蛾
3人の影は街からどんどん離れて行く。
(どこまで行きやがる…)
龍は、無言で進むローブの2人組の背中を追っていた。もう街の灯りも殆ど見えない…
「おい!これ以上進むと森に入っちまう。どこまで行く気だ?」
龍の声にローブの2人組はピタリと止まる。
そして2人組はゆっくりと振り向いてニコッと微笑んだ。
「そうですねぇ、この辺りにしましょう!」
「そうですね!賛成ですね!」
「どういう意味だ?」
龍は、2人組を睨みつける。
「ですからね、貴方のね、始末をね、始めようとね、思ってるんですよぉ。」
「始末ですね、始末。」
2人組はニコニコと微笑みながら龍に答える。
「始末だあ?仕事の話はどうなったんだよ。」
「ははは、はい、これは私達怒羅金の仕事でしてね、あ!話通じてますか?私達の仕事の話ですよぉ。」
「全然意味が分からねぇよ…とにかく俺を始末するって事なのか?」
「はい!神崎 龍さん!貴方は始末しなければいけません!」
ドンッ!!
龍は地面を蹴りつけ一気にローブの2人組の間合いに入る。
「色々聞かせてもらうぜ!」
龍はローブの1人の顔面に拳を繰り出す。
龍の拳は顔面を直撃する。
「!?」
「凄い力ですね!」
ローブの1人は涼しい顔で龍を賞賛する。
「どういうことだ…?」
龍は続けてローブの1人の横っ腹に回し蹴りを叩きつける。
「無駄ですよぉ!」
龍の蹴りは直撃するがやはりダメージを与えた様子は無い。
(魔法か!?)
龍は一旦2人組から距離を取る。
「テメェら、何の魔法かけやがった!」
ローブの2人組は一度顔を見合わせてから頭のローブを脱ぎ去る。
「女!?双子か?」
龍が見たのは、髪が長い2人の女性。
髪の色が緑と紫の違いでしか判別出来ないほど瓜二つの顔だった。
「私は緑蛾。」
「私は紫蛾。」
「神崎 龍さん…怒羅金を嗅ぎ回って何をお調べですかぁ?」
緑蛾がニコッと微笑む。
「…本気で行くぞ、死ぬなよ。」
龍は大きく深呼吸をした。
「おおおおおおおおおおおお!!!」
龍は気合いの咆哮をする。
「なるほどなるほど!神崎 龍さんは魔力を身体能力に変換させてるのですねぇ!つまり魔法は一切使えないって事なんですね!」
「魔法使えないんですね!神崎 龍さん!」
緑蛾と紫蛾はコロコロと笑う。
龍は凄まじい勢いで2人に突進!拳を繰り出す!
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「!?」
龍の拳は確実にヒットしているが、2人はニコニコと微笑んでいる。
(俺の全力がノーダメージな訳がねえ!!)
その後龍は何度も何度も全力の攻撃を浴びせるが2人はその場から微動だにしない。
◇◇◇◇
「ハァハァ…」
龍は片膝をついた。
「無駄だと言ったんですけどねぇ!神崎 龍さん。」
「そろそろね、こちらからもね、攻撃させてね、もらいますね。」
緑蛾は呪文の詠唱を始める。
「デッドリークロス! 」
龍の身体に激しい痛みが貫く。
「ぐわぁぁぁ!!!」
気を失いそうになる龍は赤い十字架に身体を固定されている事に気付く。
「な、何だこりゃ…動けねえ…」
「ははは、はい!神崎 龍さん!貴方は…磔の刑で死ぬのです。」
「力をね、入れるとね、もっともっと激しい痛みがね、襲いますよ?神崎 龍さん!」
「ふざけんじゃ…ぎゃああああ!!!」
龍はガクッと意識を失う。
「なんて事でしょうか!今私が親切に教えてさしあげたのに!脳みそが無いのですね!」
「人の話は聞かないとね、駄目ですね!」
十字架にぶら下がるように龍はピクリとも動かない。
「それでは、さようなら神崎 龍さん。」
「首をね、頂きますね。」
紫蛾の手から光る刃が伸びる。
「はいはい!そこまでだ。」
「!?」
緑蛾と紫蛾が声に振り向くと、見知らぬ男が手を叩いている。
「…何か御用ですか?ちょっと今は立て込んでまして。」
「直ぐにね、立ち去る事をね、オススメしますよぉ。」
「まさか緑蛾と紫蛾とはちょっと俺もビックリしたよ、裏社会じゃ名前知らない奴居ないからな。」
「貴方…誰ですか?」
緑蛾の顔色が変わる。
「俺はオルセン、ムーンブルク軍所属の兵隊さんだ。」




