第13話デコピン争奪戦
アヤの元恋人にスキルの暴走。謎にサインを求められ俺は疲弊モードだ。
563:コントかよwフローレンちゃん最高w可愛いw
564:スキルの暴走とかカッコよすぎるだろ。属性盛りすぎ。絶対ここから有名配信者になるとみた。俺もサイン欲しい
565:冷や汗握っちゃった!神回!スキルドSの秘密が気になりますね!
暴走した俺のスキルに関する考察もちらほら……後で読んでみるか
「二人とも、今日はこの階のボスまで倒して休もうと思うんだけどいいかな?いろいろありすぎて疲れちゃって」
「もちろんです!お疲れならマッサージしますよ。鞭をふるう時に使うドS筋を特に重点的に!」
両手を握りしめ張り切るエレミア。
「いやいらないよ。ドS筋って何……」
ふとアヤの方を見れば顔色が悪く俯いている。
「どうしたアヤ?具合悪い?」
「い、いいえ。その、私のせいで……ややこしい事に巻き込んだな……って」
唇を噛み締め、目を泳がせる。
「ぷはっ!なに今更なこと言ってんだよ。俺と別れたつもりは無いって迫ってきたのどこのどいつだ?」
「なっ……わ、私はアンタのことを考えて……」
切りそろえられた桃色の前髪。その下の額目掛けデコピンをくらわせてやる。
「いたっ」
「バーカ。今更いい子ちゃんぶるなよ。性悪女」
「っ……っ?!」
顔を真っ赤にして目を丸くするアヤ。これくらいの仕返しは許されるだろう。
「なによ!イリスの癖に!イリスの……くせに……」
アヤは額を抑えそれ以上言葉が出てこないらしくまたしおらしくなってしまった。
566:良いでは無いか!イリアヤ万歳!形勢逆転からのケンカップル誕生でござるなぁ!
567:言い返せない&恥ずかしい&イリスしゅきっ♡で黙っちゃうアヤちゃんガチ萌えた
568:バーカ!アーカイブから切り抜きして耐久動画作る
う、うーん。こういうこと言われると自分の行為が恥ずかしいな……
569:イリス後ろw
ヤバい!またエレミアが嫉妬して――
急いで振り返る。
エレミアはというと前髪を自らかきあげ、額を俺に向かって突き出していたのだった。
「……エレミアさん?」
「……」
エレミアは頬を膨らましたまま俺の方を黙って見つめる。
大福みたいな頬っぺた……
「えーと、ボス部屋行こうか?」
「なんて私にはデコピンしてくれないんですか?!私の事は遊びだったんですね?!」
エレミアを宥めるのには、その後一時間を要した。
◇◇◇
56階ボス。キメラ。
ライオンの体にドラゴンの羽を持ち、尻尾には鱗。とにかくあらゆる動物を混ぜ合わせたような珍獣である。
が、空から降ってきていた。
「イリス様ぁ!トドメをどうぞ!」
「どうぞっつったってなぁ……キメラを投げて寄越すやつがあるかぁ?!」
絶叫と共に鞭を振る。キメラの体を打った瞬間黒い雷が弾け、轟音。
キメラは黒ずみと化し、石造りの床に叩きつけられた。
567:エレミアの光魔法で打ち上げられた挙句八つ当たり雷鞭にシバかれるキメラ不憫すぎる
568:このコンビ恐ろしすぎw無敵じゃんwマジでダンジョン踏破するのではwkwk
「はぁ……50階止まりだった俺がボスを一撃で倒しちまうようになるとは」
「はい!流石イリス様!私が見込んだだけのことはあります!」
「いや。完全に棚ぼたというか。スキルが強すぎるんだよなぁ……そうだ、リスナーの皆が考察してくれたことからも察するに、俺のスキル【ドS】には感情が関係することが分かった」
「キレるとあんなふうに暴走するってこと?」
「大体間違ってないけど……キレるってよりは……その、組み敷きたいとか支配したいとか……そういう感情、デスネ」
「ドSな気持ちが強いほど強い力が出せるってことね……やるじゃない」
「素敵です!」
どこがだよ……
「そういえば考察してくれた中には、俺が組み敷かれそうになった時、それを拒絶する力が強すぎて暴走したのではっていうのがあったんだ。その説が有力かなーって俺も思うんだよね」
「怒らせたら駄目ってことね」
「でも凄い力ですし頼もしいですよ?」
「いや。これまで人に向けて鞭使ったこと無かったし、今も人を打ちたいとは思わない。あれは完全に俺の意思が消えてた。あれは俺じゃない……エレミアが止めてくれなかったら人殺しになる所だったよ。だから鞭を使うのは魔物相手だけにしようかなって」
そう言った時のエレミアとアヤの悲壮感溢れる顔といったら。
「そんな顔しても打ちません」
これだからM女は……




