第36話
早朝、スカイは何時もより早い時間ではあるが、目覚めていた。昨晩はすかしが戻って来てほっとしたものの、先の事はどうなる事やらと言う感じである。
ヤーモは、レンさんがリューンさんほどではないが最近、予知能力や透視能力が目覚めていると言っていた。そして、近々この獣人国の元女王の館を、襲いに来ると言っているそうだ。スカイの居所は知っているし、年寄りとは言え磁気パワーも持っているレンの事も知っているそうだ。彼らはパラレルワールドからやって来たにしては、随分この世界の事に通じているらしく、レンさんは以前から何人かは、やって来ていたようだと言っているのだが、
『あの人何歳だったっけ。あんな爺さんになってもまだ新しい能力が出て来るなんて、天才って言うのはあんな人を言うんだろうな。ひ孫の俺は、ヘタレなんだけど。調べがついて居れば良いけどな。俺が役に立たないって。あ、ヤーモさん、俺に頭あつかわれるかもって言ったな。そこんとこ詳しくって聞いておけばよかった。レンさんに聞くべきかな。眠っていない時があれば』
すかしは変わらず同室なので、スカイが朝っぱらから悩んでいるのに気付いたのか、スカイの側に来た。
「スカイ、元気出してよ。俺たち頑張るから。パラレルワールドの反体制力の奴らって人間だけで、他の種類は居ないらしい、親父が言うにはね。魔力はあるけど、人間だけで、此処に居る魔人や魔物みたいなのは居ないんだってさ、セブン達みたいにドラゴンに変化するのを目の当たりにしたら、恐怖を感じるんだそうだ。そこの所が弱点と言えるけど、ここの世界には存在しない武器とかも持っているし。親父は戦うって言っていたけど、まだまともに戦った事は無いんだ。マジで戦ったのは、スカイが攫われたことのあるあの国だろうな」
「うん、何度も襲われたことありそうだった。だから、国自体を隠す呪文とかかけていたんだろう。そう言えば、本っ子ちゃんが貸してくれた蔵書に、隠れ呪文って言うのがあったな」
「うん、あっった。まだ返してないだろ」
「返してないよ。覚えていないし。第一まだ使えて無いだろ一個もね。それにしても、隠れ呪文必要だな。練習すべきだ」
二人は、本気を出して練習だと思う。二人とも魔法使いの家系ではないし、魔術の発動のコツというものが、良く分かってはいなかった。
「すかし、俺らってこれ持ってショウカさんの所へ行くべきだな」
「そうだね。でもこれ、瞬間移動とかして持って移動して良いかな」
「最近すかしは思慮深いな。何処からか知恵がやって来ている感じ。これを失くしたら、俺らは本っ子ちゃんにヤキ入れられる第一号だな。書き写して、取りあえず呪文を唱えるコツってのを習いに行こう」
セピアに行こうとして、すかしは懸念があるのを思い出す。
「俺、カーピンに使い魔にならないかって誘われていたな、会ったら気まずい」
「気まずい事なんかないじゃないか。どっちかと言えば、カーピンの方が、どうかと思うな、自分とこの事情とか教えないでおいてさ。忘れてりゃしないか、すかし。お前は小さい頃カーピンに連れ去られているだろ。あいつが自分の国に無事戻れるように、王子のお前をつれて逃げたんだぞ。利用されたんだ」
「でも、親父は承知していたらしいんだ」
「へーそうなの」
「そして俺に蛇になって逃げろって言った」
「それいつ聞いた話?」
「昨日一緒に家に戻るとき何となく思い出した感じ」
「ふうん」
「逃げたら、そのうち俺が忘れちまってね。魔法使いのお姉さんに拾ってもらった。使い魔にしてもらって、ご飯も食ったんだ」
「なるほど、それですっかり忘れたんだー」
「そうなんだけれど、名前は付けられていなくて、蛇って呼ばれた」
「それって一般名だから、正式の使い魔じゃない事になっていたんだな。だから、取引の感じがする。魔法使いさんと誰かとで、取引していたとか。大人同士の契約みたいな感じかもしれない。親父さんが蛇で逃げろって生きもの指定だったな」
「そうなんだよ。親父と魔法使いさんとの契約だったかもしれない」
「そういう話、親父さんとはしていないの」
「あの日は、家に誰も残って居なくて、親父はパニック一歩手前の感じだったからな」
「お前ら、空き腹時が弱点だな」
「それほど単純じゃないってば。食い物が無いかも知れないって事態のパニック的雰囲気の時だよ」
「どう違うか良く分からないけど」
「もういいや。行こうショウカさんとこへ」




