貴方が去った世界より⑤
「誠!」
蓮矢が誠に飛びついた。
「おっ蓮矢!」
誠は嬉しそうに笑う。
「、、、?」
蓮矢は怪訝な顔をした。
「どうしたんだ?」
「お前誰だ?」
「何言ってんの蓮矢。俺は俺だよ」
落ち着いた笑みを浮かべる。
「そうか」
不思議そうな顔をした。
「ちょっと急いでるからまたね」
それだけ言って蓮矢から離れた。
「あっレンちゃん」
愛漸が話しかけてきた。
「貴方気をつけなさいね?翠に殺されるわよ?」
「えっなんで?」
「えっとねぇ_」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ーなんで!一人にするの!
(どうもなんか引っかかるんやな、、、)
「なんで屋敷に?俺が行ったら生きてることバレるんじゃ?」
その言葉に翡呂は、はっとする。
そして、急いで玄関へ急ぐ。
ー翠が死んじゃう、、、
(どうやって?ありえないって思ってたんや。まさか、、、)
「どうしたんだよ翡呂!」
「どうしたもこうしたもない!時間がないねん!」
その気迫に押されて誠も急いだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ハッタリの基本は、一切物怖じしないこと。
震える手をギュッと握り前を向く。
息をしっかり吐いて、前を向く。
そして目の前のドアをけ破った。
「何のつもりだ。翠?」
狼雅は翠を睨んだ。
「ご機嫌いかがですか?狼雅様」
「何の用だ?」
「もう知ってるでしょう?」
「私、御嶽 誠殺してませんよ?」
「そうか。お前も裏切るのか」
「さぁ」
狼雅は銃を取り出した。
翠は刀を構える。
狼雅の後ろには廻もいた。
しかし、霧の姿はなかった。
(よかった阿響斗は巻き込まれなさそう)
そのことがわかり翠はにこりと笑みを浮かべた。
「知ってますか?狼雅様?」
「なんだ?」
「人の感情って時としてありえない力発揮するんですよ」
そう言ってとびかかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「知佳殿どこを見ているのだな?」
「不思議ねって思って」
「何がだな?」
知佳は笑みを浮かべた。
「貴方達がここに居る事よ」
(ってきり阿響斗と霧を戦わせるのかと、それか思い通りになってないのかしら)
「蓮矢様かえって来ないね。僕心配。」
「言って来るのだな?」
「んーどうしよっかなぁって」
「競争するのだな?」
「いいよ!」
「あっちょっと」
止まる間もなく二人は消えていった。
(ほんとに思い通りにいかなさそうね、それともこれも計算かしら)
どこまで翠が考えてるのか知佳も興味が湧いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「嘘だよな?」
「違うわ。御嶽の当主交代の最後の課題」
「一番大切な人を殺す」
「、、、」
蓮矢は黙り込んだ。
「それか、周りでその人を死に追いやる。まぁ、最後は本人が殺すんだけどね」
「そうやって強くなるってことか?」
「そのとおりよ。必要な犠牲をすることをためらわないために」
「狼ちゃんは姉様、えっと真理を殺せって言われたの」
「でも、お母様生きてるよ?」
愛漸は微笑んだ。
「瞑ちゃんと廻ちゃん以外使え人は、狼ちゃんの代で入れ替わったの」
「どういうこと?」
「狼ちゃん殺したのよ。先代とその時の北と南を」
「犠牲の選択、、、」
「そう。先代を殺せば自動的に当主は切り替わる」
「狼ちゃんは家族思いなの。私は尊敬してるわ」
「翠。言ってたんだ。今回、俺も誠も翠も翡呂も当主になれないって」
「、、、そう」
愛漸は誠の事を思い出し目を落とす。
「あいつはいったい何をするつもりなんだ」
ー狼ちゃん殺したのよ。先代と、、、
(先代、、、殺す、、、)
蓮矢は、嫌な予感がよぎった。
「俺、行かなきゃ!」
蓮矢は急いで動き出した。
部屋を探して居間、大広間を探して
(いない。いない。いない。なんで!!!)
蓮矢は焦っていた。
「蓮矢はん?」
翡呂の声が聞こえた。
「翡呂!翠、、、どこいった」
蓮矢の焦りように翡呂は驚いた。
「蓮矢落ち着け」
誠が蓮矢を落ち着かせる。
「誠、、、なんで?さっき屋敷の中に」
(違和感があった)
「なん、、、だったんだ」
「時間がない。手分けして探す」
翡呂も同じことを考えていたので、手っ取り早く動き出した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結界が張られ他からは不干渉になった。
「観念したらどうだ?」
「嫌、、ですね」
(勝ち目はないだろうな)
「往生際が悪いな。俺が直々に相手してやっているのに」
「それは本当に光栄です」
翠は刀を捨てた。
「諦めるのか?」
「そうですね。もう疲れました。」
(楽しかったなぁ、、、)
その瞬間結界が消えて元の部屋に戻った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
廻が扉の前に立っていた。
「西武はん!翠は?」
翡呂は廻に聞いた。
廻は目をそらした。
「知っておるんか?教えてくれんか?」
「、、、」
廻は首を振る。
「知らんってことか?」
首を振る。
廻は厳しい顔をして指をさした。
そして、ふわりと花を浮かばせた。
その花で文字をを作った。
『しんぱい』
「気にせんでええよ。ありがとう」
そして、翡呂は誠と蓮矢にスマホで連絡を送り、その場へ向かった。
(間に合え、、間に合え、、、)
翡呂は、扉を開けた。
そこには翠が銃突きつけられた翠がいた。
「ほう前回は見届けられなかったもんな」
狼雅が翡呂を見て笑う。
「あほ!それどけろ!」
翡呂は急いで翠の方へ駆け寄った。
「じゃあな」
翠は目を閉じた。
その瞬間衝撃が走った。
「ガハッ、、、」
「いった、、、」
「翡呂、、なんで、、、」
翡呂の肩あたりから血が滲んでいる。
「急所は逃げたか」
「なぁ、翠、、俺な、、もう失うの嫌やねん」
痛みで顔をゆがませた翡呂が苦しそうに言う。
「今手当すればたすかるぞ?」
「ええよ。もう」
狼雅の言葉に翡呂は即座に答えた。
「なんで、翡呂。ダメだよ」
「今逃げたら、翠は死んでまうやろ。助けに来たんや。義理でも俺らは兄弟やから」
「翡呂、生きて?」
翠が優しく手を翡呂の頬へ乗せる。
「なんで、、?」
「私はもう、十分楽しんだから」
その瞬間、扉が開いた。
「翠!」
蓮矢と誠が来た。
それを見て、翠は笑った。
(なんで、、、)
翡呂は目を見開いた。
「邪魔ものが増えたな。さっさと死ね」
狼雅は引き金を引いた。
「ありがとね。幸せだった。」
そう言った翠は涙が溢れていた。
その時、初めてその場の全員が泣いてるのを見た。
(そっか。死ぬ瞬間に涙が出るってことは、それだけ、、、)
周りを見た。そして、また笑みを作った。
銃弾は翡呂ではなく、翠の心臓を打ち抜いた。




