片割れの宝④
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「翠、夕飯どうするんや」
ひょこっと部屋に翡呂が現れた。
「気にしんでいいよ。外で食べる」
「餃子作ったんよ。一緒に食おうや!」
「蓮矢様は?」
「おらんよ。俺と誠はん。あと珍しく阿響斗来てるで。」
「そうですね。この前のこと謝罪しないとですし」
翠は少し目線を下げた。
「気にせんでええんや。酒かったでパーッといこうや!」
翠は口元に笑みが浮かんだ。
「はい」
「、、、」
翡呂が固まった。
「なんです?」
「久々に笑っとる思ってな」
「すみませんね。笑って」
「ちゃうって~」
「さっさと行こ」
翠はすぐに部屋を出ていった。
「阿響斗飲みすぎだって!」
食事の場所に行くと誠が阿響斗を止めていた。
「だぁってぇ!やってらんないもん!」
「だっ、どうしたって」
誠があわあわしている。
「ほほぉ、面白いことなっとるやん」
翡呂が楽しそうに向かって行く。
「何してんですか」
翠もため息交じりに席に座った。
「で?どうしたんや?」
「霧さんの手紙来て混乱してるっぽい」
「ははっおもろいこったなぁ」
「笑い事にするんじゃないですよ」
「それにしても、阿響斗のマスク外してるの初めて見たな」
誠がなんとなくそう言った。
「牙があるんで、あんまし見せたくないですけど、、、」
「今日は飲まなきゃやってらんないです!」
確かに、阿響斗の歯には大きめの牙が二本生えていた。
「怖がられそうで、可能な限り隠してましたけど」
阿響斗が下を向く。
「まぁ、そうだなあんま食事の時も顔見せないようにしてるもんな」
誠がボソッとそう言った。
「嫌なら部屋に戻りますよ?」
「えーやんえーやん。チャームポイントや」
翡呂がそういって阿響斗の頭を撫でた。
ふと、横を見ると誠の席にビールが置かれていて、固まった。
「ま、まことはん?飲んでないやんな?」
「うん?まだ、飲んでないよ?」
「阿響斗はん、ありがとなぁ!お前救世主やわ」
そう言った阿響斗に抱きついた。
「まぁ、翡呂が来たし乾杯しよ」
「いや、待ってそれはあかん」
「なに?嫌いなの?」
誠が不思議そうな顔をする。
「じゃあ。いいや俺のもっと」
誠がごくごくとビールを飲む。
「わぁぁぁぁぁ!!!」
阿響斗に抱きついたまま翡呂は叫んだ。
「翡呂うるさい!」
翠が切れ気味に言った。
「じ、じぶんら!知らんやろ!俺らタメだからしっとんねん」
翡呂は、慌てていた。
「翡呂くるしぃ」
阿響斗が声を出す。
「あっすまへん」
「ていうか、阿響斗飲んでよかったの?」
翠は心配そうに聞いた。
「体は通常の成人と同じくらい強いからだいじょうぶぅ」
(体は、、ね)
翠がその言葉に少し引っ掛かってしまった。
「ひっく、、うぐ」
「え?」
翠が隣を向くと誠が泣いている。
「誠様?かなしいの?誠様泣くとぼくも、、、ぼくも」
「あぁ、ほら泣かんといてや」
翡呂は片手に持っていた阿響斗を翠に渡した。
「タメやろ。そっちはそっちで何とかしてくれや」
「誠はん。大丈夫か~?」
翡呂は誠の方へ行く。
翠はさっと阿響斗を置いた。
「ほら、ご飯食べないと冷めちゃうよ」
と言ってご飯を食べ始めた。
「ひろぉぉぉ。翠が冷たいぃぃぃぃ」
そう言って翡呂の方へ駆け寄ってきた。
「あぁ大丈夫やで、よしよし」
そう言って翠の横の席にいた、誠から離れて阿響斗と反対側へ向かった。。
そしたらぐっと後ろに引っ張られた。
「やだ。」
「幼児退化すんなや!」
ぺしっと誠を叩いた。
「もうやだぁぁぁぁ」
(27歳でそれはきつすぎるで、、、)
哀れな目で翡呂は誠を見た。
「いやぁ、ご飯上手いなぁ」
いつも以上に翡呂はにこにこでご飯を食べていた。
「翡呂えがお~えへへ」
阿響斗がその横でちょっかいを出す。
「誰も俺に構ってくんない」
その前で誠が伏せている。
もはや誰も構わない。
「翠よっぱらへんの?」
「そんなに酔いませんね」
翠だけ酒豪なのだ。
誠は、泣き上戸。翡呂は、笑い上戸。阿響斗は、感情の起伏が激しくなる
(まぁ、翡呂だけまだ酔いづらいのが救いだな)
そんなことを思いながら酔っぱらいの介護を全て翡呂に丸投げした。
「あぁ、阿響斗はん寝てもうた」
横に座っていた翡呂は頭を撫でた。
「こいつ子供っぽいやんなぁ」
「その子、子供だよ」
「へ?」
翠の発言に驚いたように顔を上げた。
「22歳やで?」
「霧さんの子供だから、妖怪で成長が遅いみたい」
「そうかぁ。えらい大変やなぁ」
翡呂は、それを聞いても特に何も言わなかった。
「ひっく、、、翠。ごめんなぁ」
「誠様大丈夫ですよ」
「俺がもっと気にかけていれば、、、」
そう言ってまたグラスをグビッと傾けた。
「あーーーーー!!!何してはるん!」
「翡呂も、ごめんなぁ」
翡呂の事を口にしようとしたとき。翡呂はガタッと立ち上がった。
「さっさとこの酔っぱらいども部屋に戻さんとなぁ」
「まだ、お酒のこってるよ?」
「飲みなおそうや。俺だって、翠と晩酌したいねん」
「へぇ、珍しい」
ー大事な家族だからな
(なんて、言えるわけないんやけど)
「酔いつぶれないでくださいね」
翠はその誘いを承諾した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「阿響斗から、返信来たよ」
蓮矢は霧に手紙を返した。
霧はその場で手紙を読む。
そして、目を見開いた。
その目からは涙が溢れだしていた。
「どう、、だった?」
恐る恐る聞くと。
霧はギュッと口を閉じて、ゆっくりと口を開いた。
「もう、文通はしないのだな」
「えっ、なんで」
霧は目線を下に向けた。
「目の前から消えてほしいのだな」
「な、、なんで?」
「少し、時間、開けるのだな。でなければ、お前を」
必死に何かをこらえているようだった。
「殺してしまう!」
気迫に負けて蓮矢は急いでその場を後にした。
走って廊下を進んでいく。
(なんで、、なんで、、なんで、、、)
いろんなものが反芻していく。壊れてしまいそうだった。
翠の事も、霧の事も何一つ上手くいかない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「翠。今日はええ月やなぁ」
翡呂はにこにこしながらそう言った。
2人を寝かせて、翡呂と翠は晩酌をした。
「ええとても」
「狼男だったら満月の日に覚醒したりするんかな」
翠は笑った。
「そんなことあるわけないでしょ」
「現実主義やなぁ」
「そうだよ。ここは現実、因果でしか繋がんない」
翠の不敵な笑みを、翡呂は長い前髪の隙間からじっと見る。
(まずいこと、なってへんかなぁ)
その瞬間突風が吹いた。
翠は黙ってその風の吹く先を見た。




