第32話
スカイがヤーモさん達との会話で、深刻な事実っていうあれこれに感付き物思いに沈んでいると、(傍から見ると、うとうとしているような感じだが)セピアの公爵邸に行っていた一行が戻って来た。
すかしは、スカイが眠って居ないことは知っていて、スカイの所にすぐにやって来ると、
「スカイ、スカイ、公爵んちの飯は物凄くうまかった。スカイも来ればよかったのに、あ、レンさんが公爵の事、勘付いた事を勘付かれるから駄目だって言ったな」
スカイはそれを聞いて、
「それならもう勘付かれたんじゃないか。公爵はきっとテレパシーって奴も能力の中に入っているんじゃないかな。あいつ、きっとあっちの奴と思うな。皆でさっきも公爵利口スギって話したんだ」
「俺は、利口スギても公爵本人な気がする」
「その根拠は?」
「俺に、公爵の使い魔にならないかって言われた。使い魔になったなら、あの料理毎日食い放題だろ。俺ちょっと考えさせてくださいって言って、保留にしたんだ。スカイに訊いてみようと思ったんだ」
「はっ俺に何の用があるって言うんだ、そんなにあそこの料理がうまかったか。なるほど、公爵の食い物と魔女宅の食い物はグレードがかなり違うんだろうな」
「そう、そう、俺も何が違うのかと思ったけれど、グレードかぁ、ふふん。あ、そうか。俺らと似たようなもの食っているんだから。グレードは違うけど、公爵はここの育ちとしか思えないだろ。奴はあっちの奴じゃない。俺が保証するよ」
「ふうん、公爵、すかしに保証されたんじゃあ、今頃はむせび泣いているだろうな。光栄すぎて」
「そうかな、ところで、スカイは俺が公爵の使い魔になっても良いと思うかな。スカイが良いって言うんだったら、俺、なるよ。絶対なる。俺の苦労人時代は終わった。これからは美味しいものを食った挙句、太る事も無い高級使い魔?美食家使い魔、蛇君になるんだ。スカイ、君は今から俺を使う事を遠慮したくなるはず。僕は高級、美食家の使い魔蛇君なのだ」
「ハイハイ、そして、いつの間にか食い物があっちの材料になって、腹を下すか、もしかしたらショックで手足が出て来るかで、お前はあっちの世界に連れて行かれるな。研究材料になって10㎝の長さに切られてサンプルとして方々の研究所にばらまかれるんだ。原因の究明だな。そして結論が出てお互い食えない奴と分かる。そうなったら、あっちのカーピン邸か、もしかしたら近所の駅にお前がとぐろ巻いた所の銅像が建てられる。研究に役立った誉れ高き蛇としてな。向こうのセーンとヤモがきっと通りがかりに拝んでくれるさ。良い人生じゃないか。ひょっとしたら、こっちの公爵邸にか、セピアの首都のセピアンステーションにだって銅像が立てられるかもしれない。お互い生物として相容れない場所ってんで、こっちで暮らせないと分かれば、あいつらが立ち去るんだ」
すかしがむっつりと、
「戦争で根絶やしにしようって思ったらどうなる」
「それって、無意味じゃないか。俺だけは墓でも作って拝んでやるよ。お前の苦労人時代は終わらなかったと言う結論だな」
「腹も下さないし、手や足が出て来ないかもしれないじゃないか」
「例えだよ、例え。もっと違う症状かも知れないが、異変が起こるだろうとは思うな。何かは分からないけど」
「じゃ、行くのやめる」
「そうかい」
「変な体になりたくない」
「そーだよな」
「もっと食えたのに上品そうにしてしまった。くそう、あれが最後のなんだったら、もっと食っていたのに」
「残念だったな」
「スカイが謝る事無いよ。俺の判断ミス」
すかしがむっつり俯いたところで、セブン達がどやどやと入って来た。
「あれっ、すかし急に元気がなくなってら。どうしたんだ」
「スカイがカーピンの事、怪しいと思っている」
「そーかな、どう怪しいって」
「利口すぎる。皆も思っている。ヤーモさんとベルメリさんとキャシーさんが思っている」
「ふーん」
その時、カカカと笑いながらレンさんが部屋に入って来た。
「いや、カーピンは本物に戻ったんだ。元はああいった感じの、お坊ちゃんだったが、10歳ごろ瞬間移動に失敗してな、向こうに本人が落ちて行って、足を折ったそうだが、瞬間移動をしていたのをバレたくなくて、向こうの奴を代役にさせるアイデアに、向こうの奴らが承知して付き人共々、こっちに来てな、そうしたら食い物が合わなかったのか、だんだん、頭の調子が悪くなったきて、結論はこっちの食い物は体に合わないと分かって、あの国を建設する時は食い物を育てなければならなくなったんだが、植物だけではないからな、家畜も持って来るとなると大所帯だ。あの辺りに居る生物を試しに食ってみたものの、やはり体に合わなかった。そんな時、あの古のドラゴンの末裔たちにも磁気パワー持ちが居て、思わずそのパワーで具合の悪くなった輩を治して、それからは磁気パワー持ちをどんどん攫われてしまい、逆にお人よしの王はあっちの食い物を食わされたりして、自分が今度は具合が悪くなってお手上げだ。そんな時、本物のカーピンがこっそり逃げて戻り、偽のカーピンを人質にして交渉し、こっちに移住しようとしていた国を元の空間に戻そうと考えたんだが、随分強い魔力の奴らだったから、負けそうになって全滅になる前に、今度はそこの国の王子を人質にして、セピアに逃げ帰ろうとしたんだ。ところが途中で王子は逃げだすし、その時その逃げた王子を拾ったのは砂漠の魔女だったそうだ。ははは、だんだん何処かで聞いたような話になってくるなー」
聞きながら、思わずスカイはすかしをじっと見た。すかしはまだ何も気にしていないで、スカイをじっと見返す。やれやれだが、レンは続きをまた話しだす。
「あの国の奴らはセピアのカーピン一行の軍隊から王子が自力で逃げたと分かったので、探すのだが、王子は自衛で魔力を跳ね返しているので、行方は分からずじまいで、何十年も経って、いや年月は知れているんだが、カーピンの言い草では、あの国の奴らが王子を見つける気が無くてな、反対勢力って言うのが勢いを増してきて、王子の親、つまり王様は暗殺されて王子の身内は居なくなり、国の様子は変化してしまっていたそうだ。王子は何処へ行ったことかうやむやだし、王子の味方はわずかでそれでも王子を探していると、関わったらしい魔女を見つけて問いただそうとしたら、反対勢力に先を越されて魔女は殺されたそうだ。そして、王子の味方はその時に反対勢力に全滅させられたそうだ。どう思うスカイ」
「どうって、何処の感想を言うのかな」
「感想か」
「うん、何処の国にも悲劇は起こるんだねぇ、ご愁傷さまです。感想おしまい。あいつらはまだしつこくあの辺りに居るつもりって?」
「何せ、磁気パワーで治るからね」
「磁気パワーはこの世から抹殺しないとー。あいつらがこの辺りをはびこるよ」
「そーなるかな、結論は」
すると、すかしは、
「磁気パワーっての、スカイが持っていなかった?スカイ、自分で抹殺とか言ったらだめだよ。あほが聞いていて、スカイが抹殺されそうになったらたらどうするんだよ」
「そんときは、抹殺し返してやるけど、磁気パワーはこの際、封印って事にしないと、奴らが故郷に帰って行かないぞ。すかしは磁気パワーとか持っていないよね」
「僕には無い。だけど、この辺に居る奴は、大概磁気パワーを大なり小なり持っているな。封印しないとー。でもどうやって?」
「頭、お前がかじるか」
レンはうんざりしたように、
「スカイ、冗談は止めろ、すかしには通用しないぞ」
「あ、すかし、今の話は無しだ」
「頭はかじらない」




