束の間の幸せの中に①
「ばぁちゃん、じぃちゃんただいまぁ!」
光が玄関を開けて大声で叫ぶ。
「おかえりぃ」祖母がキッチンから顔を出す。
「もどったのじゃ!」子供の姿のシバもそういう。
階段が下りてくる音が聞こえた。
「光にシバか!おかえり!」祖父の声が聞こえた。
シバがちらっと光の方を向く。
光はその目線に笑顔で答えた。
「ただいま!お土産持ってきたよ!」
(今はもう大丈夫)
家族の団欒がやっと戻ってきた気がした。
机の上にお茶が出されてお土産のチョコレートが配られた。
「うまいぞ!!!」そういって目を輝かせるシバ。
「そうかいそうかい。ばぁちゃんのもお食べ」そう言って祖母はチョコを渡した。
バクバク食べるシバは途中でせき込んだ。
「あらあら大変お茶をお飲み」そう言って祖父はお茶をシバに渡した。
「あっまってばぁちゃんそれ」光の静止もむなしくシバはそれを飲んだ。
「あっついのじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」シバが吹き出した。
「あっごめんなさい。ばぁちゃんってば急いでて気づかなかったわ」そういって急いで立ち上った。
「俺行くよ」気が動転している祖母を止めて光が冷蔵庫へ行った。
「光ちゃんちょっとそこは」
「えっ」祖母の声に振り返ったが冷蔵庫を開けてしまった。
ばさっばさっ
光の上に食材が落ちてきた。
「ごめんなさい。ばぁちゃんってば光が帰ってくるのがうれしくてつい。」
シバも光も帰ってきてそうそう災難続きだ。
シバは霊なだけあって基本的な怪我ややけどはすぐに治った。
そして、治ったことをいいことにニヤニヤしながら食材の下敷きの光を見下ろしていた。
「お主、運がないのぉ」
そう言っている。シバの頭に鯖缶が落ちてきた。
ガツッ
シバは頭を抱えてうずくまった。
「光もシバも災難だなぁ」
そういってニヤニヤ近づいてきた祖父は台所の角に小指をぶつけて倒れこんだ。
不幸は連鎖をするようだ。
「あらあら、家が騒がしくなったわね」
シバが無事そうで安心して祖母はお茶をすすった。
祖母以外は冷蔵庫の前で倒れこんでいた。
どうやら不幸は連鎖するらしい。
「こんなものいらぬ!!!」
シバがフォークを投げた。
光の方へ飛んでいった。
「ばかっ!あぶねぇ」
光は急いでよけた。
「シバちゃん?食事のマナーをしっかりしないといい大人になれないわよ」
祖母が圧をかける。シバはおびえて急いでフォークを持った。
「はい。じゃあパスタを食べてみましょうねぇ」
そう言ってパスタを不格好に巻いてシバは食べている。
「そうそうお上手ねぇ」
祖母が孫を見ている感じは変わらないだ口の周りにトマトソースをつけてシバが光をさして言う。
「ばぁ様、見てみるがよい。光もフォークへたくそじゃ」
「あらあら。光、口にトマトソースついてるわよ」
そういって祖母はティッシュを渡した。
それを一つとって。シバの口を拭く。
「ほらお前もこんなについてる」
そういってシバに見せた。
「えっ、ちっ血じゃ!」
そう言って恥ずかしそうにしていた。
「えっシバちゃん怪我したの?」
祖母が心配そうにシバの顔に手を添えて言った。
「ちっ違うのじゃ。ソースじゃ」
「へぇソースねぇ」
ニヤニヤする光にぐぬぬとシバは睨んだ。
「覚えとくのじゃ」
「喧嘩はだめよ」
そういってなだめられてうんともすんとも言えなかった。
夜になると二人は光の部屋で同じ布団でダラダラしていた。
「あー快適じゃのぉ」
「ほんとだなぁ。昨日までのが嘘みたいだ」
「その通りじゃなぁ。東京もわるくなかったのぉ」
「それはそうだなぁ。ベッドは一人一つだったしなぁ」
「そうじゃのぉ。いやなら出てけばええぞ。」
「なんで俺が出てくんだよ」
「わしが邪魔だというのか」
「そうだ犬の姿になってよ」
「ん?わかったのじゃ」
そう言ってシバは子供の姿から犬の姿になった。
「もうちょい大きくなって」
「なんじゃそれ」
そう言いながら言うことを聞いた」
「あと3センチ」
「お主なんでそんな細かいの無理に決まっておるじゃろ!」
「まぁおっけ!上出来だ」
そう言って光はシバに抱きついた。
「うおーふかふか!」
「なんじゃ!!!」
シバはバタバタする。
「あったかいなぁ」
その言葉に少しだけ落ち着くシバ。
「どうかしたのか?」
「ん?べつに」
少し光は勿体ぶるように間を開け
「今日からお前は抱き枕だ!」
「わしは高貴な存在じゃぞ!!!!」
またシバが暴れだした。
「シバ!」
「なんじゃ?」
「待て!」
「ん?」
そう言って言うことに従った。光の顔を見るとにやけ顔をしていた。
はっと我に返ったシバは。
「わしは犬だが犬では!!!」
そう言ってとびかかった。
「ほらシバ、アイスだ」シバがずっとバタバタしてるので子供の姿に戻してアイスを渡した。
その幸せそうな顔は一週間前に実家に戻った時と同じだった。
だけど今は実家での居づらさがあるわけじゃない。
きっと5年前みたいな平和な日々が戻った。
これからもずっとこれが続いてほしい。そう願うのは光だけじゃなかった。




