東京旅行記①
来るべく週末に向けて準備をしていた。
「レンだしなぁ酒飲むよなぁ、、、シバは大人の姿にもなれるか?」
「もちろんぞ!わしは人間と犬の形にならなれるぞ」
ボンッと音がしてそこには子供の姿からは想像できない凛々しい犬の耳と大きな尻尾を持った青髪の青年が立っていた。
(あれ、でも幼児の姿にしかなれないんじゃ、、、)
光はそう思ったが、あまり気にしなかった。
「イケメンだな。心なしか俺に似てる」
「自称イケメンは黙っておれ」
「悪いな自他ともになんだわ」
そう言って服を渡した。
「いい加減恥じらいを覚えてくんね?裸で当たり前にするな」
腰にてをあてて堂々としているシバに言った。
「生まれたままの姿のどこに恥じらいを持てと?」
「はいはい。ふくきまちゅよー」
「自分で着れるわい!!」
そう言って服をぶんどった。
服を着ているシバを見てふと思う。
「ほんとに耳とか他の人に見えないんだよな?」
「おそらくだがそうだろう」
(信用ならないな、、、)
「あっ新幹線のチケット、、、一人でいっか」
「お主わしに座らせんようにするつもりか?」
「霊だからいいじゃん」
むすっとしたシバは
「ちょっと待っておれ」そう言って部屋を後にしようとした。
「ちょっまて馬鹿バカ」その姿で出られるとまずい。
光の家は一階建てで光の部屋とリビングは向かい合わせ鉢合わせの危険しかない。
「馬鹿とはなんじゃ!!!」子供の時に比べて迫力がある。
スッと子供服をわたす。
「お願いだから家はこれでいて、、」
シバは着替えて祠に向かった。光も心配でついていった。
シバは家に来てからあんまり祠に戻らなくなった。
シバの祠は古びていて、祠にしては中々大きかった。その両脇には二つのしめ縄でくくられた大きな木があった。
「お主どこまでついてくるつもりじゃ?」
振り返ったシバが言う。
「だめなの?」
「まぁよい」
少しためらいながらシバは祠を開けた。
中は一畳ほどの大きさで、そこには2つの壺がありその裏にはその二つの全体像を映すように鏡がおかれていた。
「壺、、、?」
不思議そうな声で光が言った。
「わしの骨じゃ」
それだけ言って、シバは畳を持ち上げてものを取り出していた。
「なんで二つ、、?」
シバは一瞬手を止めた。
「、、、わしの恩人の骨じゃ」
少し寂しそうに言った。
それからすぐにまた、探り出した。
「あったぞ!」
取り出したのは中身がパンパンに入ったがま口。中には昔のお金などが混ざり合っていた。
「こんだけあれば足りるじゃろ!」
光はがま口の中を見ながら思う。
(これは銀行で換金しないといけないし、したとて小銭だろうな)
シバのキラキラした目を見る。光はフーッと息を吐き。
「そうだなこんだけあれば十分だ!」
光の全奢りが確定した。
だが、シバの方をみてあれだけ嬉しそうならいっかと思った。
週末まで祖父母にシバについて言及されることはなく平和に日々が過ぎ去った。
出発の日、光は当たり前のようにシバの祠の前で手を合わせて行ってきますといった。
その姿を見てシバも同じように行った。
「「行ってきます」」
祖父の車に乗せられて駅までたどり着いた。シバは終始目をキラキラさせていた。
駅について祖父を見送ったのちにシバをトイレに押し込み大人の姿に変化させ着替えさせた。
切符を買い電車に乗り込む。
「ほほぉこの町は本当にきれいじゃ!!」
過ぎて行く街を見てシバは尻尾を振る。
そのしっぽが光のほっぺにべちべちあたっていた。
「お前、、そのしっぽどういう原理なんだ」
「見えとる者は触れるらしい」
そういって光の顔に思いっきり尻尾を当てた。
ぼふっ
「お前なぁ、、、」
キレかけた光にさも当たり前のようにシバは
「電車内は静かにと書かれておるぞ」といった。
終始悪びれずニヤニヤしているシバに
「後で巫女さんにでも払ってもらうか?くそ悪霊が」
「なっ、、」
シバは静かに座りこんだ。
過ぎていく景色はホストになった時と同じだった。
だけど、あの時は余裕がなくて祠に挨拶をしていなかった。今はその祠の主と一緒に旅に出てると思うと少しおかしく思った。
「5年前ここを出るとき挨拶しなくてごめんな」
「全くじゃ心配しとったんじゃぞ。あの時と違って今は笑顔だからまぁ、見逃してやるか」
シバは祠から出ていないという癖になんだかんだ心配してちょくちょく顔を出していたのだろう。
光の顔を覗き込むように見たシバの頭を撫でた。
「今は子供の姿じゃないぞ?」
「なはは!本当に子供みたい」
「なんじゃと!わしは数百年生きとるんじゃぞ!?」
外は大人びているが中身は犬の霊であるせいか、純粋で素直であった。
そんなシバに光は母性が湧いてきていた。
(この旅は一人じゃなくてよかった)
新幹線のある駅に着く前にシバに光はシバにマスクを渡した。
それをシバは見ながら、
「なんじゃこれ」っと言いながら手を通し始めたので光は止めた。
「ナンパ対策だ。お前簡単についていくだろ?」
「ついていかんわい」
そう言って光にマスクを着けてもらったが
「なんじゃこれ!息苦しい!」そう言って外した。
「わかった。”知らない人についていかない”これは絶対な?」
「当たり前じゃ」
そういって駅を降りた。新幹線が来るまでまだ時間があったため、光たちは周辺を散策した。
「おにいさんたちー。カフェでパンケーキたべない?」
光はマスクを着けていたが、シバは素顔をさらしていたのでそれに見ほれた女性がナンパしてきた。
「あっすみまs、、」
「パンケーキってなんぞ!!!!」
そう言って食いつくシバ。言わんこっちゃないと思いシバの襟を引っ張ろうとしたら。
「うわっ、何その言葉遣い。すみません人違いでした。」
そう言って去っていった。
シバは何が起きたかわからず混乱しているが、光は一瞬ぽかんとして爆笑した。
振り返ったシバは少し驚いたように
「わしの言葉遣いおかしいのか、、光よ。」
と言ってきた。光はまた爆笑した。
「まぁでも、人違いなら仕方あるまいが、パンケーキとは何ぞ?」
(こいつマジで裏とかわかんないタイプだ、、)
光はそれをうらやましがりながら、「甘い食べ物だよ」といった。
「なるほど甘味か!!行くぞ!」そういって走り出すシバ。
少しして振り返り、「どこにあるぞ?」と目をキラキラさせていた。
新幹線が来るまで時間があるのでパンケーキのあるカフェに行くことにした。
店の中にはたくさんの女性客であふれていた。
他の客さんのテーブルに並べられた。デザートを見て、
それを近くで見ようとするシバを引き留めながら、席に座って注文をした。
あたりをきょろきょろしている。
「わしらはカップルというものなのか?」
シバが突然そう聞いてきた。
出された水を吹き出しそうになりながら光はシバの方を見た。
「なっなんで!?」
「あのおなごたちがそう言って居る」と顔を向けた。
その先ではキャーッと黄色い感性が響いた。
運ばれてきたおしゃれなドリンクとパンケーキにシバは目を輝かせていた。
「食べてよいか?」キラキラした目でシバは尋ねる
「どーぞ」そう言って光は食べ始めようとしたが、シバが
「箸がないぞ?直接か?」そう言ってきた。
(そうだった最近ばぁちゃん付きっ切りで箸の指導はされていたが、フォークとナイフはまだだった。)
幸いドリンクはストローは使わないタイプだったので、シバは問題なく飲めていた。
少し恥ずかしく思いながら、光はパンケーキを切り分けた。
前を見ると口を開けてわくわくしてるシバがいた。
「はぁ、、、」
光はため息をついた。
仕方なく光はフォークをシバの口へ差し出した。
「フォークは噛むなよ?唇に軽く力を入れて」そう指示して少しずつフォークを抜いた。
「うっうまいぞ!!!」
そう喜んでいた。周りの女たちも喜んでいた。
もう一度口を開けてきた。
「あとは自分で今と同じように食べろ」と近くにあるフォークを指さす。
「わかった!」そういって持ち方は残念だか食べ始めた。
そのうちにほっぺにクリームがついていた。
無意識にほっぺのクリームを手で取ってペロッと舐めた。
はっと気づいたときにはもう手遅れだたった。
周りからの歓声がシバの耳を頼らなくても聞こえてくる。
「しまった、、、」唖然して机に伏せる光にシバは頭を撫でる。
(それにしかみれないだろぉぉぉぉ)そう思い顔を上げる。
そこには宝物を眺めるようなシバの目が合った。
「悲しいときはこうするのがわしが一番うれしい行動ぞ」
その視線はいつかの懐かしみを思い出し少しだけ温かい気持ちになった。
「じゃなくて!さっさといくぞ!」そういってシバを連れてそそくさと店を出るため会計をした。
会計中店員に「付き合ってるんですか?」と聞かれ、「そういう次元の話じゃn、、」と答えてしまいさらに誤解を生んでしまった。
生きている中で一番笑顔で店から見送られた日であった。
新幹線に乗り込み一息ついた。
シバは外を見ながら「よい世の中なったのぉとしみじみしていた。」
東京までは約3時間中々に長い。
流れる景色にシバは少し寂しそうにしていた。
「どうかしたのか?」
「いや、少しだけ故郷から離れるだけでこんなに不安なんじゃな」
「なんださっそく帰りたくなってるのか?」
「帰りたくはないぞ」
そう言って、シバは光の肩に頭を置いた。
光はその頭を撫でた。
突然シバが体を起こす
「なんということだ!塔が立ち並んでおる」
そう言って光も窓を見る
普通の街並みだ。長年生きたシバはたくさんの時代を見て光たちの普段の生活にすら感嘆する。
そのことをちょっとだけ光は羨ましく感じた。
それからしばらくして、気づいたらシバは光の隣で眠っていた。
「お疲れ様」光はそういって少しだけシバの頭を撫でて、スマホを見た。
別に見たいものなんてない、ただ何となく動画を見続けた。
東京に着く前にシバを起こした。
東京駅ではシバはキョロキョロしていた。
「駅なのに駅ではないみたいではないか」
「迷子になるなよー」そう言ってシバと一緒に歩き出す。
あれこれ初めて見るものが多くてうれしくて仕方ないのだろう。
シバのしっぽがずっと光の体にあたっている
(よろけたらふつーに不審者になるな、、)そう思い必死に体感を維持した。
「お兄さん今ひまー?お店寄ってかなーい?」そう言ってメイドの格好をした女性が話しかけてきた。
「すみません。予定g、、」
「暇なわけあるか!わしは光とのデートを楽しんどる」そうどや顔でシバは言い切った。
光の目がまた死にかけた。女性は顔を赤らめて「楽しんでね!」そう言って笑顔で見送った。
「どこで覚えたんだその言葉、、、」
「先ほどの甘味処の店員が言って居ったではないか」
あの店を出るとき急ぎすぎて話を聞いていなかった光であった。
その日はそのままホテルにチェックインをして次の日に備えた。普段シバと光はおんなじ布団で寝ていたため、一人で寝れることにシバはめちゃくちゃ喜んでいた。
ベッドに座ってぼーっとしてたら、目の前に枕が飛んできた。
「何を楽しくなさそうにしておる!旅は夜が一番楽しいものだろ!」
「ほほぉやってくれるじゃねーか!こちとらすべて予約なんだのしてやったんだあほ犬!!」
枕を投げ返した。
「それは感謝しておるわいっ!」光の顔面にあたり倒れた。
「わ、、すまぬ」
おろおろする。シバの顔に枕をあて
「さっ風呂行くって寝るぞ!」
怒って嚙みつこうとするシバを静止して風呂に向かった。
次の日ホテルの滞在場所を伝えたら車で、レンが来てくれることになったので待っていた。
「お主の友達か楽しみじゃ!!」
そう言って尻尾をぶんぶん振っているシバは今日も元気いっぱいだ。
「おっ来たぞ!」
黒い高級車が光たちの前に止まった。
中からは背の高い、いかにもな見た目のマッシュの金髪ピアスが出てきた。
「お待たせさせたね。お姫様」




