第22話謎の女集団、来襲
「ねぇイリス。まさか今度はこの女の父親を探すって言い出すんじゃないでしょうね?」
アヤにジト目で見られて言葉に詰まる。仰る通り、俺はこの人を放っておけない。
「だってなぁ、こんな状態の人をここに置いていくことはできないよ……」
「へぇ?怪しさは満点だと思うけど」
「そうだけど、俺たちに悪意がある訳じゃないんだ。とりあえずこの階抜けるまでは連れていかないか?それで見つけられなければ一旦地上に出て警備隊に預けるとか」
「アンタ、私以外の女には優しいわよね」
「あ?お前が先に俺に嫌がらせしたんだからな?自業自得ってやつだろ」
「なんですって?!大体ね、アンタの付き合ってる間の態度がこの事態を招いたのよ?だからアンタのせいでもあるの」
「あーはいはい。もー分かったっての。とにかく、ほっとけないからこの人の父親探しながらこの階は進む。OK?」
「……ふん。トラブルが起きても知らないからね」
アヤの奴、本気で俺と寄り戻したいとか考えてるのか?とてもそんな態度には見えねぇけどな……
「はぁ……ってことでこの人の父親探しするけど、エレミアとシュリはいいか?」
「その前に肉だ!肉食べよう!」
「私はイリス様に従います!命令してください!命令を!」
二人に詰め寄られ近い近いと両手で制する。全く、行先一つ決めるのも楽じゃない。
◇◇◇
「という訳で、この人の父親を探します。なにか情報があれば俺のDMに送ってくださ〜い」
585:イリスハーレム状態すぎるだろ。その女もどうせマゾなんだろうよ。俺もドSになったら群がってくれる?死ぬことは許さない……って
586:イリス様以外のドSは生理的に無理
587:585さん乙www
588:父親って、そんな年配の冒険者下層にいたっけ?
「好き勝手言いよる……さて、行こうか。名前……って言ってもそれも覚えてないんだっけ……?」
「あ……ジャクリーン……です」
「名前は覚えてたんだ?冒険してたらお父さんのことも思い出すかもね」
暫くダンジョン内の森を進む。まだダンジョン生物には出くわしていないが、女が負っていた傷を思い出せば油断はできない。
「シッ!誰か来る……?」
聞こえてきた足音に戦闘態勢をとる。
他の冒険者か、二足歩行のダンジョン生物か。もしかして、この子のお父さんとか?
草木をかき分けて姿を表したのは黒髪の女。手には剣か握られ、見た目は冒険者だ。他の冒険者かと気を緩めた瞬間、ガサ、再び茂みの音がし、反対側から茶髪の女が顔を出す。続けざまに正面、背後。
武器を持った女、女、女。
「ねぇ、なんか変じゃない?」
「あ、あぁ。冒険者じゃ無さそうだ」
誰一人として面識は無い。しかし、一様に薄暗く色のない瞳をしており無表情だ。
「貴女方は……敵、ですか?」
エレミアが生唾を飲み込む。同時にダガーを構えていた女がエレミアに飛びかかった。
「なっ?!」
驚く間もない。それを皮切りに俺たちを囲んでいた女達が一斉に攻撃を仕掛けてきたのだ。
剣を抜き攻撃を防ぎながらアヤとジャクリーンを背後に護る。
が、体制が整わない。
飛んでくる蹴り。
生身の人間かもしれないという考えが反応を鈍らせた。
ガッ
顔面に蹴りをくらい木に叩きつけられる。
これはっ重いっっ……それに……
「イリス!こいつらぶっ飛ばしていいんだな?!」
「待てシュリ!こいつらはダンジョン生物じゃない!……生身の人間だ!!」
「っ何故私達に攻撃してくるのでしょうか?!」
「分からない!とにかく殺しちゃダメだ!攻撃をいなしながら逃げるしかない!」
「お前それはっ至難の業だぞ!」
「あぁっだが、人殺しする訳には……」
立ち上がり襲いかかってくる剣を弾く。
鞭はまだ制御が曖昧……力加減ができないしまた暴走しても困る。けどっ手加減できる相手でも無さそうだな!
「アヤ!ジャクリーンを連れて逃げろ!」
「えぇ!」
アヤは防御魔法を使いながらジャクリーンの手を引いて逃げる。護るものがない分、これで敵に集中できる。
「なんで攻撃してくるんだ?!俺たちは君らと同じ冒険者だ!」
「命令。実行。イリス殺す」
まるでコンピュータのシステム音のような抑揚の無い声だ。
「やっぱり敵だ!イリス!こいつらマグマでどばーっと!」
「ダメですよシュリさん!冒険者殺しは重罪ですから!」
「んじゃこの女共は重罪人だろ!処刑だ処刑ぃ!」
「ダメだって!とにかく一旦引こう!」
「イリス様、シュリさん!私に策があります!合図をしたら私の傍へ!」
「分かった!頼む!」
「シュリさん、敵を殺さぬように吹き飛ばしてください!」
「お前には命令されたくないね!」
「言ってる場合か?!シュリ!頼むお前しかいない!」
「おうよ!任せろ!」
クソガキ女神め……
態度は置いといて、シュリは大太刀を地面に叩きつけ、湧き出たマグマの風圧で女達を退ける。
「お二人とも!」
エレミアの合図に従い、背後へと隠れる。エレミアは魔剣を天に突きあげた。
「ミラージュ!」
その瞬間エレミアを含めた俺たちの姿は忽然と姿を消した。否、正しくは敵から見えなくなったのだ。
「凄い……一帯どうやって」
「光の屈折率をいじっただけなので、実態は消えてません。あと声も……このまま静かに撤退しましょう」
「うん……助かったよエレミア」
流石下層冒険者。エレミアの機転のお陰で俺たちは難を逃れた。
危機は脱したかに思われたが、先に逃がしておいたアヤとジャクリーン。今度はその二人と、連絡がつかなくなってしまったのだ――




