第26話ドSでくだけ!マッドサイエンティスト
洞窟の中はひんやり冷たい。
鼻の効くフローレンを戦闘に奥へと進んでいる途中のことだ。
「危ないっ!」
エレミアに飛びつかれる。髪の毛の先をチッと刃物のようなものが掠めていった。
視界の端に映るのは桃色。長年ダンジョンでパーティを組んできたからわかる。
「アヤ!」
くるりと回転しながら着地したのは確かにアヤだった。しかし様子がおかしい。
「やぁ……君がイリスだね?」
洞窟の奥から響く低い声。徐々に灯りに照らされて全貌が露になる。長身で痩せこけた頬。窪んだ眼下から除く新緑の瞳は泡立つ毒の海。
「クルートだな?アヤに何をした?」
「そう怖い顔をしないでくれよ。僕は彼女を助けたんだ」
「何が助けただ?!僕のアヤは泣いていたんだ。貴様はイリス以下のゲス野郎と決まっている。この僕の宝剣の前にひれ伏せば、半殺して許してやろう」
「君は……アルベルトか。獣人族を手懐けたアルベルト。イイねぇ。コツを教えてくれるかい?獣人族の耳としっぽをアヤに着ければもっともーーっと可愛らしくなる」
クルートの指先がアヤの頬を撫でる。アヤは微動だにしない。否、ぼんやりと意識がないようにも見える。
精神を乗っ取るって言ってたな……野郎、アヤの感情を奪ったのか
「手懐けた、だと?フローレンは我がキルシュタイン家に忠誠を誓った誇り高き獣人族!貴様の手に余るほど優秀なメイドだ!その口、二度ときけないようにしてやる」
アルベルトはレイピアを構え突進。クルート目掛け突き出したレイピアだったが、前に立ちはだかったのはアヤだった。
「っ」
アルベルトが躊躇い、咄嗟に距離をとる。
「アヤ!何故その男を護る?!君の心を奪った卑劣な男だぞ!」
「いや、心奪われてるんだから操られてるに決まってるでしょ」
コイツはよく今まで生きてこられたものだ。
「どいて。俺がやる。アヤは自我が強い女だ。こんな奴に乗っ取られたりしない」
「イリス。君は女たちに最低な事をしている。アヤの瞳はこんなにも純粋が黄緑色に輝いているのに、君のドSのせいで……せいでぇえ」
ぶる、ぶると震え出すクルート。
「瞳をぐちゃぐちゃに歪めるようになってしまったじゃないか!!綺麗なものを歪める!!何たる冒涜ううっ……はぁ、はぁっだが、だが大丈夫だぁ……僕が余分な感情を取り除いてあげたからねぇ……アヤは僕の綺麗なお人形さんだ」
クルートの言葉が俺の逆鱗に触れる。迷わず鞭を引き抜いた。
「アヤがテメェの物だって?俺はそれを良しとしない。自分から笑顔で生意気に去ってくその日まで、アヤは俺のモノだ!」
鞭が黒い雷を纏う。洞窟の壁に亀裂が入り、溢れ出てくる力。
けど、暴走したら二の舞だ。力は熱く。頭は冷静に。組み敷いて助ける!
「なんて不細工な瞳だ。アヤ、行きなさい。君を歪めていた男の首を刈り取るのだ」
アヤは短剣を構え躊躇なく襲いかかってくる。
……っアヤは戦闘は苦手なはず……それも近接戦闘でこんなに動けるなんて。クルートが操ってるのか……?
「アルベルト!シュリ!エレミア!奴を始末しろ!操る親玉が倒れればアヤを動かすことはできない!」
「フゥン!良い推理だ!たまにはやるじゃないか!アヤは僕のものだがなぁ!」
「お任せ下さい!」
「首がなるなぁ!」
「腕ね……」
「おぉ……純白のエレミアを相手するだけでも負けは必至。そこへ貴公子と火山の女神。これは良くないねぇ」
「今更後悔しても遅いですよ。イリス様の所有物を許可なく奪う。大罪です」
「はぁ……君はブサイクだなぁ。さぁ、僕の可愛い人形たち。行きなさい」
飛び出して来たのは目の色を失った女たち。そして見覚えのある金色の長い髪の毛の女。
ジャクリーン!……そうか、ジャクリーンも奴に操られてたのか……
アヤの猛攻を防ぎながらクルートを睨む。
「どうだね。僕の人形たちは。感情がないから身体能力を限界まで引き出せるんだよ」
「クルート!ゲス野郎が!」
「ゲス野郎?君と僕、何が違う?相手の心を操って組み敷いて、従わせる。その醜い癖と僕。同じ穴のムジナじゃないか。ま、君の美学は分からんがなぁ」
「同じ、だと?」
アヤの短剣を弾き返し、鞭で地面を叩く。鞭を左右に引き伸ばしながら溢れ出る怒りやドS感情を抑え込む。
「力で捩じ伏せて無理やり従わせてるお前のやり方はただの外道だ。教えてやるよ。本物のドSってやつをな!」
593:カッコよすぎる!私も助けてイリス様ぁああ!
594:心を奪うマッドサイエンティストか、性癖を組み敷くサディストか……激アツ展開すぎる……
595:負けたらイリスはバラバラのホルマリン漬け。閲覧注意動画また増えちゃうね。どこで販売してくれるんだろ?
596:クルート信者ヤバ。イリス様絶対勝って欲しい




