ファンゴ討伐
リゼの冒険者登録のため種類を書き、受付嬢が戻ってくるのを待つ間、リゼが俺に質問をしてきた。
「ねえ、さっきの男が言っていたことは本当なの?貴方の言動を見る限り、そうだとは思えないのだけど」
この質問は最もだ。俺と、さっきの男の言っていることが完全に食い違っているのだから、そりゃあ聞いてくるだろう。
「いや、あいつの言ってることは嘘だ。といっても、あいつが嘘を言ってるんじゃなくて嘘を信じさせられてるだけだ。さっきの会話に出てきたケインが原因なんだが、俺はあいつにパーティーを追放されたんだ。そのときにもらった手切れ金でお前を買ったんだが、どうやら俺のいない間にケインは俺のありもしない噂を広めたらしい」
俺は状況を簡単に説明した。
「なるほど、そういうことなのね。私はまだぱーてぃー?が何かよくわからないけれど、なんとなく分かったわ。私はユーリの言っていることを信じるわ」
リゼは、なんとなく理解できたようで俺の言うことを信じると言ってくれた。
そんな会話をしていると、手続きが終わったようで受付嬢が奥の方から戻ってきた。
「こちらが、リゼ様の冒険者カードです。このカードが身分を証明するので、くれぐれも失くさないようにしてください」
そう言って、受付嬢はリゼにカードを手渡した。新品のリゼのカードは赤銅色に輝いている。リゼはそれを受け取ると、大事そうに懐にしまった。
「リゼ様は、銅級からのスタートです。冒険者にはギルドへの貢献度と戦闘能力でランク付けがされており、上から白金級、金級、銀級、鉄級、銅級となっています」
俺は3年ほど前から冒険者をやっているので、ランクは銀級だ。
「ランクを上げるには、規定以上の依頼の達成と昇格試験を合格する必要があります。依頼の達成数が規定の数字に達成したらお知らせします」
そのあとも、しばらく冒険者に関する説明が続いた。リゼはしっかり聞いていたが、俺はすでに一度聞いたことのある内容だったので、聞き流しながら今後のことについて考え始める。
俺のことについて良からぬ噂が流れているとなると、この街で活動するのは困難だ。ケインたちはこの街をメインに活動している。つまり、ここに留まる限り何かしらの妨害を受ける可能性があるということだ。現に、噂によってすでに被害が出ている。
この街を出るのは確定事項として、どの街へ行こう。
ここリュアンの隣にある街キューレは、リュアンから行き来がしやすく、稼ぎ場である迷宮がある。だが、行き来がしやすいというのが問題だ。ケインたちのパーティーは、月に一度定期的にキューレの迷宮へ入る。つまりは鉢合わせる可能性があるのだ。
何か難癖をつけられてはたまらない。迷宮は惜しいが、別の街にしよう。
だが、キューレ以外の街となると一日や2日そこらで歩いて行ける範囲に街はない。野宿を繰り返してゆっくり進むか、馬車を使うしかないわけだが、どちらにせよ金がかかる。
野宿をしながら進む場合、数日分の食料に加えキャンプ用のテントをレンタルしないといない。レンタル料金は物によるが安くても1日ごとに鉄貨1枚、鉄貨10枚で銀貨1枚と同等なので、5日かかると考えれば食費込みで銀貨1枚近くかかるだろう。
それに対して、馬車を借りる場合は鉄貨4枚程かかるが、費用をギリギリまで抑えるため乗合馬車を選べば鉄貨2枚まで抑えられるはずだ。馬車なら、移動時間も同じ距離なら2日程度で済むだろうし、テントは馬車に備え付けられているのでわざわざレンタルする必要もない。
結論、馬車に乗って向かうのが、時間や費用ともに安上がりだな。というか、野宿してまで歩きで行くメリットがない。
そうと決まれば、先ずは馬車に乗るための金を集めないとな。
金を集める手段は・・・・・・常設依頼を使うか。掲示板に貼られている依頼は、常設依頼よりも報酬の高いものばかりだが、その分朝になると多くの冒険者が我先にと言わんばかりに、依頼を受けるため掲示板の前に集まる。
取れるかわからない高額の依頼よりも、安定して稼げる常設依頼の方が今の俺たちには都合がいいのだ。それに、鉄貨数枚程度なら常設依頼でも少し張り切れば1日で簡単に集めることができる。
この後の方針が細かく決まったところで、丁度リゼへの案内も終わった。
「ユーリ、手続きも終わったのだし、早く行きましょ! 依頼をこなして、スパパパーンッとお金を集めるのよ」
やる気があるのは助かる。そうしたら、ひと段落したし街の外に出よう。
リゼを連れてギルドから出ると、俺は街の外に行くため西の市門へとやってきた。
「外へ出るのか?そしたら、冒険者なら冒険者カード、商人なら商人カードを見せてくれ」
市門には、行き来する人を管理するため、衛兵が詰めている。衛兵がカードを要求すると、俺とリゼは黙ってカードを手渡した。
「冒険者だな、よし。行っていいぞ」
衛兵がカードを確認して道を開けたので、俺たちは横を通って外に出る。外に出てしばらくしたところで、リゼは不愉快そうな顔をしてこちらに文句を言ってきた。
「なんかさっきのおじさん偉そーな態度とってて気に食わないわね。殴っちゃダメかしら?」
何を言ってるんだこいつは。そんなのダメに決まっているだろ。
「あのな、さっきの衛兵は、直々に領主様から雇われているんだ。そんなのを殴ったら、領主様が怒って俺らの首なんて簡単に飛ぶんだぞ?お願いだから、下手な真似はよしてくれ」
そう諭すが、リゼはブーたら文句を言いながら納得したのかしてないのかよくわからない態度を取る。
「私にかかれば、りょーしゅ?とやらも簡単に吹っ飛ばせるわよ?面倒なことが嫌なのなら、辞めておくけど」
まあ、しないでいてくれるのならそれでいい。常設依頼をこなす為、俺はリゼに説明を始めた。
「俺たちは金を稼ぐ為に依頼をこなすわけだが、今から常設依頼のファンゴ討伐をする。ファンゴは、右手に見える森の中によく居るから、取り敢えずはそこに向かってファンゴを狩ろう。わかったな?」
俺の説明に、リゼはわかったような素振りをしてこう言った。
「なんとなくわかったわ。そこの森にいるファンゴを沢山殴り飛ばせばいいのね?」
うーん、なんとも脳筋だが、間違ってはない。細かい訂正をするのも面倒な為、俺たちはそのまま森へ向かった。




