カッコ悪く
「夜霧さん、おはようございます!」
ゆきは、食事用のテーブルを拭いていた。
「おはよう、ゆきさん早起きだねえ。」
夜霧が鎧を着始めた。
「あっ!夜霧さん、朝御飯食べていって下さい。」
「いや、これ以上迷惑はかけれない、国に帰るよ。」
「夜霧さん、是非食べてって欲しいな。」
ベロチューが焼きたてのパンを、お皿いっぱいに持ってきた。
香ばしいパンの香りが部屋全体に広がる。
「ベロチュー殿…」
「ほらぁ!こんなに美味しそうなパンを食べないで出ていったら駄目ですよー!」
ゆきが夜霧の手を引っ張り、テーブルに座らせた。
「参ったな。」
夜霧は、照れくさそうに笑った。
「このバターをな、パンに塗って食べるな。塩ハムもあるな。」
「わぁ!ベロチューさん、このバターも作ったの?」
「勿論な!味噌とかも作ってるな。エッヘン!」
「大したものです、それではお言葉に甘えて頂きます。」
「いっぱい食べるな♪」
ゆきは瞬を呼びに、瞬の寝ている部屋に向かった。
「あ!瞬さん、おはようございます!」
丁度瞬も部屋から出てきた。
「おはよう、すっげーいい匂いで目が覚めた。」
瞬は目を擦った。
「ふふ、瞬さん子供みたい(笑)」
「え!俺19歳だけど、子供なの?」
「うん!大きい子供!(笑)」
「よく分かんねえ…」
「(笑)早く行こう!パンが冷めちゃう!」
ゆきは瞬の手を引っ張り駆け出した。
「朝から走るなよ、あぶね!」
◇◇◇◇
全員朝食を済ませ、夜霧は鎧を着て帰り支度を始めた。
「ベロチュー殿、お世話になりました。こんなに幸せな時間は久しぶりでした。そして、瞬君、ゆきさん、ありがとうな!君達の事は忘れない。」
「気をつけて帰るな、夜霧さん。」
「夜霧さん、また何処かで会えたら嬉しいです。」
ベロチューとゆきは夜霧と握手をした。
「途中まで俺が送るよ。」
瞬が立ち上がった。
「あ、じゃあ私も…」
ゆきが一緒に行きたいと言いかけたが、瞬の目を見て口を閉じた。
「ゆきは待ってて、すぐ戻る。」
「はい!」
瞬と夜霧は、ベロチューの横穴を出て、アパ火山の入口に向かった。
◇◇◇◇
ジャリッジャリッジャリッ…
洞窟内に2人の足音が静かに響く。
「瞬君、君達のアパ火山での目的は何だ?」
「あぁ、俺達は…てゆーか俺の仕事は、ゆきと火の鳥の巣に行って会わすって事。それ以上は分からない。」
「火の鳥とゆきさんを会わす?正気なのか?」
夜霧は驚いた。
「うん、ジェイスさんに言われた。俺はゆきを護衛しながら会わすだけだよ。」
「何と…そもそも人間と火の鳥が会えるのか…」
「神鳥て言われてるくらいだからね。俺も見たこと無いけどね。」
「うむ…私の知る限りを教えると…火の鳥は大昔世界中を飛び回り、滞在先の国で神鳥として丁重に持て成されていたのだが、人間の戦争に嫌気がさし、ゼロの大陸の山に潜んだ。それが、このアパ火山になったという話だ。餓者軍が出現するもっと昔の話だがな。」
「え!そうなの?そんな昔の話じゃ、火の鳥今生きてるか分からないじゃん!」
「生きている、そもそもアパ火山は大昔ただの山だったらしいのだ。火山として活動している限り、火の鳥の力なのだ。」
「確かに…変な力で洞窟進む道隠してるし、そうか…火の鳥に会うって、結構キツいミッションだね。」
「キツいどころでは無い、普通の人間には無理な話だ。頼むジェイス フックスターも受ける瞬君も、どっちも普通ではないがな。」
「夜霧さんも、普通じゃないよね?昨日の俺に斬りかかってきた剣、あれ刃が無いよね。夜霧さんさ、戦士系じゃないでしょ?」
「…そこまで分かるのか。」
「分かるよ。(笑)」
「瞬君、私はな、アパ火山の調査報告を、適当な話で大臣に知らせようと思う。勿論誰にも見つかってないと言うつもりだ。」
「そうなんだ!いいと思うよ。じゃあ、嘘がバレたらどうするの?」
「ははは、バレる前に家族を連れて、何処かに隠れるさ、亡命って訳にはいかんからな。」
「うん!賛成!いいと思うよ。」
「ありがとう、瞬君。私はカッコ悪く生きてみる、家族と共にな。ははは!」
「夜霧さん、カッコイイよ!」
瞬が夜霧の顔を見ると、とても晴れやかだった。




