愛しい人よ①
「ダメだよ」
知佳の声が全員に響いた。
「えっ」
愛漸が顔を上げる。
「貴方はいいわ。あの女はダメ」
「なんで、、、」
「私は霊達の治安を守る義務がある。妖怪やもともと霊だったやつとは違う。人の霊は成仏する必要がある。それにあの女は、、、」
知佳は何かを言おうとしたがやめた。
そして愛漸の方を見た。
「貴方の大事な妹なんでしょ?ならわかるでしょ?」
「誌穂も死ぬってことでしょ?」
「そうね。あの女はもう寿命よ。だったら、親友と一緒に送ってあげt」
「わかってるわよ!」
誌穂は35歳ぐらいが、今は80歳以上の見た目をしている。
「寿命まで待つじゃダメなんですか?」
「怨霊が逃げるかもしれないのよ?」
「そんなことしないわよ!」
そう言って愛漸が必死に抗議するが
「お黙り!」
知佳が怒鳴った。
契約がある以上、その女にしか封印ができない。だけど、人に施す封印なら生命活動と結びつける必要がある。つまり、死んだら逃げてしまう。
怨霊を解き放つのがリスクしかない。
「これ以上の方法が思いつかないのよ!」
知佳がオーラのようなものを纏った。
「あーだ、こーだうるっさいってんのよ。守りたいなら守ればいいじゃない」
「誌乃さん逃げて」
さっきまで戦ってた、蓮矢が誌穂の前に立つ。
「愛漸さん、私も手伝ってあげるんで」
翠は愛漸から刀を下ろした。
「ここの場所なら殺しても誌穂が生き返してくれるはずよ」
「なら、心置きなく」
翠が知佳へ向かった。
「、、、おいで、相手してあげる」
霊力で作っていた刀がさらに大きくなる。
「阿響斗行きな」
「誠様は?」
「蓮矢の方に行く」
「承知です。無理なさらないでください。」
刀が翠の方に向かってきた。
受け止めようと刀を構える。
だが、押し負ける。
「やば、死、、」
「馬鹿だなぁ、翠は」
風のように阿響斗が現れた。
そして、翠を庇った。
その隙に愛漸が殴りかかる。
「遅いのよね」
知佳がそう言って反撃しようとするが、
「そっちこそ」
「、、、!」
阿響斗に腕を掴まれた。
「なんてね、、、トラップ仕掛けといてよかったわ」
愛漸の足元に文様が浮かぶ。
ー牢糸の封ー
「何よこれ」
糸のようなものが愛漸の足に絡まった。
「愛漸さん!」
翠が駆け寄って糸を切る。
それをしている間に阿響斗を霊力で払いのけた。
「なぁ、お前逃げろ!早く結界を解け」
「、、、私が間違ってた。」
目の前で起こっていることが信じられなかった。あんなにひどいことをしたのに味方として、今は逃がそうとしてくれる。蓮矢と翠。
「私、死んだ方がいいかな」
「何馬鹿なことを言ってんだ!」
胸倉を掴んで誌穂に言う。
誠が間に割り込んできた。
「後悔してるなら、今後残り少ない時間で何をするか考えろ?死んだらもう終わりだぞ。だから」
誌穂の前に座り込む。
「生きて」
結界に亀裂が入った。
ー結界解除ー
森の中に出てきた。
「あーもー!面倒なことしてくれるじゃない!」
知佳が苛立ったように声を出す。
「でも、じゃあね」
知佳が一瞬で誌穂の前に現れた。
「「「「えっ」」」」
蓮夜、翠、愛漸、誠は反応しきれなかった。
「馬鹿!」
阿響斗は知佳の攻撃を受けた。
「阿響斗、、」
翠が驚いたような声を出す。
「ごめん。化け物なんだ」
耳としっぽの生えた阿響斗が立っていた。
「かまいたちよね」
「知ってたんだ」
「それもあなたの年齢じゃまだ子供のはずよ」
「そうだよ。でも、僕そこそこ強いからね」
知佳が刀を振り下ろす。
阿響斗はそれを受けようとする。
「アビそれはだめだ!」
蓮矢が間に入る。
霊力でできた武器は霊力が強いほど効果がでかくなる。
鱗で固めた体で蓮矢は守ったが、切り傷が入った。
「がっ」
「ごめん」
知佳が少し動揺したが、誌穂の方へ向かう。
翠が相手をする。
「愛漸!いい加減動け!私たちじゃそうもたない!」
翠が固まってる愛漸に声をかける。
「穂乃いこう」
糸の姿の女の子は誌穂の体へ帰っていった。
そのまま、愛漸が誌穂を抱えるようにして逃げていった。
「どけっていってんの!」
知佳が、刀を振りかざす。
「、、、弟にいい姿見せたいものでね」
知佳の手を誠が止めた。
「誠!」
誠の体を刀が通っていた。
「なるほどね」
知佳がため息をつく。
「完全な対人戦は私向いてないのよ」
「よかった。感が当たった」
誠は安心したように笑った。
「どういうことですか?」
翠はおずおずと、誠に尋ねる。
「俺は支配の糸は繋がってたけど、さっき切ってもらった。だから、俺は一度も霊力を使ってないし、もともとあるわけでもない。霊力ゼロなんだ」
誌穂の方へ誠が言った理由はこれだったらしい。
結界が壊れる直前でお願いしていたらしい。
「降参よ。もう場所わかんないし」
「いってぇぇぇぇ!!!」
今まで我慢していたように蓮矢が叫ぶ。
「蓮矢!?」
背中の血が滲んでいる。
「まぁでも一件落着かぁ」
そう言って蓮矢は笑う。
「阿響斗さっさと家の救護班へ」
「へいへい」
そう言って蓮矢をお姫様抱っこして風のように消えていく。
「知佳さんはどうするんです?」
「私は戦って疲れたわ。少し休むわ。」
そう言って森の奥へ言った。
「貴方はいつまで猫耳のつもりなの」
「あっ」
「猫耳執事、、プフッ」
誠が茶化してくる。
誠を少しはたいた後、元の人の姿に戻った。
誠と翠は二人取り残された。
「翠、俺についたままでいいの?」
ふと、誠は思ったことを口にする。
「私は裏切るつもりはありません。それに誠様は、、、いえ、やめておきます」
「正義って難しいな。」
「全くです。」
警官として過ごしていた、誠。だが、生まれは裏社会の人間。複雑なんだろう。
二人は帰り道へと歩き出した。
「なぁ、翠」
「なんですか?」
「お前、もし御嶽が壊滅したら、そのあと行く場所あるのか?」
その質問の意図は考えなかった。
まぁでも、と翠は少しだけ口角が上がった。
「居たいと思う場所はありますね」
ふと、阿響斗の顔が浮かぶ
「私より、阿響斗の方を心配しては?」
「あいつは大丈夫。困ったら俺が引き取るよ」
「私は引き取ってくれないんですか?」
少し抗議するように誠を見る。
「俺がいいの?」
ニヤケ顔で翠を見る。
「嫌です」
「辛辣だなぁ本当に」
そう言って誠は笑った。




