戻らないよ①
「なんでそんなすぐに霊力を使えるのよ」
誌乃は驚いたように声を出した。
「私、目がいいんですよ」
光が結界を展開した動きを見ていた。なんとなくの動作は覚えた。
「馬鹿!お前寿命を、、?」
「そんなことしませんよ。私は命が大事なタイプなんで」
翡翠色の長い髪を靡かせて、翠は刀を構えた。
「おいで女の子は私が相手してあげる」
糸でできた女の子がとびかかってきた。
「蓮矢様は止めるならどうぞ」
「穂乃さっさとやっつけておしまい!」
「、、、」
穂乃と呼ばれる女の子が糸を出した。
「うにゃ、力借りるよ」
悪霊の能力は悪意の増大。式神だとしてもそれは消えてないはず。
”悪憑き”
そう言って翡翠色の瞳で穂乃を見た。
「教えてください。私にすべてを」
「穂乃!?」
「お前の相手は俺だ!」
「あなたじゃ相手になんないわよ」
そう言って手を蓮矢にかざした。
「霊力を使えないし、武器もなければ私の力を止めることなんてできないでしょ」
「俺は、タフだから生半可な力じゃ倒せねぇぞ」
「邪魔だからどいて穂乃を早く」
「さっさとどいてくれないかしら♡」
「私、対人戦は苦手だけど、弱くはないのよ」
「そう、だけど愛は用事できたの」
「あの霊に思い入れが?」
「そんなとこね」
愛漸が殴りにかかる。
「封印の家系で育った私の力なめるんじゃないわよ」
そう言ってお札を口にくわえた。
穂乃が誌乃に手を伸ばす
「誌穂、、、」
* * * * *
高校生の穂乃が教室で絵を書いていた。
「ほほぉ、上手ですねぇ」
そう言って女の子がやってきた。
「誌穂なにその評論家みたいな口調」
「ナハハだって綺麗なんだもん」
そう言って誌穂と言う女の子が笑った。
穂乃と誌穂は仲良しだった。
「何あんたらやっぱ付き合ってんの?」
「それな、穂乃だってずっと男装してるしね」
そう言って茶化してくる奴らはいっぱいいた。
「あんたら、黙りなさいよ」
誌穂は睨みを聞かせてそう言った。
「おぉ怖い怖い。」
茶化した奴らは逃げていった。
「誌穂ありがとう」
その言葉に誌穂は笑った。
「あんたももっと堂々としてなさいよ」
「僕にはできないよ」
「いーよ。私が守ってあげる」
そう言って腕を曲げて自慢する。
穂乃はそれを見て笑った。
いじめられやすい穂乃にとって誌穂は救いだった。
だけど、そんな幸せな日々は長くなかった。
「誌穂引っ越すの!?」
「そうみたい、、、ごめんね?」
「ううん。僕は一人でも大丈夫!」
「無理しないでよ?」
「僕は僕を生きるんだ!着たい服を着るし、なりたいものになるよ」
穂のは腕を曲げて、
「堂々として次は僕が誌穂を守ってあげる」
その言葉に誌穂は優しい笑みを浮かべた。
「待ってる」
だけど、誌穂が居なくなってすぐ壮絶ないじめが起こった。
「穂乃、、大丈夫か?」
帰ってきた後疲れ切ったような顔をしている穂乃を兄が心配そうな顔をする。
「うん。大丈夫」
「お兄ちゃんにできることがあれば」
「お兄にはわかるはずない!!!」
そう言って扉を固く閉ざして出てこなくなった。
扉を強くたたいた音がした。
「なに、、、」
扉越しに話かけた。
「教えてくれないか。お兄ちゃんにお前のことを、、、」
抱き枕を穂乃がぎゅっと握って
「ごめん、今は思い出したくない」
「わかった」
そう言って、兄は降りていった。
母も父も心配してくれていた。
家からでなくなり、少しづつ気持ちは落ち着いてきた。
しかし、まだ外に出れずにいた。
コンッコンッ
扉のノックオンが聞こえた。
「なに、、、?」
「穂乃開けていいか?」
「いいよ」
そうすると兄がスカートをはいていた
「どう?俺意外と似合ってね?一緒に外に出よ」
そう言って手を差し出した。
「馬鹿にしてるの、、?」
わかってる悪気なんて兄にないことぐらい。だけど、穂乃は怒ってしまった。
「ごめん俺、、」
「んーん。ごめん」
それでまた沈黙になってしまった。
ー元気?
誌穂から連絡が来た。
ー久しぶりに会いたいな
そう返した。
ー学校は楽しい?
その文字に震えが止まらなかった。だけど、誌穂には知らせたくない。
ーとっても楽しいよ
穂乃はそう返した。
そして、スマホを開いたまま家を出た。
(遠くへ行こう)
土砂降りの雨の中、傘を持つことすら忘れて、家を飛び出した。
ゆっくり街中を歩いた。
「あれ?あれ穂乃じゃね?」
その声で振り返ると同級生がいた。
「ほんとだ、さぼり?」
穂乃は逃げるようにその場を走って離れた。
どのくらい走ったのだろう、外は真っ暗になっていた。
(スマホないや、、、)
何も持たずに外に出たことを今更悔やんだ。
神社の階段に腰を掛けていら、そしたら兄が駆け付けた。
雨の中傘もささずに。
「穂乃!!!!」
そう言って兄が穂乃の前で息を切らしていた。
それもスカート姿で。
「心配したぞ、、、」
そう言って穂乃にすがるように兄は崩れ落ちた。
「帰ろう」
そう言って穂乃に手を差し出した。
穂乃はその手を握った。
(温かい、、、)
冷たい雨の中、その手の温かさだけだ穂乃の救いだった。
「なんで、スカートはいてんの」
「なんでって俺似合ってるだろ」
「フフッ変なの」
穂乃は久々に笑えた気がした。
家に戻ると母と父と誌穂がいた。
誌穂は思いっきり穂乃をビンタした。
「なんで、、なんで頼ってくんないのよ!!」
それだけ、いって穂乃を強く抱きしめた。
「外は寒かったでしょう。おいしいシチュー作ったわ」
「さぁ、早く家に入って」
そう言って温かく迎えられて穂乃は涙でいっぱいになった。
やがて、誌穂や家族の協力により穂乃は前向きになっていった。
「お兄」
「なに?」
「誌穂のこと好きでしょー」
そう言って穂乃はニヤニヤする。
兄は顔を赤らめて
「なっそんなことないし」
「僕にはわかるぞー」
兄は降参したように手を上げた。
「そうだよ。好きだよ。穂乃もだろ?」
「僕?恋愛対象は男だよ?だから、是非付き合ってほしい」
「えっちょっと好きなタイプとか聞いといてよ」
兄はボソッと頼み込んだ。
「おっけー任しといて」
穂乃はウインクしながらぐっと親指を立てた。
「今日は誌穂と会う日!!!どう?僕かっこいい?」
「うん!すごく似合ってるよ」
母は嬉しそうにそう言った。穂乃も自慢げだった。
「行ってきます!」
「「「行ってらっしゃい!」」」
穂乃を家族全員で送り出した。
ーだが、穂乃はその日帰って来なかったー




