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終わり始める関係の中に①

ー新幹線で光とシバを送った後、俺は最低なことをしたー


翠の顔が今だに蓮矢にこびりついていた。

少しだけベンチに座って上を見た。

しっかり息を吸って吐き出した。

そして両方の頬を思いっきり叩いた。

「さて、頑張りますか」


「お母さんあの人へん」

「しっみちゃだめよ」

子供をなだめながらそそくさと女性が去っていった。


少しばつが悪くなりながらも蓮矢は立ち上がった。

蓮矢の行先は決まっていた。

車を走らせてその場所へ向かった。


都内の病院だ。

ー伊藤 茉莉様

そう書かれた病室の前に立った。


ガラガラッ


蓮矢は真剣な面持ちで扉を開けた。

「レン、、、君」

茉莉は驚いた顔をしていた。

点滴のつながった腕をみて蓮矢は少し申し訳なくなった。

「茉莉、、ちゃん」

姫をつけるのはやめておいた。

「レン君ごめん私。」

そう言って蓮矢の方へ体を動かそうとしたが、蓮矢が止めた。

「落ち着いて茉莉ちゃん」

蓮矢はベッドで座っている茉莉と目が合うように屈んだ。

「俺は怒ってないよ」

まっすぐ茉莉を見て蓮矢は落ち着いた声で言った。

「でも、、わたし、、」

「わかってる」

蓮矢の傷を見て茉莉はおどおどしている。

「俺が全部悪い」

「ちがう!私が、、私が暴走したから」

茉莉の目から涙が溢れていた。


「傷つけるつもりなんてなかった。だけど」

「うん」

「ごめんなさい」

「大丈夫だよ」

蓮矢は優しく声をかける。

「茉莉ちゃんには俺は必要ない」

「ちがっ」

「聞いて」

茉莉の言葉を遮った。


「茉莉ちゃんは俺のため可愛くなったりお店でお金を使ってくれた。」


もう一度茉莉の点滴に目を向ける。

茉莉は少しやつれた顔をしていた。

「だけど、こんなに無理させてたんだね」

「それは私がそうしたくてやったの」

「わかってるよ。でも、入院して、メイクも服も着飾っていなくても十分茉莉ちゃんは素敵だよ。」

「ありがとう、、、?」

全く偽りのない蓮矢の本心だ。

「だから、これで最後」

「え?」

「俺はホストをやめる」

「ちょっと待ってよ!」

慌てて茉莉が止める。


「私が今までどれだけあなたに!」

「お金が必要なら返すよ」

「そうじゃなくて!」

「なに?」

少し冷たく言い放った。


茉莉もはっとした。

「ごめん。また暴走しかけた。お金はいらない。」

「そっか。じゃあね」

茉莉の目からこぼれた涙がベッドに零れた。

振り返ってはいけないそう思ってドアに手をかけた。


「ごめんね。ありがとう。謝る機会をくれて」


その声が耳に響いた。

振り返ってしまった。

だけど、最後に一言だけ言おうと思い茉莉に近づいた。

そして茉莉の手を取って跪いた。


「いままでずっと尽くしてくれてありがとう。どうか、幸せになってください」


ホストと客という。たったそれだけの関係。

こんなきれいな終わり方ができると思っていなかった。

そして立ち上がって茉莉の目をしっかり見て笑った。

茉莉も涙でぐしゃぐしゃな顔で笑った。

そして蓮矢は病室を去った。


二度と会うことはないだろう


少し伸びをして

「さて、次だ」


蓮矢は携帯を取り出して電話を掛けた。

「もしもし?お父様」

「なんだ?」

野太い声、聞くだけで少しだけ震えてしまう。

「僕は、ホストもうやめます。」

「もう5年だからな。そろそろ俺の跡を継ぐための修業をしてもらわんとな」

「あと、、、」

少し手に力が入る。

「少しお話があります。」

「ほぉ、聞いてやろう。だが、話すなら家に帰ってからだ」

「はい。」

「誠も帰ってきたことだし。久々の家族団らんといこう!」


ブツッ


「誠、、?」

誠は蓮矢の兄だ。

そして次期当主の座を退いて18歳で家を飛び出した。

(なんで今更帰ってきた、、、いや)

裏の社会とつながっている父だ。連れ戻されたってのが正しいと言えるだろう。

(もしかしたら誠はもう)

何人も洗脳のようなものをかけられていたような人を見てきた。

だから、いやな予感がよぎってしまう。

だが、蓮矢は考えている暇などなかった。


次は職場へ向かった。


「あら???」

「よう、店長」

「レンちゃーーーん♡」

店長は蓮矢へ抱きつこうとして蓮矢はかわす。

ひらひらしたスカートを身に着けがっちりとした体格の大男が椅子に座った。

「またよけられちゃった。レンちゃんの照れ屋♡」

そう言って、足を組んで頬杖をつく。

「何の御用?」

「俺ホストやめる」

そう言った瞬間に店長の目つきが変わる。

「あなた、自分のお父さんを裏切るつもり?」

「まさか、許可はもらったよ」

「そう。でもねぇ、愛はその話を父親にもらってないのよねぇ」

「まぁ、今さっきの話だしな」

蓮矢は両手を上げて、やっていないような身振りをする。


だが店長は足を振り上げて、目の前の机に向かって足を振り落とした。


バキィッ


机が真っ二つに割れた。

そして蓮矢に顔を近づけた。

「あなた、匂うのよ」

「くさいってか?」

余裕そうな笑みを浮かべるが、ひきつってしまっていた。

「嘘の匂いよ」

「愛はレンちゃんのこと好きよ。」

「そりゃどうも」

南野 愛漸、父の組のホストクラブ経営の責任者だ。

簡単に喧嘩をするわけにはいかない。

「だけどねぇ、」

真っ黒な目が蓮矢に向けられる。


「愛は狼ちゃんのが好きなの♡」


狼ちゃんは父の名前だ。

「だから、ちょっとだけ逆らえないようにしなきゃね」

がっしりとした体格から放たれる拳は蓮矢の戦意を喪失させるのに十分だった。

「あっは。マジか」


バキッ

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