第39話
スカイは海岸から少し離れて見ていた。すかしもすぐ側にいる。
ベルメリさんやキャシー及び、こっちの世界に生き永らえる事の出来ていたヘキジョウさんっ子が、飛んで来る古のドラゴン達に叫んでいる。
ほぼ、「わーい」とか「おーい」とか感極まった悲鳴だが、気持ちは伝わったと思える。一応ドラゴン達は「ぎゃー」と鳴いて答えているような感じだし、意味不明だが、どちらもと言えるだろう。
砂浜に降り立った古のドラゴン達。彼らはきっとどの世界に居ても、己の正体を忘れる事は無いのだろう。
すぐに人の姿になった彼らの元へ、ベルメリさんとキャシーさんは駆けつける。
見知っているらしい、人化したひときわ大きなドラゴンだった二人との再会に、笑いながら抱き合っている。
急に華やいだベルメリさんとキャシー。
スカイ達二人は、その彼らの不思議とも言える様子を眺めていた。
「ベルメリさん達、20歳位若返っていないかな」
思わず感想を言うスカイに、すかしは、
「ベルメリさんは、苦労が顔に出ている気がしたな。まだ若いと思っていたから、納得の見え方だな。キャシーはベルメリさんに付き合って老け顔だったからね、そもそもあれが普通だし」
「俺がパラレルワールドに行った時に、レンさんが追いかけて来て、俺があっちでセーン似とヤモ似をじっと見ていた時、あいつらは別物って言ったんだよね。今はどう思うか聞きたいけど、爆睡中なんだ」
「いつもの事だろ、起こせば?」
そこへヤーモが二人の側に来た。
「レンはさっき、死んだ。奴らと戦って無理したんだろうな。向こうの世界に居たセーンとヤモが来て、レンの死に目に会った」
ヤーモに振り返ったスカイは、
「レンは本物って言ったか。奴らの事」
「昔話しながら目を閉じたからな。どう思っていた事やら」
「向こうで俺を迎えに来た時は、奴らは別物だって言ったんだ」
「そうか」
ヤーモはそれ以上何も言わなかった。すかしは、
『じたばたしたって、あの彼らに敵うはずも無し。もう、世間の流れに流されて行くしかないぞスカイ』
『だろうな。ふん』
スカイは考える。
『以前ヤーモさんが『段々生まれてくる子の魔力が高くなっている』と言っていたけれど、今のヘキジョウさんっ子はまだ子供だし、飛んで来たドラゴンの中ではまあまあな勝負になりそうなのは、あの二人の後から降り立った奴らだけれど。あの大きなドラゴンの二人は、多分この地上でも、最強だろう』と思っていた。
ところが、そんな和やかな一団を襲った悲劇は突然起こった。
何度もベルメリが名を呼んでいるので、スカイが一番認識していた、ヤッヤモ。彼ら古のドラゴンの中でもひときわ目を引く体格と美貌だ。ヤコはヤーモと兄弟なので比較的ハンサムと言えども、見慣れた顔だったが、ヤッヤッモからは、目をそらせなかったスカイだ。
そんなスカイ的に注目のヤッヤモが、突然血相を変えた。
「ベルメリちゃん、どうしてっ」
異変に驚いてスカイやすかし、ヤーモは側へ走った。そこにはヤッヤモに抱かれて力なく倒れているベルメりさんがいた。
「しっかりして、シッカリしてよう、ベルメリちゃん」
キャシーがベルメリにすがるが、直ぐにそれを認識した。キャシーの、
「死んでる」
の、一言に周りのみんなも大騒ぎになった。
「どうして、どうして」
「さっきまであんなに元気だったのに」
ヤッヤモは、こぼれ出る涙をぬぐいもせず言った。
「向こうのベルメリちゃんになったな。こっちの事を覚えていないから、置いて来たけどな。ヤコもそう思うだろ。きっとこっちに来ようとするだろうな。みんな引き払った後だから。迎えに行かないと。どうすれば良いのかな」
ヤッヤモの言っている事は奇妙な言い草だと思えたが、スカイは自分の知っている事を言っておく。
「瞬間移動、やりそこなったら行けるよ。戻るときは…レンが死んじまったからなー」
ヤモ似が言った。(最初からヤッヤモ似、ヤコ似と言うべきだった)
「俺がついて行こう、レンのやっていたことは知っている」
そう言って二人は消えた。
キャシーはベルメリさんの亡骸を抱えて辺りを見回した。スカイと目が合い、
「えーと、今からベルメリちゃんのお葬式って事で良いのよね」
「そりゃそうだろ」
スカイもまた一言、言っておく。
「ベルメリさんが当の本人かどうか、キャシーならきっと検証できるね。レンの別物説が、本当かどうかきっと知れるよ」




