第34話
スカイはすかしと話した後、お互い今まで以上に相手を、『良い奴じゃないか』と思い至り、それからは何のわだかまりも無くなった。とは言え、やっている事は今までと同じく、魔族の呪文の暗記である。
何のこだわりも無くなって、2人で頭を突き合わせて、呪文を唱えながら暗記していたスカイだが、ふと、思いついた。
「あれ、俺らって呪文の暗記しているだけとは言え、唱えているのに呪文の発動っての、全然全くおきないのは、どうしてなんだろうな。本気じゃないからか、魔力込めて無いからか。だけど初心者用のは、そもそも魔力は使わないのに。すかしは、なんか発動させたか」
「俺も全然全く発動しない。もしかしたら寝転がって本気じゃない感が呪文に伝わっているんじゃないか」
「あのー。呪文君ってのに伝わったら発動なのか」
「呪文君って何処に居るんだよ」
「すかし君、今はスカイ君が質問するところの時間です。すかし君は今真に、呪文の人化を試みました」
「うそ、人化って。どうやったら呪文が人化するんだ。俺は絶対試みちゃいないからな」
「今、スカイ君は、『ほにゃららが呪文君に伝わっているんじゃないか』と人化しました」
そこへセブン達が部屋に入って来て、
「かはは、お前らの会話っておもしれーな。いつもそんな感じなのか」
スカイは、
「俺らはそーだな、これはフツーと言える。つまりすかしの意見は呪文君には俺らが本気じゃないと言う事実が伝わっている、だろ、すかし」
「そうとも言えるかー、いや言えないだろ。呪文君は生きてはいない」
すかしははっきり否定する。
セブンはため息をついて、
「つーまーりー、お前らが本気で言って無いだろ。分かった、もうお前らとは付き合いきれないな」
「そうかい、だけど何か用があったんじゃないか」
「うん、今日の晩飯後、みんな集まれって、会議だな」
「飯食ったらすかしは寝むくならないか」
「スカイが寝そうだ」
セブンは、
「ヤーモは、飯食った後にしないと、誰かの気が散ると言っていた。誰だろねー、かはは」
セブン達が居なくなった後、すかしは、
「きっとヤーモはレンからあの話聞いて、情報の共有って奴で、ぶちまけるな」
「ぶちまけたって、すかしはここがすかしの場所だからな」
「うん、分かってら、じゃ、会議で寝ないようにスカイは昼寝した方が良いんじゃないか」
「ちぇっ、すかしは最近俺に指図し出したな。まるでユン婆が居るみたいだ」
「婆さん扱いすんじゃねー」
今、話し終わったと思うと。すかしはスカイの寝息を聞いた。呆れる程眠りにつくのが早いスカイ。
「こんなじゃあ、危うくってスカイの側にいるしかないじゃないか」
とクスリと笑うすかしだった。
すかしは、今度は椅子に座って、呪文の本を開いてみていると、感じた事の無い、しかし少し覚えのある気がするし、かなりの圧も感じる気配がやって来た。
不信感も露に、すかしは立ち上がり館の外を探る。しかし、そいつは既に中に入っていた。人型で現れたそいつは人間ではないことは確かだ。すかしも人ではないが、こんなパワーは持ち合わせては居ない。
だがなぜか記憶の奥底に、そいつは居た気がする。
「お前は何者?誰にも見咎められずにここに入れるんだな」
すかしが問うと、
「本当に覚えてはいないんだな。自分の素性まで分からなくなっているのか」
そいつは鋭い目つきの、すかしの倍ぐらいかもしれない体格の大男だ。だが、すかしの敵ではなさそうだった。
その時、すかしにとっては間の悪い事だと思えたが、スカイの早いお目覚めだ。
「何だお前、すかしよりもだいぶでかいな。すかしの仲間かー。きっと食い意地がすかし以上だろうな。恐ろしや。俺、不味いからな。食うなよ。ふぁー、暑苦しくて寝ても居られないや、蛇に化けているだけだな。すかしも。人型の方が本物だろ。すごい暑苦しさ」
スカイの目覚めの不満げな一言で、すっかり素性が知れてしまった大男。およびすかし。
大男は、後ろから言いたい放題に言われて、スカイの方をじろりと振り向いた。
「あ、こりゃすかしの親父と違うか。ぞっとするけど似ている。カーピンとこに親子で挨拶に行ったら、きっとすかしは就職口を失うな。穏便に断れそうだな。だろ、すかし」
「やっぱりそうなるよな、良かった」
色々すかしの親父に言ってしまった感があるがスカイは、すかしの機嫌が良さそうなので、
『ま、良いか』と思った。
すると、すかしの親父らしいのは。
「こいつが随分と世話になったようだな。おかげで息子は無事だった。で、こいつを連れて帰って良いか」
「今から?」
「ああ、お前も察しているようだが、俺は目立つから。さっさとねぐらに戻りたい。」
「すかしはそれでいいのか」
「今、初めて会うからな」
「そうなのか。すかしの親父さん、今まで何していたの」
「奴らの世界に連れて行かれて、今まで戻れなかった。あの世界は今、内乱になっていて。隙があったから逃げだして戻った」
「へー、なるほど、蛇化で食ったら何食ってもOKだったんだな。すかし、攫われなくって良かったな。お前じゃ逃げ出せないかも。食い過ぎで」
「ホントだねー、そうだな。俺たち目立つからな。スカイ、俺この親父と家に帰ることにする」
「家は砂漠の中にあって日々移動しているんだが、尋ねて来れそうだったら、来な」
親父さんは訪問は歓迎するようだが、この言い方だと、尋ねて行くのは難しそうだ。
すかしについて来いと目配せする親父さん。逞し過ぎる。
「じゃな、スカイ」
「うん。またな、すかし」
スカイはそう言って、2人を見送ったのだった。




