第18話
ショウカは、20歳にならないと謁見室に入れない事が、どうやら理解できないスカイに、きれて、
「婆に化けたって入れやしないわよ。巡回見回りしている騎士さんにつまみ出されるが良いわ。さあ、大人の方々は謁見室へ行って待っていないと、公爵より早く行かないと、ご機嫌斜めになるわ」
ベルメリとキャシーは『ご機嫌斜めどころか、不敬罪だろう』
と思われるが、ショウカの言い方では、公爵より遅くやって来た奴が居た事は確かだが、公爵は不機嫌になる程度でそれ以上の成り行きにはならなかったらしい。ベルメリは、『公爵、歳食ったらそれなりに落ち着いて来てらっしゃるわね。きっと予知能力もまだまだ捨てたもんじゃないはずよ。と言うかそうであってほしい所ね』
皆で謁見室に入っていると、曲がり角から、見覚えあるそれなりに年を重ねた風貌のカーピン16世が現れた。
「セーフじゃないか君達。おかげで不機嫌にならずにすんだよ」
『聞こえていたな』
ヤーモは、にやりと笑ってしまった。昔のカーピンとのあれこれを思い出していると、
「ヤーモじゃないか、久しぶりだな。おや後ろの奴はお前が孵したんだな」
その一言で、ショウカはあの二人が付いて来ている事が分かり、慌てて振り返ると、
『見回りの騎士とかいないじゃないかぁ』
とスカイに指摘される。
「せっかく生んだ子を見せに来てくれたんだからな。あいつらも難い事は言わない様だな」
ベルメリ達は『違うだろ』と思ったが、カーピン公爵の性格を段々思い出した二人。つまるところ、ベルメリ、ヤーモだが。ベルメリはもうここには居ないヤッヤモを思い出し、辛くなるのだが、カーピン、
「ヤッヤモは惜しい事をしたな。仲良しだったな、ベルメリとは。あの頃は平和だったが、もうあの頃のように暮らすことは無理だろうか。ヤーモ、あの剣持っておるようだが、今日は我を狙っておらぬな。ほう、もっと魅力的な標的を思い出したのか。はやばやと来そうじゃないか。我に目もくれぬとはな。そろそろ、庭にでも到着しそうなのじゃないか。ヤーモがやって来たという事は。おや、ベルメリが呼んだって?はっ、普通に声をかけたくらいでヤーモが分かるものか、その剣が期待してやって来たとは思わぬか。今回も各国にやって来るだろうが。あの呪文を唱えるし、他は構う事は無いな。スカイがここにおるのも良かろう。兎に角ヤーモの妖剣の有る所にスカイもおる事が肝心じゃ。庭で待っておっても良いくらいじゃな。今日中には来ようのう。魔法使いの長はどうした。副はベルメリが殺したようじゃが、やれやれ、魔法使いの方は全滅か、大体副の方が、気が利いておったからな」
ベルメリはショウカに確かめる。
「魔法使いの長ってどうなった訳」
「気配がないわね、今朝まで居たけれど…。ちょっと、まさか逃げたわけ」
カーピン、
「そのまさかだな。スカイが来おったから、ここが最前線になると判断したのだろうな。愚か者めが」
その時、ズ、ズ、ズ、ズと、奇妙な地響がして来た。音はすれども、振動ははっきりとは感じられない。
ヤーモは妖剣を抜くと、
「来たな。暴れてやらぁ。久しぶりだなこの興奮感」
ベルメリは、気のせいか、ヤーモは戦いが好きらしく感じる。それとも妖剣が喜んでいるのだろうか。
ヤーモは見るからに機嫌良く庭に飛び出す。
彼に任せておけばいいのだろうか?しかしベルメリ達も少しは手伝うべきではないだろうか。キャシーは、
「ベルメリちゃんは、スカイの側に居て守っていてね。あたしはヤーモの側で戦うから」
「うん」『ヤーモの側で戦うって……』
セブン、
『俺はどうするわけ』
『あたしに訊いているの、好きな所で戦えば。立場としてはスカイの側っぽい方が良いと思うけど』
スカイ、イラっと、
「セブン、頭使えよ。臨機応変って奴だからな」
スカイが言い終わらぬうちに、公爵の館は残念ながら何だか潰れ始め、皆で慌てて外に逃れる事となる。『きっと外で待ち構えているね』ベルメリ思った。
案の定、古のドラゴン風のグレーの皮っぽいのが窓から見え、この方向ではやられに行くも同じと分かり、逆方向へ走りながら、『きっと気配は分かって居そうね』
『気配を消せってか』
スカイは怒鳴る。
『出来るの』
『気配消えろ』
『素晴らしいわね、スカイ』
ベルメリは実際に気配を消したスカイを褒めておいた。
「 ベルメリちゃんとおなじわざだね」
カーピンが後ろからあまり慌てずにやって来ていた。
『あまり慌てて無いね』
思わずべルメリが思っていると、
「今回は私が標的ではないからね。狙われていないという心地良さは初めての経験だな」
「それはようござんすなー」
「あ、リアンだ」
セブンは先日のヴァンパイアと認識したが。声はリアンだが、見かけはスカイだ。
ベルメリは、『声は似せなくて良いのかしら』
リアンは教える、
「奴らは、僕らの声はあまり分かっていない。だからあの呪文はそれほどの脅威ではない様だな。ただ、こっちの魔法にかかっている方の奴が、自分で縛りを断ち切るんだ。だから、盗まれた所でさほどのダメージはないんだよ」
解説してもらったベルメリ。
「じゃ、今日のは初めから今日の襲撃の計画だったとか」
「そうだよ、それをあの妖剣が待ち構えていたって事だ。あのドラゴン達の長、女王の体調が思わしくないんだろう。スカイを連れて帰るしか手が無くなったようだ。だが、妖剣が暴れているようだし、ドラゴン達も逃げだすのも時間の問題だろうな。あの剣は女王の身内の一人の魂が恨みを持って剣に魔力を込めたようだな。恨み憎しみは身内の方が激しい事が有るようだ。王の座を巡って対立して敗れた奴の怨念だろうな。女王の体を蝕んでいる病もその原因だな。磁気パワーで癒されるかどうかも疑問だ。さっさとスカイを当てにせずお帰り願いたいものだな」
「何だかお騒がせ体質の奴らだね。他の国の能力を当てにするなって言いたいねぇ。傍迷惑なドラゴン達だね。言いたい事が通じないってのも困ったものよね」
「ヴァンちゃんが、原語の勉強しているけど、発音が全く違うから。まだ通じるまではしばらくかかるね」
「そうなの、あたしらの事考えてくれているんだね。でも、ヤーモには二度はないとか嫌事言って無かった?」
「ヴァンちゃん、僕よりも、もっとヤーモの事気に入って居そうなんだ。言わないけどね。ヤーモの若い頃って、今よりももっと可愛かったしね。今も可愛いけど。重症で、思わず要らない事迄言ってしまうね。言語の勉強とか始めたし、ほぼ病気だね。ほっといてやってね。あ、そろそろ勝負が尽きそうだな」
「そうなの」
皆、庭園を覗いてみると、ヤーモが積み重なったドラゴンの死体の山のてっぺんで、剣についた血を拭っている。キャシーはその横に座り込んで、お疲れの様だ。もしかするとねむっている?
ヤーモは天辺に倒れているドラゴンの頭の方に移動し、耳だろうか。その耳に何か話しているようだ。そして、一瞬の内にドラゴンは消えた。
「あれ、消えちゃったね。まだみんな生きていたの」
「うん、急所は刺さなかったな」
「それで良いの?よく分からないけれど」
ヤーモは、
「うん、この剣が近々、長の首を胴体から離しに行こうと思っていると言っておいたから、きっと報告に戻っただろうな」
「良いの?そんな事言ってしまって」
「しょうがないだろな、長ってのが自分の兄弟をそんな感じにして殺して、長になっているようだし、きっと自業自得のはず」
「あの、あたしの言っている意味は、ヤーモさんはあの国に言ってそういう事するのって聞きたかったんだけど」
「俺はそんな気はないが、この剣が行きたがるんだ」
「困りましたねー。何処の国の裁きでも、剣がああしたい、こうしたいとか言うって事は認めていませんよ」
リアンは困り顔だ。パパのヴァンちゃんに報告しに帰ったようだ。直ぐに消えてしまった。
カーピンは、『ヴァンちゃん、ヤーモを捕まえて閉じ込めそうだな。我の知る事ではないがな』と思っているのが分かったベルメリだ。




