第6話
少し推敲に手間取りまして、何時もの時間ではありませんでした。そこで、お知らせです。投稿日時は不定期です。よろしく、ご承知お願いします!
ここはセピア公国の南の端の田舎町。
ユン婆ちゃんに朝ごはんを用意してもらったし、スカイは食欲はなかったのだが、なんとか完食してハイスクールに行くことにした。『今日は初日でみんな親も付いて来るだろうが、スカイの親は両親とも首都で商売が忙しく来やしないし』
そうは言っても、スカイは別に親が来なくても構わないと思っている。ユン婆ちゃんが居るから、大丈夫だ。
ただ、最近スカイは不調だ。婆ちゃんに言えば心配するから黙っていた。暑くてたまらない日があって、病気かなと思うが、幼馴染のテックは、『具合が悪いと寒気がした』と話していたし、何だかスカイの症状は違っている。誰に聞いても何だか違う症状なので、困る。昨夜からもである。今日は初日なのでサボる訳にはいかないのだ。
右は畑、左は小川、田舎道をてくてく歩くが、何時もより歩みが遅くなっている。『早く行かないと、最初から遅刻は不味いよな』
スカイは急ごうと思うと、思わず走り出していた。スカイは足の速さには自信があったのだが、今日の走りは早すぎる気もする、あっという間にハイスクール行きのバス停まで走った。かなりな余裕がある。『変だ』スカイは辺りの様子が何時もの景色に見えない。まるで初めてやって来た場所のように見えた。『どうしてかな』首を傾げたくなるような現象だが、原因は直ぐ知れた。『浮いてる。見る高さが違うんだ』
スカイは焦る。こんな所バスに乗った奴らには見られたくはない。田舎道なので車はめったに通らないし、スカイはこのまま学校へ走って行く事にした。(その方が目立つよー、止めた方が良いよーと、忠告する大人は居ない)
走って学校へ行ってみると、これもまた、あっという間に到着である。車が通ってはいなかったのは、幸運と言える。
ところで、この田舎のハイスクールには、ショウカが先生として勤めていた。偶然なのか必然なのか、魔法使いの長にショウカの勤務先として、この学校を薦められた前年、何の疑問もなく転任してきたが、来てみるとその訳を察した利口と言えるショウカ。
『魔法使いの長って、世界の動向とかも分かるの?』疑問を感じたが、こうなっては分かっていると思うべきであろう。
今日は例のスカイが入学してくる初日である。ショウカも何時に無く張り切ってしまい、少し早めに来ていたが、早めに来てよかったと言える。スカイが何と、走ってやって来た。
『はい、スカイ君一番でーす』と言ってやりたかったが、どうやら警戒心強めの子のようだから、やめておいた。
ショウカは、そそくさとスカイ君の担任になるように、生徒を入れ変えて置く。実の所、これが目的で早めに来たのだった。
ショウカは、スカイを観察して、予想通り磁気パワーが出だしているのが分かった。磁気パワーは個人差があって、出現する時期は個人でまちまちらしく、ソールの血を引く子が大きくなるまでは観察対象だ。魔法使いの研究で、獣人とのハーフでは磁気パワー持ちは出来そうも無いと結論付けていた件、何故かセーンさんの妻、チーラさんはご存じだった。おせっかいな周りの魔法使いに教えられていた可能性が有る。セーンさんが亡くなって実家に帰ってしまったのは、そういう事が有ったのではと、ショウカは推理していた。
『あの方も、お気の毒だったわね』と何時に無く昔の記憶をたどるショウカ。
そのうちに、他の教師たちも出勤してきたので、目立たないように職員室を出て、様子を窺う。適当な時間に出勤したように装うつもりである。
誰も来るはずもない中庭に行くと、似たような考えに至ったらしいスカイとばったり会った。吹き出したくなったが、かろうじてにっこりにとどめ
「あら、随分早いお越しの生徒さんだ事」
と言うと、
「先生も早いね」
と穿った言葉を返す奴、スカイ。
「ふふ、随分利口そうな言い方ね。あなたお名前は」
「スカイ・ロードだよ。知らないの。知っているような顔していたろ。さっき」
「益々利口なお答えねぇ。知っているけど、世間体では初対面なの」
「どうして知っているの」
「ナイショ」
「ふん、ケチ」
「うふふ、私は担任のショウカよ。そのうち訳は教えてあげる。私は職員室に行くけど、あなたもそろそろ、教室に行ったら。早めに行った方が有利なんじゃないかしら、何かにつけてね」
スカイは不思議な先生の言う事を聞いて、教室に行くことにした。行ってみると先に来ている奴が一人いた。
こっちをじろりと見るが、スカイとしては一応「おはよう」と無難に言っておく。机に名前が張ってあるので、自分の席に着くスカイ。こうなると、自己紹介の必要もなさそうである。
『早めに行くに限るな、うん』納得のスカイだ。一番に来ていたのは『シシル・コール』だった。見た感じ、普通の人間ではなさそうな気がする。今日の自分の行動からして、自分も普通ではないらしい。『親が居ないとこれだからな』訳が分からない件、今更愚痴っても仕方ないが。
スカイの通いだしたハイスクール。田舎町二つの中に、子供は少ないので、やっとの事でできたハイスクールであり、各学年2クラスずつそれも一クラスに30人も居やしない。
そして、町民は年寄りの世帯が多く、スカイの家のように親は首都にある会社や店に出稼ぎに行っているという環境の子が多い。年寄りと子供の町と言える。
従って年寄りは気付いているかどうか知らないが、子供は放任されて、やんちゃな子は夜も更けていようが遊び歩いている。
スカイもその一人であり、幼馴染とゲームセンターや、大人が出向く酒が出る店にも行っている。商売人は客の年齢を聞く事は無い。
ハイスクールに通いだして、スカイたちはすっかり大人の気分である。高学年になると車で通学する子が多い。2年生にならなければ免許は取れないはずだが、今日も校門付近に車のパンフレットを配っている人が居て、スカイにもくれた。
夜も更けて来たが、スカイとテックは居酒屋のテーブルで中古の車のパンフレットを眺めていた。二人はビール片手に、パンフレットを見て、車の吟味である。買えやしないのに。
テックは聞く。
「スカイは免許持っているのか」
「ある訳無い。テックと同じ年だろ」
「見ても買えないだろ」
「買うつもりで見てんじゃないよ。今日の試し乗り」
「盗むのか、捕まるぞ」
「借りるんだよ、朝には返すし」
「返すまでにつかまるぞ」
「パトカーに追いつかれるようなのには、乗らない。見ろよテック、この田舎町に、このスポーツカー置いているの、買う奴いるかな」
「桁が違うじゃないか、だけどこの値段でも格安だな。何か不味い所あるんだろうな」
「何処が不味いのか、乗ってみないと分からないよな。行こうかテック」
スカイが立ち上がったので、テック思わず聞く、
「お前マジで試乗する気か」
「嫌なら来なくて良い」
テックは少し躊躇した。彼の家には両親が居る。そろそろ帰らないと「ハイスクール二日目に遅刻する気か」と、叱られて寝る時間が無くなるのだ。
「今日は親父が早く帰ってくる日なんだ」
そう言ってスカイを残してテックは帰る。
「ふうん、今日は親父が早いのか」
スカイは一人呟いて、中古車の店に行く。
気分はむしゃくしゃして来たし。そう言う訳で店に忍び込んで、鍵の束からスポーツカーのを取り出し、エンジンをかけて見た。途端に照明が付き、カメラも回りだして、
慌ててスカイは店のウインドウを割りながら外に出る。
遠くでパトカーのサイレンが聞こえ、スカイは音楽配信からの大音量で気分を盛りあげて、外に飛び出した。パトカーを金魚の〇〇みたいに従えて、スカイは田舎道はやめて、舗装された高速道路に出た。『皆暇なんだろなー』
スカイは首都高に入って、母親の経営する高速道路沿いの24時間営業のお食事処に勢いをつけて入って停めた。
店に入ってみると、生憎ママは居ない。
「夜中は寝に帰ってやがるな。ふん」
居なくても店員さんの誰かが連絡するだろうな。と思って、ビールと唐揚げを注文して、一杯飲んでおく、アルコールは抜けていると思うが、用心に越した事は無い。
そこへどやどやとパトカーの人達がやって来て、
「今ここに来た奴はいないか」
誰とはなしに質問する。すると、居合わせた高級車のおっさんや、お仕事休憩のトラックの人が、ちらちらとスカイを見る。
パトカー組さんは、ハイスクールに入っているのか、まだ来年の事の筈の気もするのが一人、ビールを飲みながら寛いでいるのを見て、
「君、連れは何処にいる」
「僕、一人でーす」
「君、何年生?」
「ハイスクール一年です」
「パパやママは?」
「ここの店に居るはずだったんですけど、帰ったみたいで」
すると店員さんの一人が、叫ぶ。
「今、店長呼びましたから。その子の親です」
「どうもお手数おかけしました」
律儀なサツの人以外に、今日はお偉いさんっぽい人もいた。
「君、今日で三回目だろ。そういう子は、今日は別の場所に護送だよ」
その偉そうなやつは、そう言ってスカイを連れて行こうとする。
「でもママが来るって」
偉そうな奴は、スカイの腕を取り、スカイはぎよっとした。腕を掴まれただけの筈だが、身動きできず。このままどこかに連れて行かれそうな気がする。
『こいつ、人間じゃない』
スカイは人間じゃないものに遭遇したのは初めてだったが、直感で『最初で最後になりそう』と思えた。
店の外に出て、パトカーの方へ連れて行かれるうちに、スカイは辺りの様子が変わったと分かった。横の人ではない奴も勘付いてスカイを離す。『シメタ』とばかりに、高速で走ろうとすると数歩で誰かにつかまった。高速走行の筈だったのだが、どうやら捕まえられて、自分の能力は大したものではなかったと察したスカイだ。相手を見ると、自分とほぼ同年代っぽい奴、スカイにヘラリと笑いかけた。そして危なくない所まで移動させられる。
と言うのも首都高サービスエリアは魔物同士のバトル現場と化していた。ものすごい咆哮と、振動。何かが飛び散る。スカイはおそらく魔物の血液の様なものと思う。
しかし車は横を高速で走り去り、店の中の人間は見物に出ては来ない。出て来ては危ないだろうが、気付いていないというのが正解な気がする。
その間わずか数分。勝負は素早くついたようだ。
「ふん、ばーか」
スカイを捕まえていた奴は、そう言った後、スカイを連れて移動しているようだ。だけどそれは初めての感覚で、スカイはめまいの様な感覚がして、気を失った。
スカイは目覚めた。そこは自分の部屋で、昨晩の経験はまさか夢ではなかったはず。
スカイは目だけできょろきょろ辺りを見回し、自分の部屋で間違いは無いと言えるし、自分のベッドだし、着ているものも、自分のパジャマで間違いはない。床に昨日来ていた服が散らばっており、自分で着替えて眠ったようである。記憶には無いが。
階下からユン婆ちゃんの大声が聞こえた。
「スカイ、今日は朝ごはん食べなきゃ、毎日食べずに行ったら、大きくならないよきっと」
爺さんの声も聞こえた。
「婆さん、スカイの気にしているとこ、鋭く突っ込むんだな。今は中位だが、直、前から数えた方が早くなるよな」
「ちぇっ」
スカイは、昨日の夜何が起こったのか、調べなければならないと思い、早起きして様子を見ることにした。




