それぞれの正義①
蓮夜は傷が癒えてきたころ、知佳のいるであろう森へ来た。
「ねーダメ!まだ寝てないとだめですよ!」
「アビ大丈夫だって」
「死んじゃうよぉぉぉ」
涙目のアビの頭を撫でる。
「そんなんじゃ死なないんだって」
「知佳ってあの女の霊媒師でしょ?危ないって」
知佳の強さを完璧に理解しているのか必死に止めている。
「大丈夫だって。急に攻撃なんてしないから!」
「じゃあ、僕もついてく」
ってことで阿響斗がついてきた。
麦わら帽子をかぶってルンルンしている。
「マスク暑くないのか?」
「慣れっこだからね」
「ほーら外せ。熱中症になるぞ」
「やーだ!絶対引かれるもん」
阿響斗は必死に口元を隠す。
「わかったわかった」
まるで弟ができたみたいで少し可愛いと感じた。
「みんなとは話せたのか?」
「うん!」
「何ともなかっただろ」
「うん。誠様とか、いつもと変わらず優しかった。」
* * * * *
「誠様。ごめんなさい。僕正体」
阿響斗は誠の部屋で謝りに行った。
「許さない。」
そう言って阿響斗の頭に手を置いた。
「えっ」
阿響斗は顔を上げると、誠が悲しそうな顔をしていた。
「だから、もう隠し事しないでね?」
「なんで?」
「子供は我慢とかしなくていいの、のびのび生きるのが仕事!わかった?」
* * * * *
誰一人、知佳が言うまで彼が子供なことに気づけていなかった。
そのことを悔いていたのは、蓮矢だけじゃなかった。
「なんで皆さんそんな優しいんですかね」
阿響斗はぼやくように言った。
「御嶽のやつらは良い奴だよ」
(お父様だって、、、)
御嶽で仕えている人はは孤児だった子も多い。また、路頭に迷っているものも。
「お前は、御嶽誰が継ぐと思う?」
「僕は、、、どうだろ」
阿響斗が頭を悩ました。
「、、、いない」
そう言って阿響斗は、はっとした。
「すみません。僕なんて失礼な」
すごく胸の奥に刺さったようだった。
(俺も誠も継ぐようなタイプじゃない。愛漸も多分ないだろう。だとしたら、、)
目の前に長髪の男が見えた気がした。
(いや、ありえないだろう)
「ねー蓮矢様つかれたぁ」
「じゃぁ休憩するか」
阿響斗の背負っているリュックからレジャーシートを取り出し広げた。
「、、、?」
阿響斗が急に振り返った。
「どうした?」
阿響斗は黙って指をさす。
その先には隠れているつもりであろう知佳が気からはみ出していた。
「、、、お前、何してんの???」
「一緒に食べてあげるわ」
「、、フフッ寂しかったのか」
「正直に言えばいいのにね」
「そんなんじゃないわよ!」
知佳が蓮矢と阿響斗の横に座った。
「まぁ多く作ったから食ってみろ!味には自信あるぞ」
「へぇ、料理できるのね」
「蓮矢様、料理上手なんだよ!」
阿響斗が自慢げに言った。
「なんでお前が自慢げなんだよ」
そう言って蓮矢がこずいた。
「改めて、知佳ありがとう」
蓮矢が知佳に頭を下げた。
「なんの事かしら」
そう言って知佳は卵焼きをつまんでおいしそうに微笑んだ。
「私難しいこと忘れやすいのよねぇ」
そう言ってなんてことないかのように流した。
「えっでも」
知佳が口元に人差し指を当てた。
「私は巫だから、怨霊は倒さないといけないの。意図的に逃すなんてルール違反で加護がなくなっちゃうわ」
「何の話してんの?」
阿響斗は不思議そうな顔をする。
「何でもないよ」
蓮矢はそう言って頭を撫でた。
「かまいたちの子か、、、」
知佳が阿響斗を哀れんだような目で見る。
「その言い方だと親の方知ってるのか?」
「、、、さぁ」
そう言って知佳はお茶を飲んだ。
「なぁ教えてくれないか?」
「知らないわ」
知佳の目が軽く赤みを帯びた。
いうことを聞け
そう、言っているみたいに。
「一つだけいいこと教えてあげる。」
「なんだ?」
「世の中には知らない方がいい情報って結構たくさんあるのよ」
知佳がちらりと阿響斗を見る。
「あんな都内だと体思いっきり動かせないでしょ。ここは安全だから自由に動かしておいで」
暇そうにしていた阿響斗は嬉しそうに起き上がって。
「いいの!」
そう言って耳としっぽをはやして消えていった。
「、、、あの子は親の姿が見えないのよ」
知佳が黙っていたことを言った。
「なんで?」
「霊力が対等以上じゃないと見えないの、具現化してる状態を除いてね。」
「妖怪なら具現化すれば」
「確かにできる。けど、すべてが完璧に人の姿になることはできない。ってこと」
「あいつの親は近くにいるってことか?」
知佳はニコッとしたように笑みを浮かべた。
「あの子はあくまで人間なの」
「うん。」
「だから、妖怪と同じ生活ができるかっていえばそうではない。」
「でも、それは人と生活しても一緒だろ?」
「そう。それがハーフの難しいとこよ。年を取るのも遅い。普通に考えて途中から周りにおかしいことがバレていく。だから、私は御嶽家の前に置いていった。」
「お前が?」
「渡されたのよ。かまいたちの父親に」
「母親は?」
「、、、聞かないで」
「すまない」
普通に考えて耐えれるはずがない。
知佳が蓮矢の隣を見る。
「いつまでそうしてんの?」
「嫌、でもしかし」
蓮矢は恐る恐る隣を見る。
耳としっぽが生えた和装の人間が、正座していた。




