第11話
次の移動場所は、この国で教会と呼ばれている所(ニールのような宗教的意味合いが、この国の教会にもあるとは皆想像できないのだが)となる。ヴァンちゃんにばかり頼るのもどうなのかと、ソールさん達は言ってみたが、ヴァンちゃんは、
「君たちは、スカイが見つかってからが活躍の場だろうな。思い出させることにパワーか何かが必要になるやもしれぬ」
と言われて、移動はヴァンちゃん担当と言う事になった。
この国の教会と言われている所は、ニールの教会と似た感じと言えた。そこの関係者らしい者は白くゆったりめのスモッグのような服を着ていた。ベルメリはそれを見て、『かぶるだけの服ね。きっと脱ぎ着しやすいでしょうね。直ぐドラゴンになれるとも言えるわね』と思っていた。キャシーも『スカイを見つけて連れて逃げようとしたらドラゴンに変わって阻止されるんだわ』と予想した。
しかし、辺りを見回しても、磁気パワーの欠片も感じなかった。セブンも思っていた。『きっと俺らが来るから、磁気パワー能力は封印しているんじゃないかな』
堪らなくなったベルメリ、きっと誰かに目を付けられそうだが、叫ぶ。
「スカイちゃーん何処なの、居たら返事してよう」
キャシーが代表でしかる。
「ベルメリ、何てことしてくれるの。あたしらの身元、バレバレじゃない、きっと捜索行動の邪魔をされるでしょうよ」
「でも、でも。セピア語聞いたら、思い出すかもしれないよ」
ベルメリ達スカイ捜索隊一行の居る教会からは少し離れた都会から少し移動した、鄙びた町の一角にある、ここは小さな教会。
幼い女の子を連れて、教会の一室には医者と思しき数人が訪れている。
「ムム、ご気分はどうでしょう」
医者らしき服装の人達は、ベッドに静かに横になっている人に声をかけ、微笑んだ。
その横のベッドには、記憶喪失で行き倒れになっていたという、ドラゴンではない砂漠の向こうの人間、名は不明な人間がいた。
その彼に、お願いをしてみたいムムの子、ファイ。横たわる人に話しかける。
「ねー、セピアでドラゴンの兵隊さんが拾ってきた子、人間って生まれたときから磁気パワーのある子がいるんだって。磁気パワーは病気の人や、怪我をした人を治すんでしょう。あなたはどうなの」
「ナー。ニー。ワカリマセン」
「ねぇムム、この人には磁気パワーってあるの」
「教会で測ってもらったら、かなり強力な磁気パワーを持っているらしいよ。だけど催眠術をかけていると、段々消えてしまったんだそう。今朝、この人を連れて来た人がそう言っていてね、だけどこの人で間違いない」
「じゃぁ、パワーがなくなちゃったの」
医者の一人が女の子に説明する。
「いや、磁気パワーは、簡単に無くなるようなものじゃないからね。教会の人達はこの人が自分で隠したんだと言っている。無意識にらしいが、おそらく磁気パワーを失わないように隠したんだろうって言うんだよ。歳は若そうだが、利口だな。この人を見た教会関係者は皆そう言っているな。だけど心配はいらないよ。お前やムムが良い人だと分かれば、きっとムムを治してくれるよ」
「分かったわ。ね、あなた名は何と言うの、あたしはファイよ。この人はムム、私のママだけど病気が酷くなって、お医者様はもうすぐ、もうすぐ死ぬんだって言うの」
「……」
その時、外で騒ぎが起こった。此処にあわただしく誰かが担ぎ込まれてきたようだ。
「怪我人よ。あなたは治してくれるの。磁気パワーで」
ファイは医者達が、慌ててファイ達の部屋から出た後、その人に聞いてみる。
彼は何も答えなかった。
そうして、直ぐに連れて来られた怪我人は、何という事か。その人をこの国に連れて来たドラゴンの兵士だった。
医者の一人であるファイのパパは、
「試しに、彼に癒しパワーを出せるか見てみようか」
ファイは、彼はそのドラゴンの兵士が嫌いなんじゃないのだろうかと思う。
ムムは、
「教会の方は彼の記憶を消しているはず」
とファイに言ったのだが。
「君。この大怪我のドラゴンを治してくれないか。酷い怪我じゃないか。気の毒とは思わないかな。彼を楽にしてやれないかな」
促された彼、可哀そうだと思ったのだろうか、彼の酷い顔に片手をかざす。
すると、見る見るうちに彼の形相が変わった。
皆を見回した後、彼は叫んだ。
「セブン、セブン。何処に居るんだー。俺は此処だー」
その声はこの小さな教会とは別の、この国の中心地にある主教会と言える場所に、皆となすすべもなく茫然としていたセブンに確かに聞こえた。
「スカイ、スカイがいる」
大声で呼ぶセブン。彼でなくとも側のほとんどの捜索隊一同にもわかった。
ヴァンちゃんは、
「行くぞ」
と、皆に命令して一同が慌てて手を繋ぐまでもなく、ヴァンちゃんに手を繋がされて瞬間移動した。
自分を取り戻したスカイの目の前に、捜索隊一同転がりながら着地した。
セブンの、
「スカイ、無事だったかー」
見つけて喜ぶ一同と、油断なく辺りの奴に注意する一同の二手に分かれた捜索隊だが、
ベルメリ、
「見つかったんだから、とっとと帰るよ」
ヤーモちゃん他、ほぼヤル気の闘争心マシマシの彼らに意見を言う。
「お心のままに」
またヴァンちゃんの強制手繋ぎ瞬間移動で、一同はとっととニールの館に戻った。
リビングルームに転がる捜索隊一同及び捜索対象だった者スカイ。
察したユン婆ちゃんが二階から転がりながらリビングに到着した。
「ユン婆ちゃん、怪我してないかー」
ユン婆ちゃんの驚愕のお出ましに驚くスカイ。
「ちょっとあしへんだけどー」
「婆さんの足なんか気にするな。スカイ、戻って来てくれたか。スカイ・ロードは健在か」
「そうだったね爺ちゃん。僕が20歳になったらセピアの飛行機乗り放題だったよね。スカイ・ロード会社と契約していたんだったね」
和やかな家族の会話に、ソール爺さん
「そうなのか」
スカイはユン婆ちゃんの足を癒しながら、
「僕が大人になったら、航空会社の広告塔になるらしいよ。俺あの国で磁気パワー能力を魔法で引き出されて、危ない気がして必死で取られないようにしている内に、気を失ったな。後記憶がないけど。危なかったな。皆さん助けてくれてありがとう」
「んー良いけど。又スカイを手に入れようとやって来るだろうな」
ヴァンちゃんはにやりとした後。
「私は戦争は面倒だからこの辺で手を引こうかな」
ヤーモは、
「有難う、これ以上ヴァンちゃんの手を煩わすのは良くないと思っているよ。今回の事、ヴァンちゃんが居なくてはスカイを助けに行くことはできなかった。それだけでもどう礼をすればよいか分からない。で、礼は出来ないけれど良いよね」
「ふふ、元よりヤーモに礼をしてほしかったわけじゃない、じゃあ、もうさらわれないようにするんだな。ヤーモ、2度は無いからな」
そう言って消えたヴァンちゃんとリアン坊ちゃん。リアン坊ちゃんは今回は活躍の場は無かったのだが、それでなのか、ヤーモに、
「僕は何度でも助けに来るからね」
と言って去った。
ベルメリは気になるスカイの話をユンさんに確かめる。
「ユンさん、スカイさんはセピアの航空会社に就職は決まっているんですの」
「ごめんなさいスカイ・ロードの話でしょ。あの話はロード家の通年のジョークなの。今後も爺さんとスカイが口に出すでしょうけど、無視してください。分かっている方もいらっしゃったけれど、本気で聞いていた方にはお知らせすべきでしょうね」
「いえ、多分あたくしだけでしょうよ」




