第20話脱出!砂漠地帯!忍び寄るマッドサイエンティスト
砂漠に咲く、赤黒い大輪の花。うねる棘付きのツタで獲物を捕まえ、溶液が煮えたぎる口内に放り込む。
人喰い花。ラフレンス。
砂漠に足を取られ、砂漠を叩くツタは正に剛腕。砂漠地帯のボスに相応しい難易度のダンジョン生物だ。
複数人で纏まって、ヒットアンドアウェイで挑むのがセオリー。なのだが、俺のパーティの戦闘力は偏りが激しいらしい。
「シャイン・ソードショット!」
光の剣がラフレンスの極太ツタを紙切れのように割く。
二発目で花本体を貫き、爆散。花の果肉と共に胃液と思わしき溶液が飛び散る。
「液体に触るな!皮膚が溶けるぞ!」
と、俺が叫ぶのと、砂漠からマグマが噴射するのはほぼ同時。
ドバッ
粘ついたオレンジのマグマが立ち上り、果肉もツタも、溶液すら飲み込んで消滅させる。
光とマグマが交差し、大爆発と共に立ち上るきのこ雲。
砂丘に高温のマグマの海が出来上がった。
地獄絵図――
「イリス様ァ!見てましたか今の?!褒めてください〜!」
「バーカ!殺ったのはアタシだ!イリス!アタシを褒めろ!」
「いや君たちね……」
弾けるような笑顔の背後で、立派な窪地とマグマ溜まりが完成してしまっている。
585:砂漠地帯をマグマ地帯にするとか鬼かwたった今57階の難易度が70階ばりになりました冒険者は注意してくださいwwww
586:ダンジョンクリアが目的とかいいながらダンジョンを地獄に作り替えるのが目的。そういう意味ではSMパーティ
「いやほんとにね……洒落にならないよ!地形変わっちゃってるから!」
「力加減の知らない化け物ね。57階は死んだわ」
褒められると思っていたのか、エレミアとシュリが肩を落とす。
ううん……まぁ、一応倒してもらっちゃったしなぁ。俺とアヤ二人じゃ何十年かかってたとこだし……
俺は二人の頭に手を添える。
「はい、よく頑張りました。次はもう少し手加減して、周りを壊さずにできたらもっと褒めてあげるよ」
途端、パッと目を輝かせる二人。
「ひゃいっイリス様ぁ!頑張ります!」
「次の敵はどこだ?!アタシにかかれば力加減も楽勝なこと、今すぐ証明してやる!」
「ちょっとイリス。甘やかさないでよそいつらのこと。次の階が廃墟になっても知らないわよ」
「はは……」
無いとは言いきれない。ま、何はともあれ――
「砂漠地帯!抜けたァ〜」
彷徨うこと三日間。俺たちは砂漠地帯から脱出した。
「あ〜空気が美味しいな!砂漠地帯は暫く勘弁して欲しいよ。ダンジョンもいよいよ58階……あと2階進めば60。最下層組の仲間入りだな」
ワクワク、胸が高鳴る。
スキル【ドS】のコントロールも、まだ誰も見たことがないダンジョンの秘密も財宝も全部手に入れてやる!
冒険者魂を擽られ、目の前の森へと足を運ぶ。俺は知らなかったのだ。この森に巣食う、悪魔の正体を――
◇◇◇
『ギャアギャアうるせぇんだよ――』
『逆らうことは……許さない――』
『あぁ。偉かったな。凄いぞ』
四角い端末から流れるのは「イリス様ドS集切り抜き」。
ダンッ
鈍く重い音と共に、まな板に叩きつけられる出刃包丁。飛び散るのは、血か、肉片か。
「違う、違う違う違う!!!」
頬骨が目立つ長身の男は背中を震わせながら出刃包丁を叩きつける。突然に発狂し始めた男を前に、息を殺して泣いていた女が身体を震わせた。
「ンんーッ!」
女は硬いベッドの上で両手両足を拘束されていた。口枷に吸い込まれる叫び声は、外の誰にも届かない。
「ああぁすまない……驚かせたねぇジャクリーヌ……君のことは傷つけないよ。なんてったってこの白い肌。艷めく金色の髪の毛……極めつけに美しいこの瞳」
男の血肉で汚れた指先が女の瞼に触れ、こじ開けられるエメラルドグリーンの瞳。
「ゔ……ぅ」
女は恐怖に萎縮し涙する。
「怖いかい?大丈夫……すぐなにも感じなくなるよ。キミは私のお人形さんになるのだから。そして寂しくもないよ!すぐに君の姉妹を作ってあげるからね」
男は映像が流れる端末を手に取る。拡大したのは桃色の髪の毛に緑色の瞳をした――
「なぁ……アヤちゃん」
男のニヒルな笑みを最後に、女の意識はブラックアウトした。
誰か……誰か助けて――
その声は、誰にも届かない。




