束の間の幸せの中に②
それから穏やかの日々は過ぎ去っていった。
「なぁシバ。この本知ってるか?」
そう言って光は古い本を取り出した。
「なんじゃそれは」
そう言ってシバは光の持っている本をまじまじと見た。
「俺らの先祖の話だよ。昔、母さんはよく読んでくれたんだよぁ」
そう言って昔を懐かしむように光は目を細めた。
「それはいい思い出じゃのぉ」
そう言ってシバは光が組んでる足の上に乗っかった。
「読んでくれても良いのじゃぞ?」
「シバ、、お前まさか」
「わしは現代の読み書きなどできぬ」
自信満々にそう答えた。
(確かにシバは一度も文字を読んでる姿を見たことがない、、)
「読み書きの練習するか!」
そう言って光はシバをどかそうとする。
「光よ、呼んでくれぬか?」
そう言って上目遣いで見つめてくるシバ。
子供特有の可愛さを行使してきた。
「ぐっその顔やめろ、、、」
光は無事に押し負けた。
* * * * *
時雨の祟り
昔々、日本中に悪霊が現れた。
陰陽師や神職が手を尽くし侵略を防いでいた。
ただ一人、どこにも属さない霊能力者がいた。
ある日、彼の前に巫女が現れた。
「あなたは生まれた地の土地神となっていただきます」
「我は我の人生を生きる」
そう言ってその地を飛び出した。
「我は時雨。霊能力者なり。」
そう言って、全国で霊を祓う仕事を行い。
その対価として宿に止めてもらっていた。
5年経過をして、時雨は誰もが知る霊能力者になった。
光に照らされて青く光る、その髪。刀を振るっているのにも関わらず身軽な動きから彼は”蒼刃”と呼ばれていた。
「助けて。」
ある時、子供の声が時雨の耳に入った。
小さな姿をした子供、その子は生霊だった。
「儀式に使われちゃう」
そう言って泣きわめいている。
「あの子はきっと悪霊よ」
「罠に違いない」
「出ていけ化け物」
そう言ってその子へ心無い言葉を投げる町民。
時雨はそれを庇い行く先を訪ねる。その子は指をさした。
「この方向へ3日歩いたところ」
それだけいってその子は消えていった。
時雨は助けたい一心で持ち物すべておいて、今までにない速さで走っていった。
3日かかるところを1日も経たずたどり着いた。
その子は土に埋められかけていた。
それを時雨は止めてその子を抱いて、元の町へ戻った。
儀式を止めたことに逆上した奴らは問答無用で切りつけた。
元の町へはゆっくりと戻った。弱り切った子供が少しでも楽にできるように。
そして5日かけて戻った町は、前までは英雄として崇めていた時雨を白い目で見ていた。
「この疫病神出ていけ」そう言って宿に置いてた荷物を投げられた。
それを拾い上げていると、頭に石が当たった。
「あんたよね?私の息子を怪我させたの」
「私の旦那も」「英雄だと思ってたのに」
そう口々に言って追い出そうとしていた。
「その悪霊に取りつかれたんじゃないの?」
「”蒼刃”って伝説もしょせん話ね」「そのやせ細った子供を使って悪霊でも出そうっての?」
「まぁ気味悪いから貴方も一緒に悪霊の生贄にでもなってほしいわ」
その子のことも悪く言われた、時雨は刀に手をかけた。
「だめ、、、」
その子は時雨の胸の中で必死に声を出した。
弱り切って栄養も足りないのに、それでも相手のことを思っている。
時雨はあることを決意して生まれた地に戻った。
だがその地に戻って、その子は楽しい日々を過ごすはずだった。
だが、数日でその子は亡くなった。
時雨は怒りに震えた。
そして、その子を儀式に使おうとした一族を滅ぼし、またその子への侮辱をした街を悪霊を使い内乱を起こした。短い時間だけ嵐が起こるように害をなした人間のところへ舞い降り、祟り引き返すを繰り返した。
全て終わっても時雨の心は治らず半年ほど家を閉ざした。
それを哀れんだその地の者たちが野菜とかを届けたりしていた。
「あなたはこの地の土地神となることを受け入れてくれたのですか?」
巫女が枕元に現れた。
「すまぬ。力を借りた上であるが我はなるべきではない。我は私情で罪を犯す人間だ。」
「あなたはこの地の子供に害した人に天罰を下しただけではないのですか?」
時雨は首を大きく振った。決意を固めた目で巫女をしっかり見た。
「我は土地神にはならぬ。だが我がこの地にふさわしい者を知っておる」
巫女は黙って聞いている。
「それまで代理は務めるが、その者がなるというのであればすぐに席は空ける」
「わかりました。ですが、その者がならないといった場合は、、」
「それはあり得ぬ」
そう言って時雨は笑った。
それを聞いた巫女はこの結末を知っていたかのように満足そうな顔をした。
「少しだけ待ってくれぬか?やらねばならぬことができた。」
「あなたはもう力を得ています。だけど、それが完全になるのは守護霊になった時です。それまでは貴方が、その小さな力でこの地を守ってください。」
「必ずや。」そう言って時雨はひざまずいた。
巫女は去ろうと振り返った。
風に揺られ消えようとする彼女の背中に
「かたじけない」
時雨の声が響いた。
そうして、時雨は家の隣に祠を立てた。そこにその子の骨を弔った。
霊となったその子は時雨がやっと外へ出てきたことを喜んでいた。
それを見て時雨は確信を得たような笑顔で、その子の頭に手を置いた。
そして、時雨は結婚をして子供を産んだ。
娘がある程度大きくなった時に妻に別れを告げた。
霊となった時雨はその祠に手を当てた。
「我の姿を使って人に化けると良い。お主が一人にならぬように我の愛する者たちを置いてきた。だから、土地を知って、自然を知って、人を知って、温もりを知って。いつか、守ってほしい。我が愛したこの土地と民を」
霊体となった時雨は、一族壊滅や、町の内乱などを霊を使い起こしたことから、この土地で悪さをするものは、すべて見られていて祟られると言われるようになった。
* * * * *
「今思うとこれはシバの話だったのか?」
そう言って本を閉じた。
シバは黙り込んでいる。
「どうじゃろうなぁ。わしは人の子ではないしのぉ」
それだけ言ってシバはどこかへ飛び出した。
顔はよく見れなかった。
「なぁこれお前?」
そう言って胸の中に問いかけるように聞く。
ぬぅっと先祖が現れた。
「まぁそうですね」
「へーってことは俺もこのぐらいの術使えるってこと?」
「あはは!教えてあげるわけないでしょう」
「なんでだよぉ」
「いいことありませんよ」
そう言って光のほっぺをつんつんする。
「なぁ先祖」
「時雨でいいですよ」
「時雨これをシバに読んでよかったのか?」
「そうですねぇ。まぁでも最後の言葉は、私から伝えるべきだったとは思いますね」
「えっ」
「彼は知りませんよ。この地の土地神になる件も、一族を滅ぼしちゃったのも内乱の件もね」
「まじかぁ」
「仕方ありません。怒り狂ってたらいつの間にか破壊してました。」
「おい?」
「弱いのが悪い☆」
そう言ってピースする時雨の頭を軽くチョップした。
「まぁそんな軽くはないですよ。誰だって余裕がないと正しい判断できませんからね」
悲しそうに笑った。
光は巫女が時雨を選んだ理由が分かった気がした。
「私は霊になる直前からシバの前に姿を現してません。」
「えっ霊同士って見えないの?」
「上級の霊が人に姿を現そうとしない限り見えないように。より強い種族は姿を現さないことができます。その代わり干渉ができませんけどね」
「なんで見せないんだ?」
そう問う光に、時雨は愛しいものを見るように目を細めた。
「大切なんです。彼が家族同然のように。だから使命に思ってほしくない。裏切りって言われてもそれでもいいから私のことなんか忘れてのびのび生きて幸せになってほしい」
それを聞いた光もつられて口角が上がった。
「ところでさ」
「なんでしょう?」
「時雨はなんでそんなに昔のしゃべり方が残ってないの?」
「人間の作るアニメとは実に素晴らしくてですね」
「おっおう」
「やっぱ私って見た目的にクールでイケメンな王子が似合うと思うんですよ。それもオラオラしてない方の白馬の王子様みたいな」
そういって時雨は決めポーズを決めた。
(ごめん巫女さん。やっぱわかってあげられないかも)




