜け穴を突かれた形ね。レクスの戦術思考プログラムにこんなやり方は入っていないし……となると……いえ、まさかね」
「あ、濁さないでください。実はそれだったりするんですから」
「レクスの素体となった男の事、忘れたわけではないでしょ?」
アルヴィンの言葉に、レイナが静かに頷いた。忘れるわけがない。
「……そういうことですか」
「まさかと思うけどね。やり口が完全にそうだわ。んー、リッズ、レーヴァについてももっかいサブメモリのチェックをするわよ」
「いやいや、それよりも上がカンカンですよ……早く回収しろってうるさくて……」
リッズの言葉に、アルヴィンが考え込む。
「しかしインペリアルデータバンクに不正アクセスして何を閲覧したのかしら」
「それですが……これがその一覧です。意味不明なんですよ」
そういってリッズが不正アクセスがあったデータについてのリストをアルヴィンに手渡した。
「どれどれ……ふむふむ……【魔素汚染】と【ダークランドの植生】……? えっと【楽しい農業】に【アグリカルチャー革命】か……。【農作物】についても片っ端から閲覧しているわね……」
「それがさっぱりで……。てっきり帝国軍の機密とかそういったものかと思ったのですか……」
「まるで……農村で農作業に勤しもうとせんばかりね」
自分で言って、ありえないとアルヴィンは首を振った。あんな、戦闘に特化した思考と身体で、農作業なんてするわけがない。間違いなく、何かの偽装工作だろう。もしくは何かの暗号かもしれない。帝国軍内部に協力者がいる可能性もある。
「……どうしましょ」
おずおずと聞いてくるリッズに、アルヴィンは溜息をつきつつ言葉を返した。
「何も変わらないわ。いずれにせよレクスとそれを起動させた組織を追うしかないのよ。フェンリルの足取りは掴めたの?
「今、特定を急がせています」
「早くね」
リッズが頷いて、慌てて部屋から出て行った。
「見付かるのでしょうか」
「……難しいかもしれないわね。帝国軍の通信基地の位置はレクスも分かっているからね。そこへフェンリルを忍び込ませたら、まずバレないでしょうし、厄介ね。誰よ造ったの!」
アルヴィンがぷんぷんしながらそう声を張り上げた。
「貴女ですよ……。一応、今は、性能テストの為にわざと敵対行動をさせているという風に報告していますが……いつまで持つやら」
「苦労かけるわねレイナ。でも、回収出来れば最高のデータが取れるわ」
「所在地が分かったらどうするんですか? 部隊を送りこみますか?」
「そうねえ。ま、状況次第かしら」
そう言って、アルヴィンは溜息をついたのだった。
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