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愛しい人よ②

「アビ」

「助かるんだってよかったね」

救護班に明け渡し治療を受けた後、阿響斗が来た。

「フフッ」

少し寂しげに笑った。


「みんなを騙しちゃってたなぁ」


「そうだな」

悲しそうな阿響斗の頭を蓮矢は撫でた。

「誰も知らないのか?」

「うん。多分ね」

「アビ、もし俺が御嶽を継ぐとしたら、お前はどうする?」

「僕は、、、どうしようね」


”貴方の年齢じゃまだ子供”

知佳のその言葉が心にひっかかった。


「親は?」

「わかんない。生まれて気が付いたらここで雑用してた。」

「そっか。もし親が見つけられたら、ついていきたいか」

「、、、会ってみなきゃわかんない」

「そうだな。もしさ」

「なに?」

「もし、みんなに会うのが気まずいなら、連れ出してやろうか?ここから」

「んーん。僕は会うよ。もし許してもらえなかったら、その時は、、」

瞳をうるませていた。自分たちと同じくらいの年齢だと思っていたのに、まだこんなに幼さが残っていたことに驚いた。


「助け出してね」


そう言って笑った。

「当たり前だ」

阿響斗はここに仕えているが本当に良い奴だ。それは全員が知っている。

だから、こそこのまま純粋に育ってほしい。


ーほしかったのに、


「蓮矢様、ごめん。僕どうしていいか」

目の前で包丁を構える阿響斗。その後ろには狼雅がニヤニヤと蓮矢を見ている。


「アビ!!!」


ベッドから飛び起きた。


ハーッハーッ


「蓮矢どうした?」

誠がベッドの隣で座っていた。その後ろに翠が立っていた。

「アビは?」

「俺が来たときにはもう居らんかったぞ?それよりすごい汗だ」

「アビ!」

蓮矢はベッドから降りようと立ち上がる。

「ストップ。落ち着いて」

誠が蓮矢を引き留める。

「翠。阿響斗は?」

「あー自室で寝てましたよ」

「だってさ」

「よかった。」

蓮矢は安心して腰を下ろす。


そして、思い出したように誠に話しかけた。

「なぁ、誠。ほんとに御嶽を継ぎたいのか?」

蓮矢は思ってることを聞いた。

「継ぐよ。俺が」

誠が当たり前のように答える。

「警察はもういいのか?」

「いいんだよ」

誠は、即答した。

(マジか、、、)

蓮矢は固まった。


「でも!俺が!」

「いい加減あきらめろよ!」

誠が珍しく声を荒げた。

「邪魔なんだよ。お前の存在が」

「誠、、?」

「悪い怪我人だったな。またな」

誠はそう言って翠と病室を離れた。


そこから、一週間たった。たまに阿響斗が来るぐらいで他は何もなかった。

(俺一人かぁ、寂しいなぁ)

そんなことをぼやきながらダラダラしていた。


「まぁいろいろあったし、やっと休暇って感じか。俺頑張ったなぁ」

「失礼するわよ♡」


「ててて店長!?」

「あら♡まだその呼び方なの?愛ちゃんでいいわよ」

「愛漸さんでお願いします」

「全くもう照れ屋なんだから」

いつもと変わらない様子の愛漸に安心した。

「あのあとは大丈夫だったか?」

「あら?鈍感男はダメねぇ」

「なにが?」

「知佳だったかしら?あの女の子、私たちを逃がしてくれたのよ?」

「えっ」

知佳の姿を思い出す。確かに何人も相手しても息も霊力も切れていなかった。

「誤魔化してたんでしょうね」

「そうか」

(後でお礼でも言っておくか)

蓮矢はそう思った。

「そういえば。何しに来たんだ?」

「まずは、謝罪させてもらうわ。散々ひどいことしてごめんなさい」


「ほんとだよ」


蓮矢は怒ったように言った。

「え?」

「なんてな?そりゃ主の事大事に思ってんのも大事だし、裏切られたら困るもんな」

「心広いのね♡愛達を助けてくれたのになんの恩義も感じないほどくそ野郎じゃないわ♡」

そう言って愛漸は投げキスをした。

「困ったら愛を呼びなさい。助けてあげるから」

「ありがとう。助かるよ」

「感謝が言える男って素敵ね♡」


「でも、」

「ん?どしたの?」

「今は俺らに構うな」

「ひどいわ仲間外れ?」

愛漸が口をとがらせる。


”あの女もう寿命よ”

思い出すように、じっとその言葉が頭を反芻する。


「そばに居てやれよ。どういう関係か知らないけど誌乃って大事な奴なんだろ?」


そう言うと愛漸は目を見開いた。

「いつの間にそんな立派になったのよ。」


「レンちゃん」


蓮矢が顔を上げる。

「レンちゃんのこと好きよ」

「ごめん。」

「早すぎるわね♡第二婦人にならしてあげるわ」

「勘弁してくれ」


ガラガラ


「あら♡正妻がきたのね」

「勘弁してください。」

翠が病室に現れた。

「翠?珍しいな」

「そうなの?」

「何しに来たんだ?」

「愛漸さんが怪我人に手を出すんじゃないかと」

そう言って翠が愛漸の胸倉を掴んで外へ追い出そうとした。

「ひどいわね。愛はそんなことしないわよ」

「そう。」

「またね♡レーンちゃん」

愛漸はウインクを残して退場した。

退場する一歩手前で翠に何かをボソッと呟いていた。翠は顔を赤くしていた。


愛漸は家に戻った。

普段は一人暮らしだから家にすぐ帰らずに店長をしている店に行ったり、ダラダラ外に居座っていた。

だけど、最近は早く帰ろうとしている。

(今日はカレーでも作ろうかしら)

そう言ってスキップしながら家に向かう。

「ただいま!♡」

「おかえり」

目の前にゆっくりと歩いてくる老婆がいた。


世界で一番愛した人

急にいなくなって探し続けた人。


「今日も素敵な服ね。そのスカートも似合ってるわ」

そう言ってにこやかに笑う。

「ありがとう♡誌穂は今日もきれいだ」

「そんなわけないでしょう」

「どんな姿になっても、世界で一番きれいだよ」


いつかちゃんと告白したい。プロポーズをしたい。でも、優しい人だからきっと断るだろう。


どこまでも心が綺麗な人。世界で一番美人な人。

時間は戻らなくても今から少しでも長く繋いでくよ。


愛漸は誌穂の手を取って、跪く。

そして軽く手の甲にキスをした。


(穂乃が見たら何ていうかな。なんてね)

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