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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十一章:進歩する周囲

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735:カニうま島と命名す

 四十二層へ下りる。四十二層も相変わらずの島マップ。早速ドローンを飛ばして周囲確認。大岩がありそうなところを探すが見当たらなかった。流石に下りてすぐのところに次の階段がある、なんてことはないらしい。


「とりあえず砂浜付近に階段が設置されていることは間違いないらしい。外周をぐるっと回ればそのうち階段が見つかるって事だな。島の中央部には何かしらあるかもしれないが今のところ寄り付く理由はないな」

「まずはドローン撮影して、腰を落ち着ける場所を探しますか。エレベーターが設置されてるならそれがどの辺にあるかも探したいですね。流石に角を持ったままこの広さをうろうろするのは辛いです」


 うむ……二十一層みたいに広い可能性もあるからな。その辺どうなんだろう? さっきの独り言に含めておけばよかったか。


 とりあえずドローンを飛ばして周囲確認。大岩のありそうなところを確認して、そちらへ向かってみる。真っ直ぐ十分ほど歩いて大岩を確認すると、試しに角を持ってみると、何も反応がない。大岩のところで再びドローンを飛ばし更に範囲を拡大させる。地図をつなげて確認してみるが、他には無いようだ。


「うーん? とりあえずミルコを呼んでみるか」


 ミルコ降臨の儀式であるおやつとまだ冷えたコーラを机に並べて、パンパンと手を叩き、呼び出してみる。


「呼んだかい? 」

「呼ばなくても出てこなかったって事は俺達は二番手ってことか? 」

「そうなるね。ちなみに彼らは君らよりほんのすこし前にこっちに到着して、今仮眠の真っ最中だよ」

「先を越されちゃいましたねえ。道中のモンスターが普通に湧いてるので先発客は居ないかと思ってました」

「ま、仕方ないな。たまにはD部隊にも花を持たせないと。そもそもダンジョン攻略がメインのチームなんだ。三十九層もそうだし、ここまで先に来られてるのは当然の結果じゃないかな。ところでエレベーターはもう設置済みなのか? ありそうなところに目星をつけながらうろついてきたんだけど、どっちへ行ったらいいかわからなかったからな。迷ってどうしようもなくなるぐらいなら確認した方がいいかと思ってな」


 ミルコは少し考えるそぶりを見せた後、とりあえずミントタブレットを一粒齧ってから言葉を切り出した。


「実はエレベーター設置はまだなんだよね。設置する前に一休みしたいから仮眠が終わったら考えさせてくれ、と言われてね」

「それで絶賛仮眠中に俺達が到着ということか、大体理解した。決定権は彼らにあるから俺達がどうこう言える問題じゃないな。ちなみにどの辺で仮眠してるんだ? 出来れば情報交換をしておきたい」

「それぐらいなら構わないよ。ここから北東……つまりあっちに向かって海岸線を歩いて行けば二十分ぐらいで見つかると思うね」


 チームTWYSは仮眠をとって体力を回復する事を先に選んだらしいな。二十一層の俺達と同じ選択をしたわけだ。エレベーターの設置場所を決める権利やご褒美をもらう権利も全て彼らにある。しかし、割とタッチの差か。モンスターが湧いていた事を考えると二時間かそのぐらいの、本当にほんのわずかな差だった可能性が高い。おそらく昨日の夜から潜ってたであろうチームTWYSに一日の長があったということになる。


「合流して隣にテント立ててそこで仮眠するか。仮眠と言いつつ熟睡かもしれないし、起こすのも悪い。近くまで行って俺達も居ますよとアピールしておけば向こうがエレベーターの場所を決めた段階で声をかけてくれると願っておこう」


 せっかくだし、とミルコも歩いて付いてくることになった。どうやらエレベーター設置まで随分暇らしい。


 モンスターも居ない砂浜を二人と一人、テクテクと歩いていく。時々ドローンを飛ばしては徐々に地図として認識できる範囲を広げ、この辺にエレベーターを設置するにちょうどいい背景があるポイントを目印に付けながら、二十分ほど歩くと確かに中くらいのテントが二つ用意されていた。どうやら二人ずつでテントを利用しているらしい。


「寝てるだろうから騒がしくしない範囲で夕食にしてこっちも仮眠するか。夕食の匂いに起きてくるかもしれないし、そうじゃなくてもこっちが起きた後で上手く合流出来たらエレベーターの位置を確認する事にしよう」

「お夕飯なんですか? 良い感じにお腹が減ってきたところですが」

「トマトがメインのベーコンチーズパスタ。サラダはさっきの残りを食べつくして、それで終わり。何かリクエストは? 」

「疲れてるので馬肉が欲しい所です。生で良いので生姜醤油でサッパリ行きたいですね」


 それでいこう。先に食べてもらいつつ二人分の馬刺しをササっと切り分けると生姜醤油を上からかけて皿に盛ってお出しする。そしてパスタを食べ始めるが、まだ温かさが残りチーズが固まってないので美味しく頂けている。ソースも水分でベチャベチャになっていないのでいい感じにまとまっている。スーツにこぼさないかどうか慎重になりながらの食事なのでいつも通りがっつくのではなく、優雅に食べることにした。


 ちなみにミルコの分も用意されている。一人分が少なくなってしまったがその分馬肉を食べることでセーフということにした。


「エプロンを持ってくるべきだったな。スーツやワイシャツに跳ねると後処理が大変だ」

「これからは汁物には注意しないといけませんね」

「これも中々美味しいね。似たような食べ物はあったが、やはり調味料の有無とバランスが違うのかな。あっちの世界に比べてよほど美味しく出来ているよ」

「この世界では調味したものを長期保存できる、肉についてくる真空パックみたいなシステムが広く開発されてるからな。料理をほぼ完成させてからよく殺菌消毒されたパッケージに詰め込んで半年とか一年とか持つように工夫がされてるんだ」

「魔法で保存がきくように冷蔵や冷凍をする仕組みはあったけど、殺菌や消毒という概念はかなり薄いというか無かったかな。目に見えないような細かい生物の事についてはこちらの方がよほど研究が進んでいるね」


 中世から近世ぐらいの文明レベル、と考えていいんだろうな。魔法という便利なシステムがあるおかげで化学、科学、医学というものが発展しなかったのだろう。感染症にかかっても魔法でなんとかしてしまう、そういう世界を思いつく。


「逆に向こうからこっちへ来る人が居たら、文明レベルの差に驚くだけじゃ済まないだろうな。何が何だか解らずに放心してしまうかもしれない」

「僕はここから出られないし外の様子を見ることはできないからねえ。実際ここの文明がどのくらいのレベルか、なんてのは大まかには理解しているけど細かいところまで知ろうとしたら君達に聞くぐらいしかないんだけど」

「あ、じゃあ写真見る? スマホに入ってる範囲の外の様子とかなら。電波が通じないけど、撮ってある写真なら見ることが出来るよ」

「それは是非見てみたいね。食事が終わったら見させてもらうよ」


 ダンジョンの中は好き放題できるけどダンジョンから出れない。娯楽が多いこの世界の一般人にとってはかなりの苦痛になるだろうが、ミルコの居た世界の文明レベルなら俺達がただダンジョンに潜ってるだけでも充分娯楽たりえる、ということか。なら外の世界のコンピュータやゲームなんかを見せることは刺激が強すぎるかもしれないな。


 食事を終えた後おやつを食べながらスマホの写真や風景、ダンジョンの外の様子などを映ってる範囲で写真に見せる。ミルコにとってはかなりの刺激になったらしく、外ではこんな風景を見ることが出来るのか、等と興奮してのめり込んでいる。芽生さんのほうがよほどあちこち行っているらしく、ここ最近で訪れた場所なんかの画像を見てはミルコの心を惹き付けているようだ。


 電気の発電の仕組みについては真中長官から直接頭を覗いたのでミルコの頭にはインプットされているだろうが、その電気を使ってどのようなことが出来るのか、までは教えてなかったからな。これも魔結晶発電が実用化できればより安価により多くの人がこれらを使いこなすことが出来るようになると伝える。


「じゃあ真中に伝えた内容はやはり良い方向に世の中を変える仕組みになっていくんだね。ダンジョンマスターとしては鼻が高いよ」

「他の国や他のダンジョンマスターが何人いて何人が探索者に好意的なのかは解らないけど、少なくともミルコとは仲良く出来てて良いと思ってるよ」

「今度是非こういう写真を一杯見せてくれると面白いね」


 旅行のガイドブックとか風景画集とかでいいのかな。そういうのでいいなら何冊か見繕ってこよう。日本の観光写真集だけじゃなく、出来るだけ色んな世界の物が見られるのが良いか。それなりにお値段はしそうだが、ミルコの興味を引けるなら安い買い物だ。


 若干ワイワイと騒いでいたからか、どうやら高橋さん達を起こしてしまったらしい。


「おや安村さん、もしかしてタッチの差でご到着でしたか」


 高橋さんがひょいと顔を見せる。


「騒がしくしてしまってすいません。夕食とったらこっちも仮眠してしまおうと思ったんですが、ミルコとの会話が思ったよりも弾んでしまって」

「疲れてはいますが寝付けなかったので問題ありませんよ。何してるんです? 」

「そうだ、高橋さんのスマホにダンジョンの外の風景って写ってたりしませんか? 機密に引っかからない範囲で」

「私用で旅行したりした分ならいくつかは」


 高橋さんにつつつ……と忍び寄ると耳傍でこっそり話す。


「今ミルコに見せるとポイント稼ぎになりますよ。ダンジョンの外の風景に興味津々らしいです」


 わざわざ耳打ちするだけの意味があったかは解らないが、D部隊としてもダンジョンマスターとの友好度を上げておくのは大事だろう。その為の点数稼ぎのチャンスを譲ることが出来るならこれはお互いにとっても良い話になるはずだ。


「お気遣い感謝します。ちょうどこの間ダンジョン庁本庁に行ったついでにスカイツリーから撮った景色があります」

「それはかなりポイントが高いですね。何処までも続く途切れない街の風景というのは文明の発展度を見せつけるに十分な内容かと」

「早速いくつかピックアップして見せてみますよ。情報どうも」

「それは先にたどり着いた俺からのお祝いということで」


 内緒話を終えると、高橋さんは会話の中へ入っていった。とりあえずこれでヨシ。その間に片付けとテントの設営をしよう。テントも立てたまま二つ放り込んであるのでそれぞれポン。中にエアマットをポン。設営終わり。椅子に座りコーヒーでも入れてゆっくりこの砂浜の景色を楽しもう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「……さん、洋一さん」


 どうやら椅子に座ったまま眠っていたようだ。時計を見ると、どうやらあの後三十分ぐらい盛り上がっていたらしい。


「文明レベル披露会は無事終わった? 」

「ミルコ君も大興奮のまま無事にお菓子も持って帰って行きました」


 芽生さんはそのまま披露会に参加していた模様。付き合いが良いな。そのまま高橋さん達に任せてても良かったのに。


「次は持ち帰ってゆっくり鑑賞できる範囲で何か都合しにこよう。あといつもの机とノートと椅子のセットと、拠点用のテントも持ってこないとっと、まだ体がだるいな」


 ぐっと伸びをするが、まだ睡眠が足りないらしい。物足りなさを感じる。


「椅子に座ったまま寝ると背広に癖がつきますよ」

「そうだな、気を付けておかないと。さて、本格的に寝るか。高橋さんは? 」

「もう一回寝直すそうです。起きるタイミングを合わせられそうですね」


 結果的にタイムスケジュールを合わせることが出来たらしい。中々の拾い物になったな。


「さて、じゃあもう一回横になって寝直すか。四時間で良いかな」

「充分だと思います。その後エレベーターの位置決めをして、高橋さん達はそのまま四十三層をチラ見していくとか」

「じゃあこっちは四十一層でカニの身集めだな。地図も一応完成させておきたいし」

「カニの身、おいくらになるんですかねえ。いつも通り無菌真空パックなら流通に乗せても悪くならない品物としてそこそこの需要は得られると思いますが」


 足の早さを考えると、無菌パック常温保存可能の時点でかなりの安定度を誇る海産物だが、果たして現行のカニと比べて美味しさにどのぐらいの差があるのか、そして味わいがあるのか。まだ食べてないから解らないが、朝食にカニしゃぶでも出して反応を見て、それから判断しても遅くはないな。


「ワイバーンの肉みたいにそもそも存在しない肉、という位置づけじゃないからな。馬肉やカウ肉みたいにそこそこのお値段で終わる可能性のほうが高い。後はポーションか。何がどのくらいの頻度で出るのか、または出ないのか。この辺で階層の美味しさが変わるな」


 なにはともあれ、今日の予定は大幅に前倒しされた状態で達成された。とりあえずスーツを保管庫に放り込んでテントの中に入り、しばし仮眠をとることにしよう。程よい気温でここはキャンプ地には良い所だな。居心地がいい。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] かに……うま……
[一言] > 生姜醤油を上からかけて」 戦争始まっちゃう > ソースも水分で」 シャビシャビソース絶対許さないおじさん > 殺菌や消毒という概念はかなり薄いというか無かったかな」 ドロップ品は魔力…
[気になる点] タブレットを購入して オフラインで出来るシムシティとか 世界中の観光案内、グルメ情報とかを 渡したら ダンジョンに変化がガガガ (*´∀`*) [一言] 経費でおとしてン (´ε` )…
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