第38話
崩れかけたミーラさんの実家の館、そして自ら爆発したようなすかしの親父。館内に居た使用人の人達の安否。何もかも分からずじまいで混沌とした状況だ。敵方は全滅したのか、逃げたのか、館の中には居ないと思うスカイ。辺りの様子を探って敵を探そうかと思う。
ヤーモが、
『そうだな、出来るんだったら辺りの様子を見てくれ。俺らは中に居る怪我人を救いに館に入る。気を付けろよ』
『ヤーモさん、気を付けろと言ったし』
とスカイはじわじわ移動しながら、敵がいないか探してみる。
後ろからすたすたセブンがやって来て、
『手伝おうか』と言ってくれたので、左右に少し広がった。
海に面した絶壁に、何かが横たわっていたので、2人して用心しながら何があるか見える所まで近付いてみた。人が倒れていて、服装が奇妙で、もしやと思えた。
絶壁の方に顔が向いているので、とうとう倒れている所まで移動した二人。近づいてみて、敵方の奴と確信した。
『もしも寝たふりだったら、これ以上近付くのは危ないな』『熟練者、呼ぶ?』『そだね』
二人で小声で相談していたはずと思うが、倒れていた奴は素早く起き上がりながら、銃らしきものを構えた。スカイも負けずに銃を構える。
「すかしが、こんな所に?」
セブンがおろおろしているので『パラレル、パラレル』スカイはセブンに解説した』
銃を相手に向けて、見合っていると、集中が途切れる前に後ろから足音がしたのでほっとしたスカイ。だが、銃声が聞こえセブンの悲鳴が……
スカイはがっかりだが、前に居るすかし似も狼狽している。もしかすると味方だったのか。集中の欠けたすかし似を撃ち命中したのを確認して、後ろを振り返ると、パラレルワールドに居たヤモとセーンが居た。『どういう事』と一瞬思ったが、攻めてきた奴らに混じっていただけの事と思い直すが、セブンは手を怪我していた。おそらく撃ちそこなった後、撃ち返されてのケガと思える。スカイは一瞬ぽかんとしていたが、違和感は、その彼らが、スカイ達を殺す時間は十分あったのだが、攻撃してこない。スカイはまた、『どういう事?』と思う。
セーン似が、
『お前はソールの孫だな。良く似ていると思わないか、ヤモ』
『可愛いね、セーンも孫を抱きたかっただろ、この世界で』
『無理な事は考えない事だ。ヤモも、皆なんとか暮らしているし、もう悔やむ必要は無いだろ』
『それはどうかな。お前のパワーを跳ね返せていたらと思うよ、当分はね』
『しつこい奴。お前の愚痴は聞き飽きたんだ。それにしてもヤーモの産んだ七つ子には驚いたな』
セブンは、
「いっぺんに卵七つじゃありませんから、毎年一個づつですから。で、僕は末っ子で、磁気パワーが出せるので打ち止めでした」
手は痛そうだが、訂正はしておく。
『磁気パワーがねぇ、で、結界の中の先祖が同じ奴に吸わしてやったんだろ』
ヤモ似は、何でもこっちの事情を知っているようだ。
「結界を補強しているつもりでした」
セブン落ち度とは思っていない様だ。スカイとしても、『がんばれセブン、君に落ち度はない』と応援しておく。
『仲良しなんだね』
にっこりスカイを見る、パラレルワールドのセーンも優しい風情。
『だが、まてよ。パラレルワールドの奴は全く別物ってレンさんが言っていたけど』スカイは思い出した。すると、
『俺とこのヤモは、何故かこっちの記憶を持っているんだよ。記憶を持って生まれたんだ。僕は向こうで生きている間も、何とかこっちに戻りたくてね。チャンスを窺っているとほら、今日がチャンスだったからやって来たのさ』
「でも、現在は、俺らって、あんたらの仲間と戦争中なんですけど」
スカイは、微妙に話が読めずに、多分一番肝心なズレを言ってみた。
『あいつらは、僕らの世界の中でも面倒な奴らなんだ。向こう側にも、こっちの世界の警察のような、組織があってね。その中に交渉と裁きの部署があってね。その組織の人が、僕らと一緒にさっき来たって言う所さ。各国の戦争を何とか止めたく、きっとみんなが納得できる条約か何かをまとめてくれるよ』
セーン似は機嫌よく説明していたが、ふと、崖の上で倒れているすかし似を見て、懸念を言い出した。
『おや、スカイが撃ったそいつな、確かこっちの奴で砂漠にすむ蛇に変化する魔物の若い方じゃないのか』
「げっ」
スカイはギョッとする。そうだった、うっかり勘違いしていたが、スカイの知っているすかしの方が、パラレルワールドからやって来た王子ってことだったはず。
「あわわ、どういう事?」
セーン似は説明した。
『僕はその担当者じゃないから、断言はしないけれど、そいつは砂漠に昔から住んでいた、魔物で蛇になれるって奴の子供で、パラレルワールドから来た奴が、この世界に住む気で国の基盤を作っていた所に、蛇になれる魔物の一族の王がやって来て、自分たちの国に住まわせるわけにはいかないとか言って、追い出すつもりだったから、そいつの子供を攫って人質にしていたそうだ。ちゃんと育っていたから、パラレルワールドの環境も、移り住む予定の世界の環境も似たようなものだと信じ込んだんだな。食い物は合わないのもあったから、作物栽培を工夫したりしたが、病人が出て困っていると、隣国の磁気パワー持ちに癒されて、治ったからまだ住み続けられると思った。けれど、都合の悪い出来事が起こって来た。隣国の磁気パワー治療のお断り的抵抗。意外にも高度文化の拒否、そして合わない食い物。磁気パワーが足りないので、病気の人は故郷に戻って治療を受けたが、元気に回復するまでには至らなかった。素人でもパラレルワールドに住み続けることは不可能と分かるのに、指導者の中に大型移動車両の製作会社を持つものが居て、取りやめになったら莫大な赤字だった』
「ふうん、つまり困るのは一部の人だけだろうな。パラレルワールドの方の都合ってのも」
『世界の中では一部でも、移住するつもりの人の全体の関係者で、元の世界に戻ったとしても、元の世界で暮らせないほどの資産の無さ、借金の手土産とでも言いましょうか』
ヤモ似も呟くように言った。
スカイはふと疑問を感じた。
「あのー、今日爆発で死んでしまった蛇のパパはどの世界のパパでしょうかね」
『パラレルワールドのパパだね。ここの砂漠の王はすかし君が、攫われたころに殺されているよ。この世界の本当の王子はここに戻っても、誰も見知った仲間はいない状態になっていたようだ』
「つまり俺は人殺しなのか」
セブンは、
「向こうが先に銃を向けたんだからね。誰も居なくてヤケだったかもしれないけど」
「後味悪い」
がっくりしているスカイだったが、セーン似の通信機器に何処からか通信が入ったようだ。
『はい、そうでしたか。まだ飛び方を覚えているんですか』
セーンには通信を切ると、
『スカイ、元気の無さそうだった、元お嬢さんたちに知らせてくれるかな。このパラレルワールド関係で亡くなった子は皆、こっちで生きていた時のことを覚えて生まれてきていて、パラレルワールドを出て、この世界で暮らすことを希望していたんだ。今、セピアに集まって来ているそうだ。瞬間移動を忘れた子も居るから、古のドラゴンになって飛んで帰ってくるつもりだそうだよ』
セーン似に言われても、ぽかんと聞いて居たスカイ。セブンに言われた。
「ベルメリさんや、キャシーさんに、ヤッヤモさんやヤコさんが返ってくるって事言って来いっていうんだろ」
「ええっー」
走って行くスカイを見送りながら、セブンはセーン似に、
「ニキ爺さんの館に居たけどいつの間にか殺された奴とか、スカイのママやらは?」
『生まれ代わっていて、覚えて居たら来ているはず』
「へー」
セブンはスカイの喜ぶ顔を思い描きにっこりした。
スカイは走って館の方へ行ってみると、先ほど、攻めて来たパラレルワールドの住人を追い散らしていた、元気なベルメリさんや、キャシーさんが、疲れ果てて庭に転がっている所に出くわした。ヤーモさんもいるし、レンじいさんは既に一人熟睡中だ。すかしはスカイが戻って来て、ほっとしているようだ。
「皆、大ニュースだよ。僕がパラレルワールドに行った時に見た、セーン似とヤモ似が、来ているよ。そして、パラレルワールドの奴らが、こっちに住もうとした件で死んだら、あっちの世界に生まれ変わった人は、こっちに生きていた頃の事を覚えていてさー。うん。セーンとヤモ本人だって。それで今言ったように、ヤッヤモさんやヤコさんも向こうに生まれていて、こっちに、セピアに来ていて、ドラゴンになって飛んで帰ってくるってさ。ホントだってば、セーンさんが言うんだってば」
「きゃー」、
ベルメリさんとキャシーさん、久しぶりに嬌声を上げる。
スカイは、元お嬢さん二人とセピアの方向の海岸に走って行き、いつ飛んで来るか知らなかったが、皆で待つことにする。騒ぎを聞きつけた本っ子ちゃんも加わった。
古のドラゴンは飛ぶのも早かった。1時間もしない内にセピア方向の空にドラゴンらしき大きな姿が見えた。ひときわ大きな2匹の他にも、少し離れて思った以上に大勢飛んで来る。20匹以上は居る。
「すごーい、でかいや」
スカイは会った事は無いのだが、何だか感動した。
スカイの横に来た、本っ子ちゃんは、
「パラレルワールドに生まれ変わって、こっちの事を覚えている奴は、全員来ている。
古のドラゴンってそういう者なのかな。僕ら、ヘキジョウ一家が復活するようだな」
完
長い間、拙い小説を読んでくださり、ありがとうございました




