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それぞれの正義②

「初めましてだな。拙者は北緯 霧だな」

尻尾を揺らしながらにこりと笑う。

「こいつは?」

「わかるでしょう。それがあの子の父親よ」

「お前が、、?」

確かに阿響斗と同じような顔つきではある。

(だけど、アビの方が大人びてるな)

「なんで、お前は、アビを捨てたんだ?」

「捨てたとは聞き捨てならないんだな。これが拙者の愛情だ」

「だとしても、なんでもっとそばに居ようとしなかったんだ」

「拙者も御嶽に仕えておると言えば納得するんだな?」

「そうじゃなくて」

蓮矢は拳を強く握った。

「蓮矢、抑えなさい」

知佳が凛とした声で言う。


「その人は妖怪なの。わかってあげて」

「でも!」

「人の家庭に口を出すものじゃないわ」

「だから!!!」

蓮矢は立ち上がり隣の霧の前に立ちはだかった。


「だから!てめぇはなんも理解できてないんだよ!」


霧は目を見開いた。


「なんだというのだな。これが拙者なりの答えだな!」


そう蓮矢に圧を書けるように、そして自分に言い聞かせるように霧は言い放った。


「なぁ、知佳あいつ人間の年齢で言うと大体何歳だ」

「成長で言うと、年齢で言うと半分以下よ。体のつくりは成人は超えているけどね」


(11歳、、、)


蓮矢は歯を食いしばった。

(確かに成長が遅いとは思ったけど)


阿響斗なりに必死だったんだ。


「ごめんな、知佳」

そう言って、霧の胸倉を掴んだ。

「こんなカスなら、そりゃ見せない方がいいよな」

握った拳を振りかぶった。


パシッ


「アビ!?」

「だめだよ。蓮矢様。」

阿響斗が悲しそうな顔をして笑っていた。

「阿響斗か?」

「蓮矢様。僕が愛されないのは、僕のせいだよ。」

寂しそうな笑顔を作った。


「僕が、お母さんを殺しちゃったからだよ」


まだまだ小さな子供背負いきれるはずのない。

「知ってたの、、、?」

知佳が驚いた顔をした。

(私が気づかないはずがない、、)

阿響斗は小さく首を横に振った。

「妖怪には子供ってのは存在しないよ。生まれたその時から大人。僕はハーフだから記憶力が少しあったんだ。生まれたときの記憶がちらっと残ってるんだ」

阿響斗は涙を見せなかった。


「お父さん、、、だよね」

阿響斗は霧に声をかけた。

「そうだな。」

唇をきゅっと結んで。何かを必死でこらえた。


(僕は僕が捨てられた理由は、理解してるつもりだよ。いつかあったら言おうと思ってた。)


「お父さん、生まれてきてごめんなさい」


霧は目を見開いていた。

阿響斗はそっと蓮矢の袖を引っ張った。


「行こ、これ以上僕がそばに居たらだめだから」

「、、、」

蓮矢は何かを言おうと思ったのに、何も思いつかなかった。

「わかった」

それだけを唯一言葉にできた。


蓮矢がリュックを背負って行こうとした。

その横にいた知佳がボソッと。

「だから、他の家に口をはさむべきじゃないt」

蓮矢は睨むように知佳を見た。

「黙ってろ」

二人は去っていった。


霧はうつむいた。

「間違っていたのだな。拙者は」

知佳はそれを見て頬杖をついた。

「さぁ。どうかしらね。それぞれ考えはあるからね。」

誰一人間違っていない、だからこそ最悪の形で食い違ってしまった。


”他人の事に口を挟まない”

これが知佳の決めている鉄則だ。


だが、蓮矢の言いたいこともわからないわけではない。


(少し変えてみるか。)

知佳は、ふーっと息を吐き。

そして、口を開いた。


「人も妖怪も霊もそれぞれの思いがあるのはわかっている。だから、私は何も言うつもりはなかった」

「どういうことだな?」


「だから、」

知佳はまっすぐに霧の顔を見た。


「歩み寄るために言葉はある。だけど、貴方はそのことから目をそらしてる」


これなのだろう。


霧は、妖怪である自分とそうでない阿響斗を育てていいのかわからなかった。

だから、霧なりの愛情で、阿響斗を人へ預けた。

でも、阿響斗は、そのことで自分を見て愛されていないと思った。


(ねぇ、蓮矢。貴方は間違ってないわよ。だけど、感情的すぎるの)


「言葉がなくても伝わる愛情っているのは、それまで培ってきた信頼と言葉の上でしか成り立たないのよ。」


妖怪の子だとバレないように霧は退いたのかもしれない。

だけど、それは口で言わなきゃ伝わらない。


(本当にめんどくさい。そうずっと思っている。

だけど、本物を目の当りにしたら。悪くないって思えるのよね。)


唇を噛みしめるように、うつむいている霧。

気づくのが遅すぎたのだから仕方がない。


まだ、間に合うのか、はたまたもう無理なのかはその人次第。

さて、どっちだろうか。


そよ風が知佳の髪を揺らす。

その風は蓮矢たちが歩いていった方へ。


(鉄則破っちゃったな。だけど、これも悪くない)

その方向を見て、知佳はぼやいた。


「私は言うこと言ったわよ。貴方はどうするの?蓮矢」

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