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いつだって真実はその先に②

「光よ」

「なに?」

朝起きてからずっとクーラーの入った涼しい部屋で二人はだらけていた。

「お主、仕事はないのか?」

「えーそれ聞いちゃう?」

光は笑っていた。


ここ何週間も二人はだらけていた。

「ニート」

「なんじゃそれは」

少し光は考えた。

(そっかニートってわからないのか)

「んーと。家の警備をする人の事かな」

「ほぉ。ならわしもニートのようなもんじゃな」

「ブフォッ」

光が吹き出した。

「なんじゃお主汚いのぉ」

「ごめんごめん。シバは日本一のニートだね」

「当たり前じゃ。何千年も前から行っておるぞ」

光が下を向いてプルプル震えている。

「お主、まさか嘘を言ってることはあるまいな?」

「ないよ」

光のそばに黒いもやがしっかりと見えた。

「嘘をついておるではないか!!!」

シバが光にとびかかった。

「アハハ!!!ごめんって」

そう言ってシバの頬を光は引っ張った。


今は祖父母がいないのでシバは犬の姿で自由にさせている。

光はまるでペットを飼っているような気分になっていた。

「ちょっしば落ち着けって!!!」

シバが本棚に激突して倒れた。

「いたいのぉ」

頭を押さえているシバの上に本が降ってきた。

”時雨の祟り”だ。

シバがちょうどぶつけた場所に落ちてきた。

「いったいわー!!!!」

「先祖に祟られてるじゃん」

光が笑った。


「祟ってませんよ?」

光は時雨が目の前にいて驚いた。

「お静かにお願いしますね?シバには見えないので」

そう言って時雨はニコッとした。

「少しお邪魔します」

「はっえっ」

「どうしたのじゃ。うるさいぞぉ」

シバは怪訝そうな顔をした。

「ごめんって。シバ大丈夫か?」

「依り代は不便じゃのぉ」

涙目のシバが言った。

「じゃあ霊体になればいいじゃん」

「馬鹿者が。わしの霊体は制御できぬのじゃ。じゃから、能力低いものに姿を現すことはできぬのじゃ」

「えっ、、」

光がしゃべろうとしたら急に声が出なくなった。


「それは言ってはいけませんよ。まだ」


時雨が人差し指を唇に当てていた。

光の手が無意識に動いた。

「ちょっと体の一部借りますね」

そう言って”時雨の祟り”を手に取った。

「どうしたのじゃ」

シバが不思議そうに眺めている。

「いや、なんもない、、」

光が言い切る前に手に取った本をシバに投げつけた。

シバの頭に当たる。

「なんじゃ!!!」

「は???」

「こっちのセリフじゃ!ボケナス」

そう言ってシバは跳ね返った本をキャッチしようとして爪で破いてしまった。

「あっすま、、、」

シバは少し固まった。


「、、、、!」

シバは目を見開いた。

「どうしたの?」

光が本を覗き込もうとするとシバは阻止をした。

「すまぬ少々本を破いてしまった。」

そう言って本をじっと見て、そして光の方をはっきりと見た。

「なぁ光よ。この本をわしにくれぬか?」

「えっ別にいいよ?」

思い出の本ではあるが、もう読み返すこともないと光は思った。


「恩に着る」


そしてシバはそれを咥えて立ち上がった。

「祠に置いてくるとしよう」

そう言って家を出ていった。

光もついていこうとして足を動かそうとしたが、動かなかった。

「え?」

「ダメですよ。もう少し待ってからでお願いしますね」

時雨の優しい声が響いた。


シバは霊体の姿になって祠へ戻った。

霊体になるとき持っているものは同化するから本も自分だけにしか見えないはずだ。

袋閉じのようになっていた。その本は封印でもされていたのか全く気付かれなかった。


千年の時を超えてもきれいな状態なのはそのせいだったのか。

小説の文と変わらない筆跡の文字がそのまま書かれていた。


コロへ


そこから始まる短い手紙。

* * * * *

コロへ

ある日夢を見たんだ。

私が書いた小説が子供たちとコロが仲良く読んでるところを。

うれしかったなぁ。

私の見る未来は確定されないことが多いんだ。

このまま進めば起こる未来。そう認識してる。

だから私は夢の話をしない。


だけど、この未来だけは、本当であってほしいから。

千何年も前から願いと祈りを込めて手紙を書きました。

時月は時を超える。


そうだ、何千年後の未来かもしれないし言おうかな。

私が見たかった夢の話。


私は

* * * * *

「わしも、、」

本を持つ手に力がこもる。


あなたのことが好きだ


「そうか、同じ気持であったのか」

シバの目には涙は浮かんでいなかった。


千年越しの恋文。

儚く淡い恋だった。


シバの口元に笑みが零れる。


そして、時月がいつも立っていた祠の前で座り込む。

「悪いことをしたのぉ。最後ぐらい顔を見せるべきだったのかのぉ」

少しだけ寂しく思った。

老いていく姿をずっと見ていた。

手紙に書かれていた日付は、陽子と時月が隣の町で暮らしていたときだ。


(だから気づかなかったのか)


広すぎる境内。全く空気を読まない昼の太陽。

馬鹿馬鹿しく思えてしまう。


「あっシバ!!!」

光がシバに声をかけた。

シバは驚いたように振り返った。


「なぜ、、、見えてるのじゃ?」


「え?なにいってんの?」

(時雨の加護のせいか?)


何度も祠の前にいた時月と目が合った気がした。

気のせいだと思っていた。


「最初から見えなくなった時なんて一度もなかったよ」


シバは目を見開いた。


目の前に時月が現れた気がした。

べーっと舌を出していたずらっ子のようおどけて見えた。


「ハハハ!本当にお主らは」

シバは思いっきり笑った。目に浮かぶ涙にも気づかずに。


ブーッブーッ

光の携帯が鳴った。

「あっ、蓮矢からだ」

スマホを除くと目を疑った。


ー逃げろ

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