第7話
ユン婆ちゃん、何時ものようにご機嫌にスカイに声をかける。
「おや、今日はちゃんとご飯食べる気になったんだねぇ。えらいえらい。昨日は遅く帰って来たようだけど、えらいねぇ。何時だったんだい。あたしは気が付かなかったよ」
「僕も何時か気が付かなかったよ」
爺さん、
「スカイや、そういうあほらしい事は家の中だけにしておけよ。外で言うんじゃないぞ。ふん、隣の爺にロードの孫は、少し足りないと噂を流されておるんだ。お前、隣の爺の前で、今みたいなバカらしい事言っていないか。特に奴の耳に入れるんじゃないぞ。冗談の分からん奴だからな」
「はいはい」
噂をすれば、隣の爺さんが朝っぱらからやって来た。
「おい、ロードの少し足りない孫。今日は珍しく早起きじゃないか。儂が来ない内にずらかろうとしても無駄だからな。もう警察に連絡しておいたからな。器物破損剤だ。弁償はきっちりしてもらう」
「何だと、スカイがきさまの家のどのボロを崩したんだ。スカイはきさまの小汚い家なんぞに行くものか。言いがかりをつけるとはいい度胸じゃないか」
スカイの爺さんは勢いよく啖呵を切っているが、スカイ自信としては、昨晩の事、隣の爺さんの顔を見て、じわじわ思い出していた。『マジ、不味い事になりそうだ』
スカイが思い出した昨晩の事、それは、多分あいつは瞬間移動ってのをやってのけたらしいが、さほど巧みとは言えない技で、隣の爺さん宅に間違えて到着してしまった。気を失っていたスカイだったが、天敵、隣の爺さんの怒鳴る声で気が付いた。
「ど、どろぼうーっ」
スカイはとなりの爺さんには即で突っ込むことができる。習慣と言うか、訓練と言うか、やればできるという自信はこの特技で保っている。
「お前んちに盗む価値あるものなんかないやー。寝ぼけるな。ちょっと間違えて到着しただけだ。おい、蚤がくっつかない内にずらからないとー」
間違えた所に到着してしまって焦っていた、愛想だけは良い奴は、
「そりゃ大変だ」
と言って慌てて窓を開けずに飛び出て、爺さんの部屋の窓は窓枠ごと外して壊した。とは言え、スカイの部屋に入る時はちゃんと窓を開けて入って、その後締めておいた。きっとしでかした事を自覚している。スカイとしては別に良いけど、きっと朝、あの爺さんは怒鳴り込んでくるだろう。そう思ってへらへらするうちに、連れ帰ってくれた奴は居なくなっていた。長居は無用と思ったのだろうが、結局スカイはあいつがどこの誰なのか知らないままである。
昨晩の事は思い出したのだが、スカイは状況を考え、しらを切り通すことにした。あいつがどこの誰だか分からないし、スカイの家が弁償する必要は無いはずだし。
そう思っていると、近所の駐在所の警察の方がやって来た。スカイとしては誤魔化せるものなら誤魔化したい。
「隣の爺さん、最近会っていなかったけど、認知症なの?」
ユン婆ちゃんに、小声で尋ねる。
「さあねぇ、あたしも最近会わなかったからね、ひょっとしたら、入院していたのかねぇ」
婆ちゃんの臨機応変の答え。爺ちゃんも調子を合わせ、
「おや、トークさん、もう一度入院した方が良さそうですね。あ、警察の方。ご苦労様です。このトークさん、少し、認知症の気が有りまして、最近お見掛けしていなかったのですが、てっきり入院なさったと思っておりましたが、今朝は私どもの家に来て、奇妙な事を言い出され、困っておりました」
「何を、そろって下手な言い訳しおって。警察の方、儂の家の窓を昨晩崩されました。あの若い奴がです。逮捕してください」
「僕はー、隣に行ってはいませんから」
警察の方、
「トークさん、電話の件、こちらに伺う前に周辺を調べました。結果、道路を隔てた向かいの防犯カメラには、丁度お宅の家がほぼ全体と周辺も少し写っていますが、トークさん宅に人の出入りはありませんでしたよ」
「そんなバカな」
「さあさ、トークさん、今日の所は家に戻りましょうか」
警察の方に連れて行かれたトークさんを見送り、『やれやれ、なんとかピンチを免れたな』
事なきを得て、スカイやれやれとばかりに朝ごはんを食べることにした。爺さんはスカイの様子を見ていて、残念ながら今回はトークの爺の言った事は事実だと感じていた。
「スカイ、昨日はどうしてあの爺の家に行ったんだ」
さすが爺さん、察したのかと思ったスカイ、昨日の奴ら、敵らしいのと、味方らしいの。どちらかがやって来る可能性を考えて、実際の事は話しておくべきと思った。
「昨日は、ぶったまげるような事があったんだ」
一部始終を離すと、爺さん、何時に無く難しい顔で、
「スカイは能力が表れたようだな。ユン婆さんの娘のお前のママはな、儂の子じゃなくて、婆さんの元婚約者だったソール・ソルスロの娘なんだよ。そのソールの親がレン・ソルスロだが、物凄い能力持ちで、ニールの地下の魔王の国を滅ぼしている。嘘じゃない正真正銘の本当の話だ。儂の爺さんの友人の中にニールのグルード家と言ってこれも強力な磁気能力持ちの家系の次男が居てな。昔の話だが、魔物が幅を利かせておった時代に、そのグルード家の長男が当時の魔物の王を滅ぼしている。次男も兄に協力してきわどい状況になる事が多かった。儂の爺さんはその次男によく協力していた。親友だった。そして、このユン婆ちゃんが、さっきも言ったソール・ソルスロと付き合っていたんだが、そのソールと言う男、言っちゃあ悪いが、酔狂な奴でな。少し小金を貯めた後、世界一周旅行をすると言い出し、このユン婆について来いと誘うが、その時はユンは妊娠していて、その辺に行くのと違って、キャンプ道具なんか用意し出す奴で、ユン婆は子供の話はせずに別れたんだ。儂は爺さん同士が親友の所為で、その親友の子であるユーリーンさんと、ソルスロ家のニキが婿養子になってできた子供の中で、次男のレン・ソルスロの友人でもある。ロード家はグルード家やソルスロ家とは切っても切れない、絆があってな。ソールの子を身籠ったまま別れたユンを放っては置けなかった。そう言う訳で、スカイはこれから大人になって行く内に、一体どんなパワーが出せるのか。周りの奴らは、興味が失せないだろうな。で、スカイとしてはどうして隣に瞬間移動したのかな」
「色々しゃべっているから、忘れたのかなと思っていたけど」
「そうはいくものか、かはは」
「ちぇっ。瞬間移動は俺は出来ないよ。変な奴につかまりそうになった時に、助けてくれた人が、瞬間移動で僕んちに行こうとして、間違えて隣に到着したんだ。もしかすると、僕狙われているのかな。ピンチの時には、助けに来てくれる人がいるみたいだよ」
「そうか、おそらく、実の父親の方の関係者だろう。もしかしたら、お前を引き取りに来るかもしれないな」
「引き取りにって?どうして」
「それは公にしていない、事情があるからだ。さっきも話した魔物の件だが、ソルスロ家やグルード家は魔物と戦う定めの家系でな。お前もロードの名になってはいるが、その家の血筋だ。どうやら魔物に気付かれたようだ。近いうちに本当の父親の血筋の誰かが、お前を引き取りに来るだろう。そのつもりで居ろ」




