なんじゃ!
夜霧を送った瞬は、ベロチューの横穴に戻ってきた。
「お帰りなさい!」
ゆきが、横穴の外で出迎えた。
「待たせてごめん、じゃあ行こうか。」
「うん!」
2人は、洞窟の奥へと進んだ。
◇◇◇◇
「今日は、道が5つに別れてる…」
瞬が周りを見回した。
「昨日は3つだったのに…火の鳥やっぱり意地悪。」
「しょうがないね、また二手に別れよう。テレパスかけるよ。」
「はーい!」
瞬は、指先に光を集め、ゆきに向けた。
「テレパス。」
光はゆきに放たれ、ゆきの口元に灰色の綿毛がフワフワと現れた。
瞬にも同様に灰色の綿毛が現れる。
「じゃあ、何か異常が会ったらすぐ教えてね。」
「はい!瞬さんも気をつけてね。」
2人は5つの道の1つをそれぞれ選び、別々に進んだ。
◇◇◇◇
ゆきは一番左の道を進んだ。
暫く歩くと直ぐに行き止まりになっていた。
(また、行き止まり…一応壁は調べないと。)
ゆきは、立ち塞がる壁を押したり、蹴ったり叩いたり、色々してみた。
「瞬さん、こっちは駄目みたい。」
ゆきは綿毛に話しかけた。
「了解、こっちは結構長い道だよ。戻って違う道進んでみて。」
綿毛から瞬の返事が返ってくる。
「分かりました。戻りますね。」
ゆきは、来た道を戻り始めた。
◇◇◇◇
瞬が進んで行くと、不思議な現象が起きた。
洞窟全体が、ぼんやり霞がかかったようになってきたのである。
(何だ?これは…)
瞬は銃を出した。
「ゆき!そっちに異常はない?」
しかし、ゆきからの返事はない。
「ゆき!ゆき!聞こえる?」
(駄目だ、何か強い力が、テレパスを包んでる。)
後ろを振り返ると、今まで進んで来た道が何本にも分裂していた。
「何なんだこれは…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
洞窟全体がグラグラと揺れ始める。
「ゆき!無事で居てくれ!」
◇◇◇◇
「瞬さん!瞬さん!」
ゆきは、座り込んで必死に瞬を呼んでいた。
瞬と同じく洞窟がグラグラと揺れて、道が何本にも分裂していた。
(怖い!助けて!瞬さん!)
ゆきは、頭を抱えて丸くなった。
暫くすると、揺れは収まり洞窟内は静寂に包まれた。
「ゆき、大丈夫か?」
瞬の声がした。
「瞬さん!」
ゆきが綿毛に話しかけると、誰かに肩をぽんと叩かれた。
ビクッとして振り向くと、そこには瞬が立っていた。
ゆきは、瞬に抱きついた。
「えーん!怖かったよぉ」
「ごめん。」
ゆきが大泣きしていて、瞬もゆきを抱きしめた。
◇◇◇◇
ゆきが大泣きする30分前━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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ジェイスは、火山の1キロ程離れた場所に居た。
「シルビア、ありがとよ!しかし、この辺は木も何もないな、岩だらけだ。」
「かなり見られている、火の鳥の意識が強い。」
シルビアは、羽を閉じて火山を見た。
「ふはは!確かに、ビリビリ来るな。」
「どうするのだ?ジェイス。」
「ん?そりゃあ力比べに決まってる。」
ジェイスは煙草に火をつけた。
「面白い、やってみろ。」
「あぁ、やってやるさ。」
ジェイスは、指を複雑に組み合わせた。
「ジャジャ!」
ジェイスが叫ぶと黄色い渦が現れ、中から白いローブを纏った小さなドラゴンが出てくる。手の平に乗るほどの小ささで、杖を持っていた。
「なんじゃ!随分久しぶりに呼ばれたな!」
「ふはは!久しぶりだなぁ!ジャジャ。」
ジェイスは、ジャジャをツンツンした。
「ええい!止めんか!カイエン!」
ジャジャはジェイスの指を振り払った。
「カイエンは、俺のじじいだろ…相変わらずだなぁ…」
ジェイスはため息をもらした。
「ジャジャ様、お久しぶりです。」
シルビアは、頭を下げた。
「おー!おー!エロビア!生きとったか!」
「シルビアです、相変わらずお元気そうで何よりです。」
「おー!おー!そうかそうか、で!ジョイス!何の用じゃ!」
「…火の鳥の神通力を弱めてくれ。」
「!?」
ジャジャは目をカッ!と見開いた。
「ワシ帰る。」
シルビアはコケた。
「あー、やっぱりドラゴンの最高魔道士なんて昔の話なんだなぁー呼んで悪かったなジャジャ。」
ジェイスは、残念そうな顔をした。
すると、ジャジャの動きがピタッと止まった。
「なんじゃ!誰にむかって言ったんじゃ!チョイス!」
ジャジャは、顔を真っ赤にしてジェイスを睨みつけた。
(何という安い挑発…)
シルビアは悲しい顔をした。
「だって無理そうな顔してるからな。」
ジェイスは、ジャジャをチラッと見た。
「ど阿呆うがっ!神鳥だろうが、餓者だろうが、ポンモールのジジイだろうが、ワシの魔法に勝てるかいっ!見てれ!」
ジャジャは、杖を天に向けた。
「おおっと!」
ジェイスとシルビアは、ジャジャから離れた。
ジャジャが、呪文の詠唱を始めると、辺りの空気が一気に張り詰めた。
「ジェイス、ジャジャ様は何を唱えている?」
シルビアから汗が流れた。
「ジャジャしか出来ねえ、禁じの魔法、魔封じ羅生門だ。シルビア、魔力を閉じろ全部持ってかれるぞ。」
「ジェイスはどうするのだ?」
「俺は全魔力をジャジャに食わす、帰りは頼むぞ、シルビア。」
「…死ぬなよ。」
「ふはは!死んでたまるか!」
呪文の詠唱を続けるジャジャ。
ジャジャの周りに黄色い光の輪が現れる。
「羅…生…門…!!!!」
ジャジャが叫ぶと、ジェイスが苦しみだす。
「ぐおおおおお!!!」
「なんじゃ!ガナック!もっと魔力を出さんかい!!」
「そ…れは、俺の…親父だって…の…うぐ……ぐぐぐ。」
ジェイスは片膝をついた。
「羅生門!封!」
ジャジャが杖を、アパ火山に向けると光の輪が火山に向かって飛んでいく。
そして、光の輪は火山を縛るように巨大化した。
「どうじゃ!ギョイス!封印完了じゃ、文句なかろう!あいたたた…腰が…」
ジャジャは腰をおさえた。
ジェイスはうつ伏せで倒れていた。
「おい!ジェイス、生きてるか?」
シルビアが声をかける。
「なんじゃ!情けない!エロビアよ、ジャイスは生きとる、はよ連れてけ。」
「シルビアです。分かりました、ジャジャ様。」
「ジャ…ジャ…封印は…どれくらいで…解ける?」
ジェイスが声を絞り出した。
「おい、動くなジェイス。」
シルビアが、ジェイスを咥えて背中に乗せる。
「24時間てとこじゃ、十分じゃろが。」
「あぁ、十分だ、流石ジャジャ…だな。」
「ふん!当たり前じゃ!ワシは帰るぞ!あいたたた…腰が…」
「ありがと…な。」
ジェイスは気を失った。




