第28話お注射します!
601:(速報)ダンジョン下層の人攫いマッドサイエンティスト。ドS冒険者イリスに始末される
602:長年の膿解消されたし
603:クルート様が負けるなんて、そんな。有り得ない!私は信じない!
「何とか片付いたな。クルート自身の戦闘力は並ってとこだったね。ほとんど操ってた女たちの力だ」
「流石イリス様です!!蛇腹打ちが見事でした!」
「あはは……手首痛めるからあんまり多用はできないけどな。というか、俺よりも君らのおかげっつーか……女達がほとんどの戦力だったんだけどさ」
チラとギャラリーの背後を見る。そこには折り重なって倒れている女たち。死なせず傷つけず意識を奪う。
それが全員になされている強者っぷりだ。
「おぃイリス!この女たちどうするんだ?」
「置いてはいけないからなぁ……とりあえずこの階の出口までは連れていって、地上の医者に連れていくしかないか」
「とは言いましたものの、皆操られてしまっていますよね?大人しく着いてきてくれるでしょうか?この人数は運べません……」
「確かに。クルートも縛り上げて警備部隊に差し出したいしなぁ」
「あの、恐らくですが」
すと片手をあげたのはフローレンだ。犬耳がぴょこりと動く。
「解毒剤のようなものがあると思われます。クルートの動画では液体を注射するとこで操っていました。そういった毒使い?なる者、解毒剤を持つのが一般的かと」
「よし、じゃあそれを探そう」
「いえ、その必要もないかと」
フローレンが取り出した端末には丁度俺たちの配信が。
604:解毒剤は一番右の棚の鍵付き金庫にいれとくよ〜んって、前言ってた
605:昨日も言ってた
「あ、うん。配信してたのが仇になったな……」
コメント欄の有識者のお陰で解毒薬はすぐ見つかった。アヤと手分けして女たちに注射する。
「よし、これで全員か?目が覚めたら地上へ向かおう。そうだ、アヤも一応打っておいた方がいい」
「えぇそうね……イリス、アンタが打って」
「へっ?……い、いや、ここはエレミアに……」
「あの女に任せたら極太針打ち込まれそうだもの。ほら、はやく」
アヤは衣服を緩めると俺の噛み跡が残る首筋を差し出してきた。
あの時は夢中だったけど……うわ、結構くっきり痕ついてる……俺の、歯型が……
ドクドクと心臓が高鳴り生唾を飲み込む。変な空気だ。戸惑いながらも解毒薬を注射針にセット。
「痛く、しないでよね……」
淡く赤らんだアヤの顔。はだけた服のせいで鎖骨が見える。歯型の下あたりに注射針を宛てがうと心臓が爆発しそうな程うるさい。
アヤと長らく一緒にいるのに……なんでこんなドキドキしてんだ?これは治療、これは治療
「いくぞ」
「えぇ……」
アヤへ注射針を――と、思ったら俺の手のうちには注射器がなかった。
「あれ?」
頭上に影ができ見上げると注射器片手に見下ろしていたのはエレミア。蒼い瞳が鬱々と輝き、俺たちを見下ろしている。
「エレミア……こ、これは違う!その、アヤも精神壊す薬打たれてるし、解毒薬が必要で……」
「あぁそうですか。てっきりお医者さんごっこなるものをされていたのかと思い、私も混ぜていただきたいな、と」
無邪気なセリフなのに抑揚がない。
「アヤさんへの解毒薬注射、是非私にお任せ下さい」
ドゥクシッ
エレミアは注射針をアヤの腕にぶっ刺した。
「痛ぁ?!アンタ!わざと痛いとこ刺したわね!」
「血管は見えてますから安心してくださいね〜」
「いたぁい!!助けてイリスぅ!」
ぢゅうううっと注入されていく薄い水色の液体。
すまんアヤ。今の俺にはエレミアを止める術が無い。
「大袈裟ですね。終わりましたよ。それとイリス様」
俺の前に立ちはだかるエレミア。嫌な予感がする。
「イリス様もクルートと戦っています。もしかしたら毒を打ち込まれたかも」
「っ無いです!ほら俺精神乗っ取られてないし?!」
「いいえ乗っ取られています。でないとアヤさんとお医者さんごっこなんてそんな不埒で不誠実なことしませんよね?」
迫り来る注射器とエレミアの笑顔。
「いやーー!やめてエレミアー!!」
「悪い子にはお注射です!」
「いだだ!!腕刺さないで!」
「あ、あの……」
カオスになり掛けていた洞窟にておずおずと入ってきたのは金髪の女、ジャクリーンだ。
「あ……君は」
プスッ、ぢゅうう〜
「い゛ッ?!うわぁああ!変な液体注入されてる?!」
「えっと……」
「イリス様とエレミア様のあれはスキンシップなので気になさらず。貴方方はクルートに連れ去られ、操られていたんですね?」
「え、えぇ。そうです。私は夜、ふらっとバルコニーに出た際に……助けていただいてありがとうございます。地上へ戻ったら、是非お礼を……」
◇◇◇
605:ジャクリーンってユーゲル・ジャクリーンでは?
606:行方不明になってる第二王女の?いや確かに、顔似てるかも




