第33話
スカイはすかしの身の上と言うか正体をレンから聞き、すっかり参ってしまった。どうすれば良いのか、さっぱり分からないのだが。レンがけろっと、話した後は何も気にせず、寝転がり、時々眠ったりで、ほぼ日常的になった。
ベッドを追い出されたスカイは、自分にあてがわれていた、ミーラさん宅の部屋に居るしかないのだが。何せ、すかしと同室であり、すかしに異変を感じられないように、本を借りて読む。本っ子ちゃんお勧めの、魔の国の歴代の魔法使いの思いついた究極の呪文の数々、誰がまとめたのか、用途別にまとめて、素人から上級者向けまでパワーに応じて載っている。使えるヘキジョウっ子の本っ子ちゃんのスカイに向けた、これも究極の思いやりの本である。スカイはまだ気づいていないが。蔵書が置いてある館の図書室に行くと、本っ子ちゃんに、何か集中できる本が読みたいと言って探してもらった。
実の所、本っ子ちゃんはテレパシー能力がある。黙っているが他の皆も、察してはいた。そう言う訳で、現在スカイに一番必要な本を貸し出してくれた。スカイ本人はまだ気づいてはいない。しかし今現在、すかしに感付かれまいと、その蔵書に載っている呪文、易しいのから上級者向けまで必死に覚える事態となった。何故なら、すかしも興味があって、横からのぞき見し出したのだ。
スカイはすかしに、側にいる事を拒めない。話しかけると、つい、思ってしまうだろう。例のすかしの身の上を。すかしはややこしい事は理解できないが、最近はスカイの思っている事はきっとわかっていると、スカイは感じていた。
スカイは必死で暗記しようとする。
「えーと、グジュグズリー、ジグジュグリー……」
「ジグジュズリーとちがうか」
すかしに訂正された。
「う、う、うー」
泣きたくなるが我慢だ。きっと泣けば、爆発的にきっと考えが浮かぶ気がするスカイ。頭を振ってまた集中する。すると、
「スカイ頑張るねー。俺、スカイがこんなに勉強が好きって知らなかったな。セピアの学校に行った方が良いんだろうな。あの奴らが自分たちの世界に戻ったら、きっとスカイはセピアの学校に行って、世界の呪文の学者になるんだ。きっとね。そんな時、俺はどうするのかな。もし戦いが終わったら、僕は何をするのかな」
スカイは、すかしが意味深な事を言い出したと分かった。頭は呪文でいっぱいにしておいたが。自分で思うのも何だけれど、すかしは自分で『器用な奴だ』と思えた。
すかしは、
「誰が器用な奴なの」
その言葉を聞いて、スカイは頭は呪文でいっぱいにしながら、『すかしは、勘付いていて、スカイを問い詰め始めた』と感じた。追い詰められた自分は、『ここを切り抜けられるだろうか』
「スカイはきっとこの呪文、覚えてしまうんだろうな。きっとね」
すかしの見当違いな保証を聞きながら、スカイはもうどうにでもなれっと思った。
くるっとすかしの方を向くと、スカイの目の前にすかしの顔がある。スカイは観念した。
「モー、黙ってられない」
「牛さんが、どうした?」
「ウッウッ牛さんの話じゃないだろ。蛇さんの話だ。お前は蛇さんじゃないんだろ。きっとお前のパパか、ママに『逃げる時はここの世界の生き物に化けろ』とか言われたな。これは俺の推理だがな」
「スカイ、推理も出来るんだな。うん、僕のパパは昔、あそこの奴らの王で、反対勢力に、王のパパと王妃のママは殺されたんだ。俺が逃げ回っている時にね」
「知っていたのかー、ガックリ」
「どうしたの」
「記憶喪失なのかと思っていた。すかし、自分の事、話さなかったじゃないか」
「だけど、こっちの皆の敵の王子なのに、正体は隠すだろ普通」
「あそこの奴らは反対勢力と違うのか」
「いーや、反対勢力に支配されているけれど、下々の人は、王の勢力内の人だった。昔はね。今は知らない。気が変わったかもしれないし、反対勢力についているんなら、敵だしね。この前攫われて行った時、黙っていたのは、どっち側の奴らか分からなかったからだよ。あ、黙っていたからね。スカイに黙っているの僕、困ったけど、知らない方が良い気がしたんだ。スカイが、僕が王子と分かっても嫌わない事は分かっていた。今さら言っても信じてくれるか分からないけどね」
「信じられるよ、それくらい。あの時、ケーキ食わせた後だっただろ、お前って、食い物の恩は忘れないと感じたんだ」
「スカイは僕の事よく分かっているね。とにかく、僕の正体は内緒だからね。今までどうり、使い魔の蛇さんでお願いします。多分僕はあそこでは生きて行かれないんだ」
「それならそれで俺は構わないけど、今、すかし、上品になっていたな。気を付けろよ。使い魔に上品な奴は居ないんだ。正体を自分から、さらさないようにしないとね。これからもずっと俺らと一緒に暮らすんだろ」
スカイの言葉に、すかしはにっこりした。
安心したスカイは、気を取り直してまた呪文の本を開くと、随分と有意義な事が書きしるしてある。
「すかし、この昔の本、すごく有意義な事が書いてあるね。よく考えたら、本気で覚えておくべきだな」
「……今までは本気で覚えて居なんかったんだ」




