第14話
ベルメリはお馬鹿な冗談を言い合う、セブンとセブンの兄弟を見て幸福感に浸っていたものの、何だかもの言いたげだが、言わない方が良いかもといった様子のスカイが戻って来た。
「あら、スカイちゃん。何か気がかりでもおありかしら」
一応聞いてみるベルメリ。
「うん、えーとね。ヤーモさんが僕にかけられていた魔法の縛りを解く呪文を調べて来たんだって言って、白のゼラニウムを僕の頭にのせて何か分からない事言って、出来たって言ったんだけど。どうだって聞かれたけど、良く分からなかった」
「へー、白いゼラニウム。わぁー本っ子ちゃんの差し金ねきっと。あの子、前にパパが言っていた通り、天才だー。ちょっとヤーモさんのところに行ってくる」
ベルメリはヤーモの所へ急ぐ。
スカイは気になって後をついて行くと、セブン達もぞろぞろついて行った。
まだ、ヤーモやキャシーと話していたので、キャシーの執事の仕事部屋へ行くベルメリ。おそらく、本っ子ちゃんの天才ぶりの話題だろう。ベルメリもそれに追加したい。 「はーい、ヤーモさんご苦労様。多分本っ子さんの提案の受け売り的呪文でしょう」
「大当たりですがー、何か?」
「あたくしも本っ子ちゃんに負けず、うんちくを垂れに来たのよっ」
「えーと、あいつは別にうんちくは垂れていませんが」
「そうなの、意外と慎み深い事。ところで、この白いゼラニウム、花言葉を皆さんはご存じかしら」
ヘキジョウさんっ子一同揃って、
「ご存じありませーん」
スカイも声を揃えておく。
「良く揃うわねー」
にっこりして、ベルメリはうんちくを垂れ始める。
「この白いゼラニウムを頭にのせて魔術の縛りを解く件、滅びる前には魔の国のあたくし達魔人の住んでいた町の劇場で、毎年披露される超有名な演劇の一コマなの。花言葉は『私はあなたの愛を信じない』」
ベルメリが高らかに回答すると、セブン達ヘキジョウさんっ子一同、及びスカイが一斉に口を押さえて吹き出すまいとした。
ヤーモは興味深げにベルメリを見ている。
ベルメリは笑いたげな皆を睨み、
「ここは笑う場面じゃないの。話は最後まで聞いてね」
そしてまたうんちくの続きを言う。
「この演劇では恋人が横恋慕の魔法使いにさらわれたんだけど、捨てられた元恋人が頑張って、魔法使いに魔法をかけられて、愛していた恋人を振ってしまった彼女を奪い返したの。そいう演劇よ。そしてその方法って言うのが、白いゼラニウムを魔法をかけられていた彼女の頭にのっけて呪文を言い、めでたく魔法使いの縛りから解かれるって話なんだけれど。このやり方、かなりな効き目って言うか、呪文自体の力なのよね。この劇を見た後、魔法使いの魔法を解くのに魔人たちが思いついて使いだすと、百発百中失敗なく魔法が解けたわけよ。この劇を書いたのが、いずれ始まる魔法使いとの戦いを予知した、魔人の天才と言われた方で、ペンネームでこの劇を広めて、来たる魔法使いとの戦に勝利を収めたの。素晴らしいまさに天才的策略だったのよ。これはね、主に精神的な縛りを解くものよ。恋人達の話って事にしていたでしょ。呪文自体を解くのは以前からよく知られる方法があったんだけれど、強い魔法は解くことが出来なかったのよね。というのも、精神に絡まった魔法だったの。それから、これが広まって、魔の国の一般的な能力の人達も、魔法の縛りと言うより、精神的は縛り、嫌な上司から逃れて転職したい人とか、悪いグループから抜けたい人もひそかに使いだした。分かっている人は使っていたわ。でもあたし達がセピアに逃げた後の事だけれど。最近は、昔の劇の一コマって事になって、終いには迷信と言われているわ。きっと魔法使いが打ち消そうとしているのよ。だからあなた方も、これはきっちり覚えておかないと。あいつらは魔法が得意でしょ。ほんと、本っ子ちゃんは天才よ。良くぞ、大量の文献の中からこの呪文を拾い上げたわね」
キャシーは感動して、
「すごいわ。ベルメリちゃんも良くお父様のお話を覚えていらしたわね」
「あたしって、大事な事ってのが分かる質みたいね。そう思うでしょ、キャシーも。それにしてもスカイにかけられていた呪文を完全に切った事。もしかしたら勘付かれたかもしれないわね。そうだったら、次はどう出てくるのかしら。」
「今から構えていたって、あたし達は魔法使いに比べたら魔法は素人も同然でしょ。それよりもベルメリちゃんは魔法使いに伝手があったじゃない。ショウカさんに相談したら」
「キャシー、随分懐かしい名前を挙げたわねー」
一方、ヤーモは、
「笑いたかった奴、笑うか。今から」
「やめておくよ。その呪文覚えよう」
スカイは直ぐに答え、
「ヤーモさんはその文献借りて来れなかったの。大事だからって?」
「その呪文は書いて来た。蔵書は動かすことは禁じられている」
「だろうね」
ゆくゆくは始まるであろうあいつらの襲撃に備えて、こちら側の世界も滞りなく準備しなければならない。ソールはヤーモが調べて来た魔法使いの呪文を打ち消す方法を、各国の主だった指導者に伝えに向かった。
セピア公国公爵の専属魔法使いには、ショウカも加わっていた。噂では天才的魔女と聞いていたので、ソールが挨拶すると、
「セーン様のお兄さまですのね。こちらこそ、よろしくお願いいたします。あの、ベルメリさんはー、お元気ですか。良かった」
ソールは、ベルメリの以外と広い交友関係に驚かされる。
ニールに戻り、ソールはベルメリに、言っておく。
「ベルメリさんが以前親しかったという話だった、魔女のショウカさんがセピア公国の公爵専属魔法使いだったよ」
「まっ、本当。これはいよいよ、ショウカちゃんに今後の方針を検討してもらわなくっちゃ」
そう言って、ベルメリは何時も忙しくしているキャシーを探す。
「キャシー、出世頭のショウカちゃんちに行きましょうよ。セピアの公爵の専属魔法使いなんだってよ」
「そうらしいですね。もしかすると側にはリリが女性総督にでもなって居るかも」
「うっそう。あの子はそれほど出世しないんじゃない。ほら、あの時―、あ、キャシーちゃんの入学前の事だったわね。兎に角、リリのパパは一時滑っていたし」
「滑っていたって?」
「原因はあたし達、ココモちゃんと前公爵に会いに行ったりして、リリのパパは降格してるの」
「つまり、パパ本人の失態じゃないんじゃないの」
「なるほど、行ったらあの子が側に居たんじゃ、やりにくい気がする」
「へぇ、少しは気にしていたのね。いつもあっけらかんとしているようだったけど」
「それにしても、キャシーは世間の噂に詳しいみたいね」
「執事の仕事の内よ。ユンさんの伯父さんだった前の執事さんは、世間の噂とか情報を把握していらしたわね。情報網を持っていて、お館様に必要な事をお知らせしていたわね。」
「すごそうな、お仕事ぶり。で、キャシーちゃんも情報網持っているの」
「あたくしは、ヘキジョウっ子が散らばっているから、そこから情報は収集しているの」
「この館に全員揃っている訳じゃないんだー」
「ヤモさんが亡くなって、一部の子は泣いてどこかへ飛んで行ったの。そして、ある程度吹っ飛んだら気が付いて、その場に居座ったようなの。何だか私達ってそういう習性があったようね」




