第5話
そろそろ、新しいエピソードの本題に入りたいと考え、前回小説の最後の場面をかぶりますが載せておきます。この小説が始まる前の、いきさつも、初めに、投稿しておきました。前の小説に載せると、題名にそぐわないと思い、次のこの小説の前の方に載せました。
キャシー・グルード、ニールの館の女執事として勤め上げて40数年、人間なら主人側からは引退を薦められえる頃合いだが、正体は魔物の為まだまだ務めるつもりだし、代わりの候補も居ないと言った所。かくしゃくとした足取りで、このニールの館、持ち主は以前は北ニールの魔人グルード家の所有だったが、現在は魔の国出身だったらしいベルメリ・ノスが女主人である。
「ベルメリ様、砂漠の国のレイン・ソルスロ様は今日もおいでにはならないそうですよ。議長の役目お忘れでは?そしてセピアのシンリー・カーピン様は持病の悪化でご欠席、さっさと次の代をお決めにならないと、こうも欠席が頻繁になるとなれば、どうかと思いません事。そして獣人国からは、ニーユ・ガン様が既にお越しでしたが、他の方のお越しが無くて、帰り支度などなさっておいでです」
「まぁ、キャシー。引き留めておいていただかないと、次にお見えの方に何と言われる事やら。所で、南のお国のココモ・オーカー様はいかがなさったのかしら」
「オーカー様なら、新しいコア候補のお方をお連れしようとご奮闘のご様子」
「あら、コアの方が見つかりましたか、でも奮闘とは?何か不都合がおありなのかしら」
「地下の虫がお嫌いらしくて」
「まぁ、それはあの古の女王様似のユーリーン様と同じ気性の方ではないでしょうか。気性はふさわしいとは言え、それではコアの役目はお出来にはならないでしょうに。ココモ様はどういうおつもりなのでしょう」
キャシーが立ち去ったので、ベルメリはソファに深く座り込みため息をつく。
「ココモ様って、最近何をお考えなのでしょうか」
噂をすれば影っぽく、ココモ・オーカーが表れた。そして古の女王そっくりな男を捕獲して来ている。言い換えるとセーンっぽい奴とも言える。
「オーカー様、その子は新しいコア候補の方?」
「ゼイゼイ、見ての通りだ。ゼイゼイ」
「どちらにその子はいらして、あなたに見つけられて来られましたの」
「セピアの元ベルンさんの家だよ。コソ泥を装って、俺の引き出しを探っていた。未遂に終わったらお咎めなし、とでも言いたそうな面だったな」
「確かに、そんな風潮の時代は有りましたわね。とは言え、その方は随分お若く見えますけど、ご両親はどなたですの」
「さあな、セピアでは「コア発見」と、カーピンの手の者が公爵に報告したんだが、直ぐに行方不明だと奴が俺に言ってきて、俺なら人探しができると想っているのが、不思議な風潮だな。何か俺、見つけた事あるかな」
「セーン様と随分懇意になさっていたそうじゃないですか。だから気配を追ってくださったら、きっと見つけることが出来るとお思いだったのでしょう。現に見つけて下さったんでしょう」
「偶然だよ。ベルンさんちの近くを飛んでいて、急に懐かしくなって家に寄ったら、居たんだ」
「それがココモさんの能力でしょうに、御謙遜なさって。それにしても、本当にセーン様の気配に似ていらっしゃるわ。ご家族の方にこのお年頃の方で当てはまる方はー?」
「居ないぞ。面倒だから回答してやる。ヤーモが最近生んだのがこいつだ」
「キャハー、でもこの子人間の男の子っぽいですわ」
「最近、ヤーモは人間っぽいのをカスタマイズし出した。獣人国に行ってみればいいぞ、ベルメリ。こういうやつがゴロゴロしている。魔力無しのばかりだったが。とうとう、磁気パワーが沸く奴が出来たんだ」
「ど、どうやったの」
「本人にも分からないらしいぞ、だがセーンそっくりだろ。しかも同じ磁気能力付きだ。おまけに地中の虫は大嫌いと来た。公爵の手の者に館に連れて来られたから、ショウカが説得していたが逃げられた、虫の所為でな」
するとむっつり二人の話を聞いていた彼が急に叫ぶ、
「絶対に地下なんか行かないからなっ。ニョロつく虫は大嫌いなんだから」
ベルメリはにっこりと、
「そうでしょうとも、前のコア、リューンお爺様が、地下に潜って暮らしていたからって、あなたがそんな事しなくても良いのですよ。役目さえ担ってくれればいいの」
「だから、あの婆さんにも言ったけど、出来無いって、分からないかなぁ。無理だって。無理言うなよ、お前ら常識ってもの持っていないな。ヤーモの奴、肝心な時に我関せずって面だ。くそう」
「まぁまぁ、落ち着いてちょうだい。じゃ、あなた、この館でしばらく暮らしていてね。まだ皆さん、磁力は枯渇している様子も無い事ですし。あなたにぴったりの指導者を紹介するわ、じきに出来るようになりますって、そうでなけりゃ、ヤーモさんがあなたをカスタマイズした意味が分かりませんわ。じゃ、ココモさんご指導お願いしますわ」
「はあっ」
ココモ、自分の役は終わったと寛いでいた。油断は禁物だ。
「俺はそんな指導とか出来ないぞ。第一やった事も無い事を、どうやって教えられる?」
ココモ、ベルメリの圧を感じた。
「そういう、ベルメリさんの方が適任だろ」
かろうじて、言い返す知恵が沸いたココモ。
「あたくしには磁気能力はございませんの」
「俺にもございませんのに」
「じゃあ、キャシーさんにお願いしようかしら」
「そうしてくれ」
ココモはそう言って逃げるように瞬間移動した。
ベルメリは横に鎮座するアンティックなベルを、しきりに鳴らす。セーンっぽいのは、ぽかんと見ている。そしてしばらくすると、歳の分からない不思議な女がやって来た。セーンっぽいのは自分の仲間と分かる。
「キャシーさん、呼んだら直ぐに来ていただかないと」
「何の御用ですの、ベルメリちゃん。あたくしは執事、あなたはこの館の主人。でしょ。と言う事は指導者って言うのは、どちらがするものかしら」
「執事っ」
「主人っ」
「あたしの方が早かったわ。キャシーの負けーっ」
「かかか、お前ら意外と面白い奴らー」
キャシーと名を呼ばれる女執事、じろりとへらへら笑う奴を睨み、
「セーンっぽいのは、夜も遅いし、空いた部屋はいくらでもあるし、好きな部屋に泊まったって良いのよ」
「そうなんだー、じゃ、俺、ここがどこか知らないし、朝考えようかな。ホントにどの部屋でも良いんだな」
そう言ってふらりと部屋を出た。
キャシーは、ソファにどさりと座り込む、
「どうするのよ、ベルメリちゃん」
「あたしに訊く?以前から、あんた自分で利口って言っていたでしょ」
「ふん、あれから色々あったよねー、ほんと、どうするの今から」
困惑気味の、お婆さんと呼んでも構わなさそうな老婦人二人、過去を顧みて知恵が湧くことを願う。と言うのも。リューン様がとうとう老衰でなくなってしまって、既に半月以上経過している。次のコア候補は見つかっては居ない。
翌日、ココモさんが連れて来た磁気パワーを持つらしいヤーモさんの産んだ子はまだ、眠っているのだろうか。2階から降りては来ない。
キャシーと二人、いつものように朝食の後、今日すべきこと等話合う。ベルメリは、
「それにしても、魔物の一人が、磁気パワーを持っているなんてこと、信じられないわね。魔物には魔力っていう物があって、磁気パワーなんて必要ないでしょう」
「出来すぎていますよね。ヤーモが卵孵してみると言っていたそうだけど、本当に生んでしまったわね」
ベルメリも思った事を言っておく。
「磁気パワーと言っても使い魔でしょう、あたしは本命が出てくるまでの繋と思うの」
キャシーは意味深に聞く。
「聞くけど、本命は誰の事」
「さっぱり」
そこが、肝心な事である
キャシーは、
「もう一つ聞くけど、リューンさんの息子さん、あたしは会った事ないけれど、ジュールさんと、ユーリーンさん達の娘さんのクーラさんは何処へ行ってしまったんでしょうね。みんな話題にしていませんよね」
「そうね、私が何時か、ユーリーン様から聞いた事があって、あのお二人は色々不幸な出来事とか仕打ちとか有って言わば人嫌い的な、気鬱の症状が出ていて、2人して誰も知らない所に行くんだと言って立ち去ったそうよ。お互いの親に「探さないでください」と言って行方不明になったって言う事らしいわ。二人の希望通りにしているそうなの。だからコアにはならないと思うの」
「磁気パワーは無いの?」
「ジュールさんはもしかしたら少しはあったかもしれないけれど、何せ、行方不明者よ。リューンさんは、探さないでいるそうだったわ。だから有り得ないと思う。きっと持ってないって分かっているのよ」
「んー少し、怪しい感じ」
「何それ、どういう意味」
「リューンさんが、ジュールさんの希望通り、探さなかったとしても、ジュールさんはこちらの様子が分からないとは、限らないんじゃないですか」
「お葬式にも来なかったのに?分かってたら、普通来ると思うけど。もしかしたらすでにこの世には居ないのかも」
「んー、じゃ別の可能性はっと」
「まだ有りそうなの」
「そうね、もしヤーモさんが本命が使えるまでの、繋ぎとしてあの子を産んだんなら、あてがあると思うの。ヤーモさんが知りうる立場だったって事よね」
「そうね」
「使い魔が知りうる立場って言うのは、御主人さまの事よ、それ以外は無いと思う」
「えーと、隠し子とかの話にはならないよね」
「ならない、ならない。レン様の噂だけであの騒動よ。隠し子じゃないわね。つまり、隠していない人よ」
「でも誰?」
「ベルメリちゃんだって、話は聞いていたはず、あたしが可能性として考えついた事。皆が可能性を考えたくなる件よ。希望は持ちたいものね」
「えー、何々、教えてよ」
「叫んだりして、口に出さないでよ。今からコンタクトするけど」
「あんたって、あたしを最近バカにしてないかしら?」
「用心こそ、今必要な事なの。今からコンタクトするけど、本当のシークレットだからね」
「うん、うん」
『セーンさんの二番目のお兄さんであるソールさんの元婚約者。執事さんの弟の娘、世界一周旅行行きの前に別れたあの方。もしや妊娠の可能性は?十分あるでしょ。使い魔が知っている可能性は?使い魔達は、執事さんとはかなり懇意にしていたの。知る機会は十分有る。その人の名前は、ベルメリは聞いているはず。思い出してね』
『ふむふむ。なるほど、使い魔なら、ヤーモさんなら。その動向は知っているでしょうね。執事さんの弟の娘なら』
しーん
『ウギャーッ』
『な、なに。コンタクトのままでっ』
『だだ、誰も知らないのっ、こんな最重要情報を』
『だから、ヤーモさんはきっと知っていて、つなぎのコアを必死で産んで育てていたの。つまり、何時か子孫の末裔に、磁気パワーを持った子が生まれると信じていたはず。もしかすると決起した魔物以外にも、仲間はまだいるんじゃないの、探す余裕ないけど。そいつらに知られたら、せっかくのコアが狙われるでしょ』
『そうよね、今まで誰も話題にしなかったのは、きっとコアを守るためよね。使い魔さんは知っていたんだ。血筋が途絶えていなかったことを、知っていたんだ。きっと壁の上から見聞きしていたのね。執事さんの身内の情報を。ところでキャシーは知らなかったの、この事』
『ふん、あたしとヤーモは疎遠だったのを、ベルメリちゃんは忘れていた訳?悪気が無いからなおさら始末が悪いね。その子はもう生まれている可能性はある。あたしは知らないけど。お先真っ暗的状況から、リューンさんの頑張りで、未来は明るくなりつつあるね。きっとリューンさんもわかっていたに違いないわ。希望は頑張りの糧よ』




