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ゆきと春香  作者: のこころ
35/63

カッコ悪く




「夜霧さん、おはようございます!」


ゆきは、食事用のテーブルを拭いていた。




「おはよう、ゆきさん早起きだねえ。」


夜霧が鎧を着始めた。




「あっ!夜霧さん、朝御飯食べていって下さい。」




「いや、これ以上迷惑はかけれない、国に帰るよ。」




「夜霧さん、是非食べてって欲しいな。」


ベロチューが焼きたてのパンを、お皿いっぱいに持ってきた。


香ばしいパンの香りが部屋全体に広がる。




「ベロチュー殿…」




「ほらぁ!こんなに美味しそうなパンを食べないで出ていったら駄目ですよー!」


ゆきが夜霧の手を引っ張り、テーブルに座らせた。




「参ったな。」


夜霧は、照れくさそうに笑った。




「このバターをな、パンに塗って食べるな。塩ハムもあるな。」




「わぁ!ベロチューさん、このバターも作ったの?」




「勿論な!味噌とかも作ってるな。エッヘン!」




「大したものです、それではお言葉に甘えて頂きます。」




「いっぱい食べるな♪」




ゆきは瞬を呼びに、瞬の寝ている部屋に向かった。




「あ!瞬さん、おはようございます!」




丁度瞬も部屋から出てきた。




「おはよう、すっげーいい匂いで目が覚めた。」


瞬は目を(こす)った。




「ふふ、瞬さん子供みたい(笑)」




「え!俺19歳だけど、子供なの?」




「うん!大きい子供!(笑)」




「よく分かんねえ…」




「(笑)早く行こう!パンが冷めちゃう!」


ゆきは瞬の手を引っ張り駆け出した。




「朝から走るなよ、あぶね!」





◇◇◇◇





全員朝食を済ませ、夜霧は鎧を着て帰り支度を始めた。




「ベロチュー殿、お世話になりました。こんなに幸せな時間は久しぶりでした。そして、瞬君、ゆきさん、ありがとうな!君達の事は忘れない。」




「気をつけて帰るな、夜霧さん。」




「夜霧さん、また何処かで会えたら嬉しいです。」


ベロチューとゆきは夜霧と握手をした。




「途中まで俺が送るよ。」


瞬が立ち上がった。




「あ、じゃあ私も…」


ゆきが一緒に行きたいと言いかけたが、瞬の目を見て口を閉じた。




「ゆきは待ってて、すぐ戻る。」




「はい!」




瞬と夜霧は、ベロチューの横穴を出て、アパ火山の入口に向かった。





◇◇◇◇





ジャリッジャリッジャリッ…




洞窟内に2人の足音が静かに響く。




「瞬君、君達のアパ火山での目的は何だ?」




「あぁ、俺達は…てゆーか俺の仕事は、ゆきと火の鳥の巣に行って会わすって事。それ以上は分からない。」




「火の鳥とゆきさんを会わす?正気なのか?」


夜霧は驚いた。




「うん、ジェイスさんに言われた。俺はゆきを護衛しながら会わすだけだよ。」




「何と…そもそも人間と火の鳥が会えるのか…」




「神鳥て言われてるくらいだからね。俺も見たこと無いけどね。」




「うむ…私の知る限りを教えると…火の鳥は大昔世界中を飛び回り、滞在先の国で神鳥として丁重に持て成されていたのだが、人間の戦争に嫌気がさし、ゼロの大陸の山に潜んだ。それが、このアパ火山になったという話だ。餓者軍が出現するもっと昔の話だがな。」




「え!そうなの?そんな昔の話じゃ、火の鳥今生きてるか分からないじゃん!」




「生きている、そもそもアパ火山は大昔ただの山だったらしいのだ。火山として活動している限り、火の鳥の力なのだ。」




「確かに…変な力で洞窟進む道隠してるし、そうか…火の鳥に会うって、結構キツいミッションだね。」




「キツいどころでは無い、普通の人間には無理な話だ。頼むジェイス フックスターも受ける瞬君も、どっちも普通ではないがな。」




「夜霧さんも、普通じゃないよね?昨日の俺に斬りかかってきた剣、あれ刃が無いよね。夜霧さんさ、戦士系じゃないでしょ?」




「…そこまで分かるのか。」




「分かるよ。(笑)」




「瞬君、私はな、アパ火山の調査報告を、適当な話で大臣に知らせようと思う。勿論誰にも見つかってないと言うつもりだ。」




「そうなんだ!いいと思うよ。じゃあ、嘘がバレたらどうするの?」




「ははは、バレる前に家族を連れて、何処かに隠れるさ、亡命って訳にはいかんからな。」




「うん!賛成!いいと思うよ。」




「ありがとう、瞬君。私はカッコ悪く生きてみる、家族と共にな。ははは!」




「夜霧さん、カッコイイよ!」


瞬が夜霧の顔を見ると、とても晴れやかだった。




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