ベロチュー
「瞬さん、ここも駄目みたい…」
「うん、こっちも駄目だ。」
瞬とゆきは、洞窟内の岩壁を調べていた。
「もう、戻ろうゆき。」
瞬がため息をついた。
「はい…」
ゆきはしょんぼりした。
瞬とゆきは、30分程洞窟を歩き、明かりのついた横穴に入っていった。
「お帰りな、瞬さん、ゆきさん。」
出迎えたのは、全身赤い毛で覆われた謎の生物だった、身長は150前後でゆきと同じくらい、少し小太り、目は蟹のように飛び出ていて、大きな口は喋る時だけ見える。
横穴の内部は、部屋のようになっていて広く、暖炉もあった。
「ベロチューさん、またお世話になります。」
瞬とゆきが、頭を下げた。
「気にしないでくれな、僕は客が来てくれていて嬉しいのだからな。」
ベロチューと呼ばれた赤い毛の生き物が、手を口に当てて答えた。
「参ったね…こんなに何日も足止めをくらうとはね。」
瞬がため息混じりで呟き、座り込んだ。
「洞窟の形が毎日変わるんだもん…奥へ進む道なんて見つからないですよ。」
キュー (ゆきのお腹が鳴った。)
!?
(瞬さんに聞かれちゃった!?)
ゆきは瞬の顔を見た。
瞬はゴロッと横になっていて、特に反応は無さそうだ。
ゆきは顔を赤くして、ペタッと座り込んだ。
「瞬さん、ゆきさん、今日はシチューをな、作ってみたな。温かいうちに食べるんだな。」
ベロチューが、奥の部屋に入っていった。
「さっきからいい匂いがしてたのは、シチューかー。ベロチューさんに会ってなかったら、俺達ヤバかったね。」
「うん、本当…最初は見た目ビックリしたけど、あんなに優しい人で良かった。」
「只者じゃないけどね…」
「え!?そうなの?」
「うん、多分あの人俺より強いよ。」
「瞬さんより…強い人なんですね。」
◇◇◇◇
暫くして、いい匂いと共にベロチューがシチューを持って現れた。
「さぁさぁ、食べるんだな。お代わりもあるな。」
「美味しそう!ベロチューさん、頂きます!」
「頂きます。」
瞬とゆきは、シチューを食べた。
ベロチューはじっと2人を見ていた。
「美味しい…この茸、極連茸ですよね?どうやって臭みを取ったんですか?」
「わぉー!ゆきさん、極連茸を知ってるんだな!」
「極連茸?この茸?」
瞬がキョトンとした。
「極連茸は、獣よけの茸として使われてるんです。凄い匂いで食べれるって知らなかったの…こんなに美味しいなんて、ベロチューさん!凄いです!」
「ドゥフフフー♪臭みを取るのは大変な、茸にストレスを与えないで育てるな。」
ベロチューは得意げに話した。
「育ててるの?凄い!見てみたいです!」
ゆきは目を輝かせた。
「喜んで見せるな、後で菜園着いてくるんだな。」
「わーい!嬉しい!」
「俺は行かないよ、でもこの茸は本当に美味いね。」
瞬は、シチューをもう完食していた。
「瞬さん、お代わりいるかな?」
ベロチューが瞬を覗き込んだ。
「あ、お代わり欲しいです。」
「待ってるな♪」
ベロチューは、瞬の器を持って奥の部屋に入って行った。
「ゆき、料理詳しいんだね、空さんみたいだ。」
「空さんには、絶対敵わないと思う!あの軍カレー凄く美味しいし。他の料理も全部美味しいんだもん。」
「確かに空さんの料理は全部美味しいね。俺は料理は全く出来ないよ。」
「そうなの?」
「うん。変かな?」
「ううん!何か瞬さん、器用そうだから料理とかも出来るのかなーって思ったの。」
「無理無理!何か切る時とか刃物をあんな風に近くに持ってこれないよ、よく指怪我しないよね?」
「えー!切れないよ!」
「お待たせしたな!」
ベロチューがお代わりシチューを持ってきた。
「ありがとう、ベロチューさん。」
瞬は、お代わりシチューを美味しそうに食べ始めた。
◇◇◇◇
夕御飯も食べ終え、一息着いた時ベロチューが、ゆきを呼んだ。
「ゆきさん、僕の菜園ご案内するな。」
「はいっ!」
「いってらっしゃーい。」
瞬は、銃の掃除をしながら手を振った。
ゆきは、ベロチューに連れられて洞窟を進む。
「あ、こっちはまた洞窟の雰囲気違うんですね。」
「瞬さんとゆきさんが、進む方向な、あれは火の鳥へ進む道な、火の鳥の力で洞窟内部の道色々変わるな、こっちは変わらない場所な、そこに僕、菜園作ったな。」
「火の鳥さんって意地悪なんですね!」
「火の鳥、人間嫌いな。人間がこの洞窟入ると力使うな、進む道見つけられないな。」
「ベロチューさんは、いつからここに住んでるんですか?」
「もう覚えてないな、僕はずっと1人だったな。人間もいっぱい来たな。でも人間、進めないと分かると諦めて出ていったな。」
「そうなんですね。私達も同じになっちゃうのかなぁ…」
「寂しいけど仕方ないな。私は進む道知らないからな、力になれないな。」
「ううん!ベロチューさんに、声掛けて貰って、私本当に嬉しかったですよ!寝る所や美味しい食事、それにお風呂までお借りして。」
「そう言って貰えるとな、僕は嬉しいな。」
ベロチューは飛び出た目玉を手で隠した。
「ベロチューさんは、人間なの?」
「分からないな、多分人間じゃないな。ドゥフフフ!」
ベロチューは、何故かツボった。
「着いたんだな。ここだな。」
辿り着いた場所は、洞窟がかなり広くなっている場所で、全面畑になっていた。
「わぁ!!凄い!!これみんなお野菜なの!?」
「太陽の光使わない野菜な、20種類あるな。」
ゆきは、畑の近くまで行き、植えてある色々な葉を見た。
「寿ニンニク、黒キャベツ、洞窟人参…これは、見たことが無い…あ!これも見たことが無い。あ!これ竹ゴボウだ!」
ゆきは、興奮気味に畑を走り回った。
「ゆきさん、凄いな。結構知ってるんだな。」
ベロチューは、ビックリしていた。
「私小さい頃から、お母さんと山菜採りとかしてたの。だから少し知ってるんです。」
「そうなんだな、あ、これな、極連茸な。」
「え!!極連茸なのに匂わない!」
「芽が出てから、ストレスを与えないで育てるとこんな風に匂いが出ないんだな。水もあげすぎちゃ駄目な。一番喜ぶ量をあげるんだな。」
「匂わない極連茸が生えてるのを初めて見ました。凄いなぁ。」
「そうな、僕もこの畑見せたの、ゆきさんが初めてな。嬉しいな♪」
ベロチューとゆきは、野菜談義で盛り上がった。
◇◇◇◇
同時刻、留守番の瞬は、何者かの気配を感じていた。
「…人間?か?」




