第27話蛇腹打ち
本物のドSってのは、ただ鞭や力で従わせることじゃない。アヤの心を従いたいと思わせること!
飛んでくる短剣。アヤの機動力はもちろん高いがそれでも元々防御専門。見切れる。
短剣を鞭で奪い取ってから彼女の手を掴み岩壁に押し付ける。
「アヤ。簡単に操られて俺に刃を向けるなんて、悪い女だ」
アヤのもう片方の手も頭上に纏めあげ両手で抑え込む。顎を掴み、色のない緑の瞳を見つめる。
「言うこと聞けないなら、お仕置が必要か?」
耳元に口を寄せる。
クルートは知らない。この女が実はどれだけちょろいか。どれだけ秘めたる変態性をもっているか。
「あぁでも、お前にはご褒美になっちまうか。他の男にも腰を振る、ビッチな女には逃げられないよう俺のって印を付けないとな」
ごめん、アヤ。でも、今ならわかる。本当はずっとこうしたかったのだと。
白い首筋に噛み付く。
「っ?!……あ……あ、ぁっ!」
アヤの力が抜けていく。歯を食い込ませれば滲む血。噛むのを辞め、滲んだ血を舐めとれば細い体がビクビクと震えた。
ドサッ
アヤはその場に座り込み、俺は舌なめずり。危ない癖は、もう手遅れだ。
「い、りす……」
アヤは噛まれた首筋を触り歯型を確かめる。
「アンタ……よ、よくも私の体に傷をつけたわね……っ」
弾かれるように上げた火照り顔。悩ましげに下がった眉や、光を取り戻した涙目は明らかに「悦」。
「他のやつのモノになっちゃったお仕置」
べっと舌を出すとアヤはわなわなと震えながら眉を上下させる。
597:早業ですこなんだがwww
598:ぺたん座り&上目遣いのアヤちゃん可愛い
「クルート。アンタの言うことはわかんねぇわ。表情がコロコロ代わるから面白いのに」
クルートは両手を握りしめぶるぶると小刻みに震えている。
「違う違う違う!!ちがぁああああう!!!おかしいだろぉおおおっ!よくも僕の芸術作品を穢したなぁああっ?!」
天を仰いで叫び、項垂れてブツブツと恨み言を零すクルート。ガリガリと音を立てて頬を削る。
「ぶ、ぶ……ぶっ殺してやる」
クルートは短めの杖を取り出す。
魔法専門か……
「俺のセリフだ。めんどくせぇことさせやがって。今すぐぶっ叩いて更生させてやるよ。クソ野郎」
鞭で地面を叩く。暴走気味の力がまた湧き上がってくるが、今度こそ俺のものとして組み敷いて、この洞窟ごとぶっ壊してやる。
「イリス様!そんなやつより私を叩いて!」
「痛そうだから私のことは優しく頼む!」
「ふむ、アヤはこういうのが好きなのか。待っていろ!俺もドSになってやる!」
いつの間にか女達を制したギャラリーが増えている。
コイツらは……
「ククッ後悔するといい!このダンジョンの下層を行き来している僕に、かなうわけないんだからねぇ!」
杖から放たれる緑の弾。恐らくは毒。
が、鞭一振で吹き飛ばす。
「え……」
「操ってた女達の力がほとんどだろ?ある日は剣として使い、ある日は盾として利用した」
ミヂミヂ、鞭を軋ませクルートを睨む。
「美しさがどうのつってるが、結局はただのゲス野郎だ。心を消すのは操りやすいから。お前のやってる事は、ただの人形遊び」
「黙れ黙れ黙れ〜〜〜……初めてだァ。僕をここまでコケにしたヤツは」
「イリス様!蛇腹打ちがいいです!」
「おうっ!あれは素早くて面白い!」
「……うん、良いよ。エレミアもシュリも頑張ったからね。ご褒美だ」
ヒュヒュンッ頭上で鞭を踊らせる。クルートが突出した眼をひん剥く。
どうせ見極められないのだろう。
「ちくしょう――!」
がむしゃらに放たれた魔弾。
「黒鞭。蛇腹打ち」
鞭を縦横無尽、網目状になるよう振りながら突進。魔弾は果物の如く24等分となり俺の足は止まらない。
「ひっ?!ま、待って……」
ババババッ
およそ百回に渡る乱れ打ち。クルートの杖を砕き体を打ち、戦闘不能へ。皮を打つ音が心地よい。
クルートは白目を向いて地面へ伏した。
599:圧倒的過ぎた。ドSVSマッドサイエンティスト
600:スロー再生しても鞭の軌道見えないんだがw
「きゃーー!イリス様素敵です!!」
「もう一回!もう一回だ!次は私が受ける!」
「百回に渡り頭の先から足の先までを乱れ打ち……こ、こんなものをアヤに出来るわけが……クソォ!イリス貴様ぁあ!」
血眼になるアルベルト。隣でふんふんと頷くフローレン。
「うるさいギャラリーだな……」
鞭を納めアヤに歩み寄る。またベソベソと泣いていたみたいだ。
「何泣いてんだよ?」
「な、泣いてないわよ!」
「ったく。ほら、行くぞ」
手を差し出す。俺とアヤ、二人の間で蘇るのは幼い日の記憶。
「置いていかないでよね」
置いていけない腐れ縁。今度は俺のありのままの手が掴まれた。




