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貴方が去った世界より④

「翠はね!」

うにゃがしゃべりだそうとした。


ーうにゃ。何してんの?


ビクッとした。

「なんで?まだ、寝てるはずじゃ、、、」

つい口に出していた。


「なにゆうてんのや」

翠が、自分の体に戻ろうとする。

「ダメ!まだ、翡呂さんに伝えなきゃ!」

うにゃが苦しそうな顔をしている。


「ハーッハーッ」

「大丈夫か?」

翡呂が駆け寄る。


「聞いて翡呂さん!」

「なんや?」

「誠様は、、、」


その時、うにゃはガクッと頭を落とした。

「どうしたんや?」

翡呂が肩をゆする。

「ったく。うにゃもう変わんないから」


ーごめん、、なさい


うにゃの声が響いた。

「翠、、か?」

「そうだよ?」

いつも通りの翠であった。

「さっきのはなんや?」

「私と契約している霊だよ」

翠は当たり前のように答えた。

そして、立ち上がり部屋を出ようとした。


廊下はもう暗くなっていて、その闇に翠は一歩一歩と近づいた。


「お前は、何をするつもりなん?」

その言葉に翠は止まった。

「考えてる」


「人生思い通りにならなさすぎるね」

そう言って翠は悲しそうに笑った。


翡呂は自分の手を見る。

(やっぱり実感わかへんなぁ)


「一つ聞いてええか?」

その声は震えている。

「なに?」

「お前は本当に誠はんを殺したのか?」


「殺したよ」


翠はもう一度カギを渡した。


「見てきなよ。まだ骨までは消化できてないからさ」

翡呂は、そのカギを受け取った。

今回は返しては来なかった。


それを、渡して翠は去っていった。


「人に願掛けするのあんま好きじゃないけどなぁ」

翠はぼやいた。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

部屋に戻ると蓮矢が椅子に座っていた。

「、、、っ!」

翠は明らかに動揺を見せたが、すぐに平然を装った。

「何しに来たんですか?」

「話に来た、、、かな」

蓮矢は、もう物怖じはしなかった。


翠は自分のベッドに座る。

「なんですか?」

「阿響斗の手紙入れ替えたのはお前だろ?」

「そうですね」

翠はあっさり認めた。


「そして、霧さんから聞いたけど、誠を殺したんだろ?」

「あっ知ってたんですね」

翠は淡々としていた。


(ハッタリを見抜く技量はないけど)

蓮矢はその様子を見て笑う。


「なんですか?」


「嘘だろ。誠を殺したなんて」


「、、、何のことですかね」

翠は知らん顔をする。

「あと、、」

蓮矢は翠に頭を下げた。


「ごめん。今まで散々振り回して。俺、周り全然見れなくなってた。その事すら言われるまで気づかなかった。みんなに嫌われても別に良かった。」


翠が唾をのむ音が聞こえる。


「俺は、全部抱え込んで、誠にも、阿響斗にも、そして翠にも!」


「幸せになってほしかった」

翠は唇を噛みしめる。


「出てってください」


翠は、口元に笑みを作って言う。

「え?」

その反応を見て、翠はいたずらっぽく笑う。

蓮矢は、よくわからないまま、立ち上がって外に出ようとした。


「そうだ。一つ言っておきますね」

「なに?」


ただ、もういいやって思えてしまった。

なんでも今日なら言える気がした。


(久々に心が軽く感じますね)


「私、女ですよ」

「は?」

御嶽家でそのことを知っているのは、愛漸と翡呂と誌乃だけである。

その瞬間、蓮矢の顔が赤くなる。

「え、、、まじ?」

翠はその反応に満足したような顔をした。


「好きです。あの時、助けてくれた時から、ずっと。」

蓮矢は固まった。


(蓮矢様ならいつ伝えたって言わない。そんなことずっと理解してましたよ)


「ということで出ていってください」

「話ぐちゃぐちゃじゃねーか」

蓮矢がツッコんだ。

「出ていかないなら愚痴でも聞いてください」

「なんか、前みたいだな」

蓮矢が笑った。


「許してませんけど、いろいろお互い様です。あと殺そうとしてすみません」

「どうせ、お前なら殺さなかっただろ」


「さぁ、どうですかね」

「絶対だよ。どんだけ、そばに居たと思ってんの?」

そう言って蓮矢は笑う。

「あはは。敵いませんねぇ」


(疲れた、、、だから、今は少しだけご褒美をしてもいいですよね)

翠は今この瞬間を大事にしようと思った。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「あれ?蓮矢は?」


霧が一人でいた。


ーお願いがあるんだけど、屋敷へ連れてってくれ


「なんとも美しい友情だな」

「あら?あの子たちだから愛情じゃないの?」

「そうなのだな?」

霧が不思議そうな顔をする。

「ねぇお花たくさんあったね!」

阿響斗が嬉しそうにしている。


「そろそろ私は戻らないとだわ」

そう言って知佳はそっと阿響斗の頭を撫でた。

「そっか。またね」

阿響斗は残念そうにしていた。


その後ろ姿を眺めながら霧は思う。


(翠殿、言ってたのだな。”手紙よりも、言葉の方がよく伝わりますよ”と。)


「なぁ、阿響斗」

「なに?お父さん」

阿響斗と霧はまだ距離があった。

恥ずかしさと不安がいっぱいだった。


「話そうだな」

手紙にも書いたことだけど、口で言わなくてはいけない気がしていた。

蓮矢の助けなしで、自分の拙い言葉で


「何を?」

阿響斗は不思議そうな少し怖がったような顔をした。


産声を上げた瞬間。霧も泣いた。だけど、愛する者が生きた時、愛する者が死んだ。

受け止めきれなかった。逃げてしまった。


(違うのだな!親なら向き合わねばならぬのだな!)


「生まれてきてくれてありがとう」


涙が溢れてしまった。

愛しさと苦しさで心がいっぱいだった。


「お父さん、、、、」

阿響斗は少し驚いたような声を出した。

(もし、まだ父親と認めてくれるなら、一緒に居よう。)


遠巻きで知佳は眺めていた。


「子供が子供で入れる時間を作るのが、親の役目だよ。頑張ってね」

そう呟いて鳥居の中へ消えていった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


(昨日行くべきやったかなぁ)

そう思いながら、翡呂はカギをまわしながら、翠の言っていた家へ向かう。

場所は昨日教えてもらっていた。


扉の前に立ち開けようとする。

「ふー緊張するなぁ」

そして意を決してカギを開けて扉を開ける。


そこには、シャツで短パンでアイスを食べている誠がいた。


「なんて残念な出かたしてんの?」

「えっ翡呂!」

誠は嬉しそうに抱きついてきた。

その肌で温かさを感じた。


「生きとるんかい。心配したやろ」


翡呂は誠の肩に顔をうずめる。

「ごめんな。翠にそう言われててさ」

「だとしてもや!」


ピロンッ

2人へ通知がなった。

ー屋敷に来て

翠からであった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「さぁ、行きますか」


話し込んでそのまま寝てしまっていた。

蓮矢も机に突っ伏して寝ていた。

蓮矢の金髪を軽く髪をなでる。

そして、立ち上がって部屋を出た。


「翠?」

蓮矢が、起きたときに翠はいなかった。

「どこへ行ったんだ、、?」

蓮矢が不安そうに、外へ出る。


廊下には人影があった。

「誠、、、?」

誠が廊下を歩いていた。

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