第37話
スカイとすかしは、セピア公国の公爵専属魔女の長ショウカさんに、呪文の唱え方のコツ?みたいな事を習いに行こうと思い付き、今真に瞬間移動を始めようとした。だが何故か出来ずに、部屋の壁にぶつかり、失敗に終わった。
二人して、どういう事?今までにやった事の無い失敗に狼狽したものの、行かねばならぬ、と再度挑戦だ。だが、また壁にぶつかる。
そこへやって来たのがレンさん、珍しく昼寝はしてなかったようだ。
「おいおい、お前ら。家の中で遊んでいる場合じゃないだろう」
からかわれて言われているとは分かっていても、スカイはむっとしたように答えた。
「遊んでないですー。ショウカさんの所に行こうと思って」
「お前らに助太刀は無理だろう。ここで攻めて来るのを大人しく待っているのが賢明だな。瞬間移動は意外と体力が居るぞ。スカイは覚えたらなんでも簡単にやろうとする傾向があるが」
「あのー俺ら、まだ呪文うまく出来て居なくて-、今更手遅れみたいだけど」
「何言ってる、日がな一日ぶつぶつ呪文をつぶやいておいて、一つも覚えられなかったのか。お前らそんなに愚か者だったのか。やれやれ。俺の代わりにベッドに横になって居ろ。ベッドがなんだか寂しげだった。きっと二度と寝てやらない事がわかっていたのかもしれないな」
「あのー敵が来たんですか」
「ああ、今カーピンちだ。ここじゃ、どうやら使えるのは前からの奴らだけだが、俺とヤーモとキャシーとベルメリだな、セブン達は枯れ木の賑わい。お前らをあてにしていたが無理と来たか。王様風蛇は見てくれだけで、一度も戦争の経験なしだ」
スカイは情けなくても泣く訳にはいかない。
「ベルメリさんやキャシーさんまで戦うってのに、俺達だって何とか戦わないと。レンさん今更ですが、質問です。おれ、呪文は暗記しました。でもなぜか唱えても何も起こらないんです」
「バカは何処までもバカと分かった。お前の目の前に今迄、敵はいたか、魔物のちっこいのでも見かけたか。なにっ、いなかったのか。で、誰に呪文を掛けたかったのか、今度来る奴?昨日、一昨日、来たかお前の部屋に。来なかった?そ・れ・で・誰をやっつけようと思ったって?」
「はい、やっつける奴はいませんでした」
「今から来る事は分かっているな。期待しているぞ。スカイ。すかし、お前は出来の良さは、親父以上だと俺は信じている。コツは、気合いだ。分かるか。分かるな」
レンさんは満足そうに部屋を出ながら、
「屋上で、奴らを待ちかまえてやる。お前ら、付いて来るか?」
スカイと、すかしはレンさんの真似をすべきだと思い、
「はいっ」
と答えて屋上について行く。
階段を上りながらレンさんは、
「この、ミーラたちの実家は、以前ドラゴンが居候していて、彼らの出入りがし易いように、屋上がある。今日の様な日にぴったりの造りだな、うん」
レンさんは満足げだ。
スカイとしては、瞬間移動で、来ている所が分かるかなと思ったが、もしかすると体力温存で、何かのメカで飛んできそうでもあり、その時は爆発呪文を試してみたいと思った。
屋上には、レンさんが言っていたメンバーと、すかしの親父さんである元王様が居た。
すかしはスカイに、
『レンさんみたいなお年寄りにあの親父は、見てくれだけと言われたな』
内心がっくりして言うので、
「王様は、戦わないよ。平和の交渉とかするんだ、普通はね。すかしの親父、王様としてはきっと満点だったはず」
スカイは、そう言ってがっくりする必要は無いと意見しておく。
すると親父さんはスカイを見て少し微笑んだ。スカイ達のコンタクトを気付いたようだ。
スカイとすかしは、何となく皆の横辺りに居る事にしていると、間もなくセピアの方向から見た事も無い機械というか、メカが飛んできた。魔法の文言を言う時間は有りそうなスピードだ。スカイは試しに暗記していた呪文、何かを爆発させる呪文を、それでも素早く唱えそいつらにぶちまけるつもりで、言い放った。
すると見事と言って良いような爆発が起こり、爆発で辺りに飛んで行った部品や火の粉が後方から来る似たようなメカに当たり次々に二、三台も爆発した。思いがけない結果だ。ヤーモさんや、キャシーさんは満足げにスカイに頷いた。
地上を走行して来るものも在りそのメカはおそらく水陸両用だろうとレンさんが、解説しながら磁力パワーで圧縮して爆発させたようだ。
外からのメカは皆で次々に爆発させていたのだが、急に舘がぐらぐらと揺れ出した。
敵は外側からだけではなく、地底からもやって来たようだ。この揺れは、地面から何かが出て来て舘を崩しているようだ。
ヤーモさんは、
「この館を崩すつもりだ。場所を移動しよう」
そう言って、皆を抱え地上に降り立とうとしていると、舘の内側から、何か攻撃が始まった。
スカイは、体を浮かせたまま、爆発呪文を放った。思った以上の大爆発が起こると、舘の瓦礫やメカの様なものの破片があたりに飛び散って来た。皆慌てて避けるが、生憎、上背横幅共に人並み以上のすかしの親父さんに何かが当たった。
「『パパー』」
すかしはおそらく向こうの言葉で父親を呼んだ。
親父さんはすかしの方に手を伸ばした。駆け寄るすかしの目の前で親父さんは自ら爆発したようだった。そんな感じに見えた。
まるで体の中に爆発物が入っていたかのようだった。




