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12話:闇汚染


 翌日。


「……これはどうしようもないかもね」


 コボルト達に荒らされた畑の前で、アルトが溜息をついた。踏み荒らされているだけならまだしも、大量の血や肉辺が周囲に散らばっており、地面を茶色く汚していた。


 それを無表情に見ていたレクスがアルトへと問いかけた。


「疑問。コボルトの血や肉程度であれば、放置すれば分解されるのでは?」

「普通はそうなんだけどねえ。何なら肥料になるぐらいだけど……あのコボルト達はどうもう()()()()()()を通ってきたみたいなの。見ててね」


 そう言ってアルトが畑へと手を向け、純粋な魔力を放射。すると畑がどす黒く変色した。アルトが魔力を止めると、色も元に戻る。


「魔力に対してああいった反応がある土壌は、闇汚染されているのよ。ダークランドってのは知っている?」

「肯定。レッドミール王国より東に広がる、旧クリス神帝国の領土の現在の通称。かつてあった戦争で領土全てが闇属性の魔素によって重度の汚染されており、現在は適応した植物や魔物しか生息できない死の大地となっている」


 ダークランド。そこは忌み嫌われる土地であり、常人ならば決して立ち入ろうとはしない、禁足地だ。先を急ぐ商人ですら通るのを避け、迂回するほどだ。 


 アルトがレクスの言葉に頷き、肯定した。


「正解! そこに住んでいる魔物や植物は勿論のこと、水さえも汚染されているからね。おそらくあのコボルト達はもっと東の方から、あそこを横切ってここに来たのよ。そして汚染覚悟で、あの土地の魔物や植物や水を摂取した。だから彼らも重度に汚染されていた」

「肯定。闇属性の魔素は、人体に重大な影響を与える。作物は育たない上に、育っても食用には適さない。……血を流して殺すのは悪手だったか」


 感情の機微が非常に分かりづらいレクスだが、数日間共に過ごしたアルトは、何となく彼がしょげているように見えた。


 アルトは顔を笑顔に戻す。


「仕方ないわ。だって誰もそんな事は知らなかったんだもの! それに昨日の夜のうちに、魔素の散布阻害の魔術を掛けてもらったから、最低限の汚染で済んだわ」

「肯定。しかし魔素の除去についてはデータがない。力にはなれない」

「基本的にはその土地は廃棄して、自然が浄化してくれるのを待つしかないわね……でも汚染が村はずれのこの小さな畑だけで助かったわ。もしあちこちで戦って血を流されていたら、下手したらこの村の農作物は全滅だったかもしれない。だから、レクス君は気にしなくて良いの! ちゃんと立派に仕事をしたんだから」

「肯定。次回からは汚染も考慮する」

「うんうん。でも、畑を守れても村が無くなったら終わりだから、村やみんなを守る事が最優先! 冒険者はそれだけを考えてくれたら良いの」

「了解」


 しかし、レクスの中で眠っていたサブメモリはアルトが多少は強がりを言っているのを感じ取っていた。


 狭い面積とはいえ、土地を廃棄するのは辛いだろう。


 なんとか出来ないか。そう考えるも、自分は戦闘用兵器だ。農業についても土壌汚染についても知識は一切ない。


 それがあるとすれば……。


 レクス内のサブメモリは一部だけ思考を回転させつつ再び眠りに付くのだった。



☆☆☆

 


 深夜。レクスはあてがわれた村付き冒険者用の家から出た。横には、内部にとある細工を施したフェンリルが立っている。


「任務開始――戦闘行動は避け、隠密行動を」

「――」


 フェンリルが音もなく走り去っていく。


「あれ、レクス、フェンリルがどっか行ったぞ?」


 たまたま近くを通りがかっていたロアがフェンリルが去っていった方向からやってきた。


「肯定。任務を与えた」

「ほーん。狩りかなんかな」

「肯定。近しいものだ」

「なるほど。あ、そうだ、明日朝一でちと坑道を見に行く事になったんだ。冒険者としてな。レクスも来るだろ?」

「肯定。村付き冒険者としての責務を果たす」

「ははっ! 流石だぜ相棒! じゃあ、明日迎えに来るよ。じゃあな!」

「了解」


 ロアが上機嫌が去っていった。アルコールの匂いがしたので酒場で今日も飲んでいたのだろうとレクスは推測する。その行為に何の意味があるのか理解できないが、よほど大事な事なのだろうと納得する。


 レクスは思考する。


 自分は戦闘用に作られた兵器だ。殺戮人形(キリングドール)なんていう異名が付くほどだ。戦闘に関してならば完璧であると認識していた。だがこの村に来て、戦闘行為においても失敗を重ねていた。


 レクスは自身の能力を全て完璧に把握している。だけど、それでも役に立っていないという自覚があった。冒険者も農作業も未知のことであり、自分に何が出来るか分からなかった。


 だけど、彼は気付いていない。その未知に対し、少しだけ興味を持ち始めている事を。


 それは、殺戮人形(キリングドール)には必要のない感情だ。バグであり、エラーであり、不要と切り捨てるべきものだった。


 だがレクスは、これも村付き冒険者という任務の遂行の為だと、そのエラーをわざと見逃していた。


 その行為は――なんとも()()()()()、思考と結論だった。

レクス君にも変化が。そして闇汚染されたというフィクションな土壌でフィクションな農作業を進める予定です。

次話で一旦視点が帝国軍に戻ります。


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ハイファン新作です! かつては敵同士だった最強の魔術師とエルフの王女が国を再建する話です! こちらもよろしくお願いします。

平和になったので用済みだと処刑された最強の軍用魔術師、敗戦国のエルフ姫に英雄召喚されたので国家再建に手を貸すことに。祖国よ邪魔するのは良いがその魔術作ったの俺なので効かないし、こっちの魔力は無限だが?



興味ある方は是非読んでみてください
― 新着の感想 ―
[一言] どことなくフェイトを感じる作品だった。
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