龍が如く2
10人のチンピラチックな男達は全員瀕死の状態で倒れていた。その中の1人、ピアス男の襟首を掴み龍が尋ねる。
「さぁて、これからの答え方によってはお前が更に地獄を見る事になるんだが…どうするよおい?」
ピアス男は、両腕両足の骨が粉砕されており、もはや立ち上がれない芋虫状態だった。
「か、勘弁…勘弁してくれ…後生だ。」
「お前の頭は誰だ?」
龍は鋭い目でピアス男を睨みつける。
「俺に…頭は居ねえ…」
ピアス男はガタガタと震えながら答えた。
「そうか…じゃあ、怒羅金て知ってるか?」
「!?」
ピアス男は明らかに動揺して、口を閉ざした。
「答えられねえのか、じゃあしょうがねえな。」
龍はピアス男の顔のピアス2つに指を掛けた。
「ま、待ってくれ!言う!言うから!」
ピアス男は必死で懇願する。
「ガセ情報かましたら、顔に引っ付いてるやつ全部俺が丁寧に取ってやるからな。」
龍はピアスに掛けた指にゆっくり力を入れる。
「やめて!やめて下さい!!」
「聞かせろ。」
ピアス男は諦めたように語り出す。
「…怒羅金は、闇の組織の名称でして…俺も誰が頭張ってるかは分かりません…ただ『怒羅金の封書』ってのを配ってて…その封書の内容を達成するとガッポリ稼げるんです…」
「怒羅金の封書?そいつは何処で手に入れる?」
「月に一度 街の北、『ボーンの酒場』で配られます…」
「今度配られるのはいつだ?」
龍はまた指に力を入れる。
「痛てえ!やめて下さい!次に配られるのは明日の深夜です!」
「そうか…」
龍はピアス男から手を離す。ドサッと倒れるピアス男。
龍はピアス男に顔を近づけ低い声で囁く。
「次に、お前らの誰かが悪さしたって事が俺の耳に少しでも入ったら…分かってるな?」
「ひぃぃ!!もう何にもしねえ!この街も出ていくよ!!」
ピアス男は泣きながら叫んだ。
龍はボロボロの制服を拾い、肩に掛けた。
「ボーンの酒場か…」
そう呟き、街に消えていった。
◇◇◇◇
「龍!見つけた!」
街の外れの空き地、木材が山になっている上に龍は足を組んで寝ていた。
「んー…も少し寝かせろよ…ぐぅ」
「もう6時だよ!龍、何時まで寝てるのー!」
杏は木材の上に飛び乗り、龍の腹の上に跨った。
「ぐえっ!乗るな!」
龍は杏を持ち上げた。
「龍、起きたー?えへへ♪」
ニコッと微笑む杏。
「6時!?6時って言ったのか?冗談じゃねえ!昼まで俺は寝るんだよ!」
杏を突き放し龍はゴロンと杏の反対を向く。
「何だよー!龍つまんないやつだなー。」
頬を膨らませて杏は渋々木材から降りる。
「ボク、修行の時間だからまた後でねー!」
ぐうすか寝ている龍に一生懸命手を振り、杏は街へ走り出す。
杏が居なくなり龍は目を開けた。
(…たく冗談じゃねえ…)
龍は冬の朝空を眩しそうに見上げた。
◇◇◇◇
深夜0時。
大五楼の街の北、華やかな雰囲気とはまるで異なる寂れた街並みを龍は歩いていた。行き交う人の殆どが目付きの悪い、影を背負った様なそんな人種が多い。
「ここか…」
龍は大きな大衆酒場の建物の前に立つ。
古びた扉には『ボーン酒場』と書かれたボロボロの看板が引っかかっている。
ギィィ
中は暗く長いバーカウンターとテーブルがあちこちに乱雑に置いてあり、ポツポツと客が酒を飲んでいる。客達は龍をジロジロと見ている。
龍がカウンターに座ると、カウンター越しに腕が丸太レベルの太さのゴツイ男が龍に尋ねる。
「小僧何の用だ?」
「客に対する態度じゃねえなぁ…オッサンよお。」
龍は、ヘラヘラと男を睨む。
「客だぁ?小僧つまみ出すぞ。」
男は拳をバキバキと鳴らした。
「ちょっと聞きてえ事がある。」
龍は男の肩を掴む。
グギギギギギ
「うう!!こ、小僧!痛ててて!!」
グギギギギギギギギギ
「待て!分かった!アンタは客だ!手を離してくれ!」
必死で龍の手を剥がそうとするがビクともしない。
「最初から客だって言ってんだろ?」
龍は男の肩から手を離した。
「ハァハァ…で、この酒場に何の用ですかい?」
男は肩を擦りながら龍に尋ねた。
「ここに来ればガッポリ稼げる情報があるって聞いてな。オッサン知ってんだろ?」
「怒羅金の封書か…随分若いのによくここを知ったもんだな…もうすぐ来るから待ってなよ兄ちゃん。」
「来る?誰が来るんだ?」
「封書の宅配人だ、とりあえず兄ちゃん何か頼んでくれよ。客なんだろ?」
「あぁ、じゃあアイスミルクな。」
男は目を丸くしたが、「分かった…」と言ってアイスミルクを持ってきた。
◇◇◇◇
灰色のローブを被った2人組が店に入ってきたのは、アイスミルクが出てから5分後の事だった。
1人は黒い袋を肩に掛けている。
(顔は見えねえが…2人共魔法系だな…)
龍は二人組を遠巻きに見て思った。
ローブの2人組がテーブルに座ると、酒場の客達がポツポツと立ち上がり2人組のテーブルに向かう。
「兄ちゃん、行きな。」
さっきの男が龍に手で合図を送る。
(…上手くやらねえとな…)
龍も2人組のテーブルに向かう。
龍の前に1人の客がローブの2人組と話していた。
するとローブの1人が黒い袋から封書の様な物を男に渡す。男は封書の中を確認すると酒場の外へ出ていった。
「次の方、来て下さいねぇ。」
龍がローブの1人に呼ばれる。
「おやおや…随分と若い方ですねぇ…」
ローブの2人組はジロジロと龍を見る。
「若くても実力はあるぜ?ガッポリ稼げる仕事を紹介してくれるんだろ?」
「ははは…はいはい稼げますとも、その前にお聞きしますね?貴方は誰からここの情報を手に入れましたかぁ?」
「ん?ちょっと悪い先輩からな、稼ぎたいんならここの酒場に行けって言われてよ。」
「なるほどぉー!それはそれは素晴らしい運命の巡り合わせですねぇ…我々も若い人が来てくれると心弾むというものですよ。いやね、軍にね、我々がね、探られたりね、するんじゃないかってね、疑ったりしてしまうんですよぉ。貴方のような妙に落ち着いている人間を見るとねぇ。」
「軍?俺が軍人に見えるのか?俺はただの無一文のプー太郎だよ。」
「そぉですかぁ、分かりました!では、初めて…という事で、こちらの封書をどうぞ。」
ローブの1人が龍に封書を渡す。
「見てもいいか?」
「勿論ですよ、見ないと貴方の表情が分かりませんからねぇ。」
(…表情?何か俺を疑ってやがるなコイツら…)
龍は封書の中の紙を引き出した。
【一、軍の武器庫を放火する 300万】
【一、郵便局を放火する 200万】
【一、軍兵を1人殺害する 100万】
【一、軍兵の家族1人を誘拐する 50万】
「…悪りぃんだが。」
龍は、封書を読んでため息をついた。
「おや??お気に召しませんでしたか?初めてでも出来るだけ簡単で気兼ねなく出来るお仕事だと思うんですがねぇ。」
「いやーこんなはした金じゃ俺の実力が全然発揮されねぇーんだよなぁ…もっとガッポリ稼げる仕事が知りたいんだよ。」
龍は頭をボリボリかいた。
「なるほどー!こんな仕事じゃ物足りない!貴方はそう仰りたいのですねぇ?」
「そうだな、もっとヤバい仕事…あるんだろ?」
ローブの2人組はお互い顔を見合わせてから龍を見る。
「それでは、場所を変えましょう!若い貴方に素晴らしい仕事を紹介致しますよ!」
「そうか、ありがてえ。」
「では、外に出ましょう。」
ローブの2人組と龍は外に出る。
「もう少し離れた所でお話し致しますので、着いて来て下さいねぇ。」
2人組の後を龍は着いていく。
(さぁて、親玉の所でも連れてってくれれば儲けもんだな…)
3人の足音は深夜の街に静かに響いた。




