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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十一章:進歩する周囲

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736:プライドみたいなもの

 おはようございます、安村です。アラームが鳴る前に外が若干騒がしくなったので目が覚めました。仮眠時間は三時間半という所。どうやらチームTWYSが行動を開始するらしい。仮眠時間としては充分だ。エレベーターの位置をちゃんと覚えておくためにもできれば随伴したいところだ。


 テントから外に出ると、フル装備のチームTWYSと目が合う。高橋さんがずいっと前へ出て来た。


「おはようございます。今からお出かけですか」

「おはようございます安村さん。今度はこっちが起こしてしまいましたね」

「じゃあそこはお互いさまということで。エレベーターの場所を決めに行くんですか? 」


 高橋さん達はコクリと頷く。ミルコを四時間ほど待たせたことになったが、本人はさっき色んな風景を目にして楽しんだところだろうし、このぐらいの時差を作っても問題ないだろう。以前二十一層だかで言っていた、時間に関してはそう気にする必要はないという言葉をそのまま受け取っておく。


「ちなみに安村さん達はどういう基準でエレベーターの設置場所をお決めになったんですか? 我々も何分初めての事ですので要領を得ない所がありまして」

「じゃあ数分待ってください。相棒たたき起こしてお付き合いしますし、我々もエレベーターの位置が知りたいところですから」


 そういうが早いか、芽生さんのテントに入り込み腕をゆっさゆっさとゆする。スーツを脱いでブラウス姿でリラックスしていた芽生さんから視覚的に伝わる明らかに実った二つの果実が時間差で揺れる。そうか、これが地震のP波とS波か。


 少し遅れて芽生さんが目覚める。いつものダーククロウ装備じゃないので少し寝ぼけている。よほどここの気候が心地よかったんだろう。


「高橋さん達、エレベーターのいい位置探しに行くらしいから、探索ついでについていくよ」

「ふぁい……今起きます」


 起き上がると自分の水魔法で軽く水面を作ると顔に当て、息を止めたまま目をぱちぱち。そして使い終わった水は蒸発させる。微妙な所で中々の才能を発揮してるな。


「その洗顔方法良いな。後の飛沫の処分に困らないのもいい」

「頑張って生活に応用できるよう日々努力しておるのですよ」


 芽生さんをテントからたたき出すとテントとエアマットをそのまま収納。ついでに寝起きの水分補給で冷たいコーラを一つ。流れるような動作と一瞬で消えていくテントとエアマットに高橋さん達が動揺している。


「解ってるつもりですが、異様な光景ですね」

「こんなものも出てくる時点でまぁお察しください」


 人数分の冷えたコーラを出す。ありがとうと受け取ると、全員その場で飲む。これで寝ぼけ頭は解消できるかな。


「エレベーターの基準ですが、背中に物があったほうがそれらしく見えますね。大岩に埋まった階段では無いですが、エレベーターの後ろには何か構造物が無いと不安でしょうがないと思いますし、そういうぱっと見、埋め込み型のほうが違和感なく使えることでしょう。ちょっとドローンでそれらしいものを探してみますか」


 四十二層に入ってからドローンはチョコチョコ使っているので、大まかなマップは判別している。その一角、四十一層への階段から四十三層への階段がありそうな方面にある岩のオブジェクトを上から示して見せる。


「こういうものがあるとエレベーターがこの中に埋まっている、と認識できるので便利だと思います」

「なるほど。だとすると中央部らしきところにあるコレでも良いわけですか」


 ドローンで撮影した画像を地図に重ねて、この辺りにも岩石層があることを示してくれる。


「まずは行ってみますか。それで出来るだけ便利な場所が良いですから、階段からあまり離れすぎない事も利便性からして大事かと」

「そうですね。二十一層もそうでしたが、階段から距離が有るとその間歩く時間が勿体なく感じますからね」

「二十一層の時は目印重視でしたので、一番高い建物を基準にして設置してもらったんですよ」


 たしかに、二十層への階段からも二十二層への階段にも遠い若干不便な位置に作ってもらったな、と今更ながら反省する。


 だからといって突破ボーナスを使って、今のままだとエレベーターが使いづらいからエレベーターの位置を移動してくれ、ついでに一層ももっと手前で良いし十五層から十四層へ変更してくれ等、今の小西ダンジョンの利用状況を考えて毎回頼んでいてはきりがない。それにいきなりエレベーターの位置が移動したら使う側も混乱するだろう。今のままの物は今のままで。むしろこうやってセーフエリア毎にエレベーターを用意してくれるのを有り難いと感じる、その奥ゆかしさこそ大事にしていきたい。


 それに今回は突破ボーナスは俺に付随するものではない。基本的に利便性も含めて置きたいところに置くというのは高橋さん達、ひいてはダンジョン庁の領分であり、俺が事細かく口を出すのは憚られるところだ。あくまで今までの設置した際のイメージとそれに見合った場所を探す、ぐらいまでで止めておくのがいいだろう。


 しかし、数時間の差で二番手か。もっと言えば一回潜るだけの差。芽生さんの家族会議が無ければ四十二層まで来てしまっていたかもしれないと思うと勿体ない事を……いや、そこに文句をつけるのも違うな。今回は御縁が無かった、それだけの事だ。これまで散々利用させてもらったのだから他の人がそれを体験しておくことも大事だろう。


 考え事と雑談をしながら歩き、現地到着する。エレベーターが入っていると言えるだけの高さと幅と奥行きのある、ちょうどいい感じの岩肌というか地層というか、そう言うものを見つけた。場所は島のほぼ中央と呼んでも差し支えないあたりだ。階段と階段の中間地点という訳ではないが、解りやすい場所であるとは言える。


 ドローンを飛ばして確認するが、全周囲ギリギリの範囲に水場が見える。ちょうど中央で解りやすいとは言えるが、方向感覚を失うと休憩するまでに最悪一時間ぐるりと回る可能性が捨てきれないのが問題だな。


「こういう地形で階段と階段の間に有ればモアベターなんでしょうけど、そこまで探してみるのも一つ。解りやすいのでここにしようというのも一つ。選択は高橋さん達がする問題なので私が口を出すのはこのぐらいにしておいたほうが良いと思います」


 ここで口を挟むのを止めて、彼らの決断に全てを任せることにする。


「そう言われると確かにどっちへ向いても等距離で砂浜にたどり着ける、という点では悪くない場所かもしれませんね。悩むなあ、どう思う? 」


 高橋さんが他のメンバーを意見を求める。


「そうですね、自分はやはり階段に近い方に一票を入れます。上下何処の階層に行くにもやはり何もないセーフエリアでの移動は時間的なロスと考えることが出来ますし、体力も余計に消費することも無くなります。もうちょっと吟味してみるほうが良いと考えます」


 渡辺さん……だっけ、高橋さん以外の名前を失念してしまった。TWYSの内のWYSの誰かということにしておこう。忘れた俺が悪い。後で何かの機会があった時に名前をそれぞれ呼んで反応をみて、名前と顔を一致させよう。


 しかし、彼らとここまでの付き合いになるとは思わなかったな。やはり顔と名前を一致させることは大事だ。今後はちゃんとしていこう。


「小官はここに設置してもらうのがベターだと思いますね。今後利用者が増えた時には階段への通り道を中心にテントが立っていくでしょうから、往来するための道が過密になる可能性があります。それを避けるためには階段とエレベーターには多少の距離があったほうが良いと思われます」


 俺が一層のエレベーターの設置をお願いした時も同じような考えだったな。彼の意見には親近感を覚えるぞ、WYSの誰か。


「自分はここですね。ここにエレベータは設置しつつ、テントはまた別の所へ設置すればいいのですから誰でも利用しやすい、または解りやすいことが第一と考えます」


 意見が割れている。これは高橋さんが階段に近い方を、と考えていたら二対二でまた意見が伯仲する奴だな。


「意見をまとめるとこの場所が二、階段近くが一、か。安村さん、目印にさっきのテントを置いておくことは可能ですか? 」

「えぇ、良いですよ。後で小遣いでいつもの机とノートと椅子と非常用水分を設置するところまでは任せていただいても構いませんよ」

「ありがとうございます。では、ここにエレベーターを作ってもらおうと思います」

「という訳らしいぞ、ミルコ。お願いできるか」


 ミルコを呼びだす。おそらく聞いているだろうから、呼んだらすぐに来るはずだ。


「解ったよ、じゃあここに作ることにする。しばらく待っててね」

「じゃ、高橋さん達はここで作業を待つということで、目印のテントを出しておきます。その間に我々は四十三層への階段でも探しに行きますよ」

「お任せします。後で情報共有しましょう」


 芽生さんと二人、階段らしきものがある所へ向かう。


「あてはあるんですか? 適当に出てきましたけど」

「さっきドローンで確認した範囲だと、怪しい所が三地点ある。一つずつ潰していくさ。まずは四十一層の階段から近い所から順番に巡っていこう」


 砂浜に出ると、四十一層への階段を基準にして、階段を探し始めた。何もない砂浜をただ二人歩く。


「なんかデートっぽくていいな、ここ。ダンジョン内の孤島とはいえ雰囲気がある」

「ダンジョンじゃなければ砂を蹴り飛ばしながら水着姿で走り回りたいところですね」

「探索者専用レジャー施設か。海の家でも始めるか? 七層やそこらで開くよりは楽しいかもしれんぞ」

「まぁそれはおいといてですね、全部任せちゃっていいんですか? 近くでエレベーター設置を見守ってても良いと思いますが」


 芽生さんはいつもの作業が無くなってなんだか肩透かしを食らったような感じらしい。


「待ってても良いけど仮眠取った後でどうせ暇だし、それなら階段を探す方が合理的だ。エレベーターが出来上がるのを待っていてもここでうろうろしていても同じなら、階段探しに行った方がやることがあってまだいい……ってなんか前にこの話した覚えが有るような」

「デジャヴですかね。まあそれはおいといてですね、優先権がこっちに存在しない事は仕方ない事なんですがなんとなくもやっとしますね」


 そう言って砂浜を蹴って砂をまき散らす芽生さん。そう言えばこの砂は固定オブジェクトじゃないんだな。持って帰ってみるのも一興か。お土産が砂、というのは鳥取か甲子園の土産って感じがするが。使ってないチャック袋に四つかみほど放り込むとチャックを閉じて保管庫へ。保管庫では砂浜の砂としか表示されていない。付帯情報が少なすぎるのは知識不足か。


「それもお土産ですか。ただの砂に見えますが」

「何か面白い成分が含まれてるかもしれないと思ってな。未知の物質かもしれないし、国内の何処かの砂と同じかもしれない。砂一つでも含まれる情報は色々あると何かで知った覚えが有る。例えば砂鉄が多いとか、そう言う奴だ」


 今目で見て確認できることでは無いが、砂金が含まれていたりしたらこの砂浜は金の山、ということになる。それが広まれば探索者が砂浜の砂だけ持って帰る可能性だってある。そういった本来の仕事以外の行為を事前に止めたりするためにも成分解析は必要な行為だと言えるだろう。それに数少ないダンジョン外に持ち出せるダンジョン内物質だ。調べておいて損は無い。


 四十一層への階段から一番近い大岩を調べる。流石に近すぎたのか、その岩は階段では無かった。ちゃんと×を書き加えたうえでドローンを再度飛ばして確認。次は十五分ほど歩いた先にあるようだ。次ぐらいは当たりでも良いはずだがさて……最悪エレベーターの反対側ということもあり得るが、焦る時間ではない。宿泊だからまだまだたっぷり時間はある。ここは落ち着いていこう。


 二番目のポイントにやってきた。岩というよりは地層から岩が露出している、というほうが表現に近い所だったがここも違った。どうやら最後のポイントに階段があるらしい。これで三つ目もはずれだったらどうしようかな。


「今日は当たりが悪いですね」

「そういう事もあるさ。マップの形的にはエレベーターを挟んで反対側、ということになるか。悪い配置ではないな。何年かかけてここに多くの人が集うようになった場合、局所的に混まなくて済むだろうな」


 三番目のポイントでようやく階段を見つけることが出来た。ここは四十一層への階段・エレベーター・四十三層への階段、とほぼ一本の線でつなぐことが出来る場所だ。ありていに言えば一番はずれの配置とも言える。残り半周分は気が向いたときにでも埋めていこうと思う。流石に隠し宝箱とかは無いだろうし、しばらく人は来ないんだから階段とエレベーターの位置関係が解ればそれで十分だ。


「これで一応ミッション達成ですか」

「戻って高橋さん達と合流しよう。待たせてる可能性もあるからな」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョン深層でデートかあ 中々できるもんじゃないですな しかしこの2人ならよっぽどの事が起きない限り問題なくデートできそうだw
[一言] > P波とS波か」 縦揺れするぺぇを観測 > 高橋さん以外の名前を失念してしまった」 おじさん『TWYSって何だったっけ…?』 > 今後はちゃんとしていこう」 これからちゃんとする予定(…
[良い点] 胸の話してるのにP波S波と物理の話が出てくるのが、物理と色気の複雑なスイッチを起こすのか、却って色っぽい気がします。 誰もいない海辺に2人っきりっていう情景も良いと思います、なんか、ふと…
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