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ゆきと春香  作者: のこころ
33/63

ベロチュー





「瞬さん、ここも駄目みたい…」




「うん、こっちも駄目だ。」




瞬とゆきは、洞窟内の岩壁を調べていた。




「もう、戻ろうゆき。」


瞬がため息をついた。




「はい…」


ゆきはしょんぼりした。




瞬とゆきは、30分程洞窟を歩き、明かりのついた横穴に入っていった。




「お帰りな、瞬さん、ゆきさん。」


出迎えたのは、全身赤い毛で覆われた謎の生物だった、身長は150前後でゆきと同じくらい、少し小太り、目は蟹のように飛び出ていて、大きな口は喋る時だけ見える。




横穴の内部は、部屋のようになっていて広く、暖炉もあった。




「ベロチューさん、またお世話になります。」


瞬とゆきが、頭を下げた。




「気にしないでくれな、僕は客が来てくれていて嬉しいのだからな。」


ベロチューと呼ばれた赤い毛の生き物が、手を口に当てて答えた。




「参ったね…こんなに何日も足止めをくらうとはね。」


瞬がため息混じりで呟き、座り込んだ。




「洞窟の形が毎日変わるんだもん…奥へ進む道なんて見つからないですよ。」


キュー (ゆきのお腹が鳴った。)




!?




(瞬さんに聞かれちゃった!?)


ゆきは瞬の顔を見た。


瞬はゴロッと横になっていて、特に反応は無さそうだ。


ゆきは顔を赤くして、ペタッと座り込んだ。




「瞬さん、ゆきさん、今日はシチューをな、作ってみたな。温かいうちに食べるんだな。」


ベロチューが、奥の部屋に入っていった。




「さっきからいい匂いがしてたのは、シチューかー。ベロチューさんに会ってなかったら、俺達ヤバかったね。」




「うん、本当…最初は見た目ビックリしたけど、あんなに優しい人で良かった。」




「只者じゃないけどね…」




「え!?そうなの?」




「うん、多分あの人俺より強いよ。」




「瞬さんより…強い人なんですね。」





◇◇◇◇





暫くして、いい匂いと共にベロチューがシチューを持って現れた。




「さぁさぁ、食べるんだな。お代わりもあるな。」




「美味しそう!ベロチューさん、頂きます!」




「頂きます。」




瞬とゆきは、シチューを食べた。


ベロチューはじっと2人を見ていた。




「美味しい…この(きのこ)極連茸(ごくれんだけ)ですよね?どうやって臭みを取ったんですか?」




「わぉー!ゆきさん、極連茸を知ってるんだな!」




「極連茸?この茸?」


瞬がキョトンとした。




「極連茸は、獣よけの茸として使われてるんです。凄い匂いで食べれるって知らなかったの…こんなに美味しいなんて、ベロチューさん!凄いです!」




「ドゥフフフー♪臭みを取るのは大変な、茸にストレスを与えないで育てるな。」


ベロチューは得意げに話した。




「育ててるの?凄い!見てみたいです!」


ゆきは目を輝かせた。




「喜んで見せるな、後で菜園着いてくるんだな。」




「わーい!嬉しい!」




「俺は行かないよ、でもこの茸は本当に美味いね。」


瞬は、シチューをもう完食していた。




「瞬さん、お代わりいるかな?」


ベロチューが瞬を覗き込んだ。




「あ、お代わり欲しいです。」




「待ってるな♪」


ベロチューは、瞬の器を持って奥の部屋に入って行った。




「ゆき、料理詳しいんだね、空さんみたいだ。」




「空さんには、絶対敵わないと思う!あの軍カレー凄く美味しいし。他の料理も全部美味しいんだもん。」




「確かに空さんの料理は全部美味しいね。俺は料理は全く出来ないよ。」




「そうなの?」




「うん。変かな?」




「ううん!何か瞬さん、器用そうだから料理とかも出来るのかなーって思ったの。」




「無理無理!何か切る時とか刃物をあんな風に近くに持ってこれないよ、よく指怪我しないよね?」




「えー!切れないよ!」




「お待たせしたな!」


ベロチューがお代わりシチューを持ってきた。




「ありがとう、ベロチューさん。」


瞬は、お代わりシチューを美味しそうに食べ始めた。





◇◇◇◇





夕御飯も食べ終え、一息着いた時ベロチューが、ゆきを呼んだ。




「ゆきさん、僕の菜園ご案内するな。」




「はいっ!」




「いってらっしゃーい。」


瞬は、銃の掃除をしながら手を振った。




ゆきは、ベロチューに連れられて洞窟を進む。




「あ、こっちはまた洞窟の雰囲気違うんですね。」




「瞬さんとゆきさんが、進む方向な、あれは火の鳥へ進む道な、火の鳥の力で洞窟内部の道色々変わるな、こっちは変わらない場所な、そこに僕、菜園作ったな。」




「火の鳥さんって意地悪なんですね!」




「火の鳥、人間嫌いな。人間がこの洞窟入ると力使うな、進む道見つけられないな。」




「ベロチューさんは、いつからここに住んでるんですか?」




「もう覚えてないな、僕はずっと1人だったな。人間もいっぱい来たな。でも人間、進めないと分かると諦めて出ていったな。」




「そうなんですね。私達も同じになっちゃうのかなぁ…」




「寂しいけど仕方ないな。私は進む道知らないからな、力になれないな。」




「ううん!ベロチューさんに、声掛けて貰って、私本当に嬉しかったですよ!寝る所や美味しい食事、それにお風呂までお借りして。」




「そう言って貰えるとな、僕は嬉しいな。」


ベロチューは飛び出た目玉を手で隠した。




「ベロチューさんは、人間なの?」




「分からないな、多分人間じゃないな。ドゥフフフ!」


ベロチューは、何故かツボった。




「着いたんだな。ここだな。」


辿り着いた場所は、洞窟がかなり広くなっている場所で、全面畑になっていた。




「わぁ!!凄い!!これみんなお野菜なの!?」




「太陽の光使わない野菜な、20種類あるな。」




ゆきは、畑の近くまで行き、植えてある色々な葉を見た。




寿(ことぶき)ニンニク、黒キャベツ、洞窟人参…これは、見たことが無い…あ!これも見たことが無い。あ!これ竹ゴボウだ!」


ゆきは、興奮気味に畑を走り回った。




「ゆきさん、凄いな。結構知ってるんだな。」


ベロチューは、ビックリしていた。




「私小さい頃から、お母さんと山菜採りとかしてたの。だから少し知ってるんです。」




「そうなんだな、あ、これな、極連茸な。」




「え!!極連茸なのに匂わない!」




「芽が出てから、ストレスを与えないで育てるとこんな風に匂いが出ないんだな。水もあげすぎちゃ駄目な。一番喜ぶ量をあげるんだな。」




「匂わない極連茸が生えてるのを初めて見ました。凄いなぁ。」




「そうな、僕もこの畑見せたの、ゆきさんが初めてな。嬉しいな♪」




ベロチューとゆきは、野菜談義で盛り上がった。





◇◇◇◇





同時刻、留守番の瞬は、何者かの気配を感じていた。


「…人間?か?」




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