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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十一章:進歩する周囲

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734:夏だ、プールだ、

「夏に逆戻りしてしまいましたね」

「そうだな、夏の間に来れたら一息つくのに見た目は良い所だったかもしれないな。そして少なくとも一つ、言える事が有る」

「ここまで来たら四十二層を目指そう? 」

「だな。まずは周辺把握をしたいところだが、ここのモンスターがどういう物かもわからない。索敵して鳥が居て、それに反応するようならドローンは飛ばせない。とりあえずあちこちうろついてみてモンスターが何が居るかのチェックからだな」

「基本ですね。水沿いなんだから海産物とか出てくると良いですね」


 海産物か。そういえば湖の中にも魚とかは居たんだろうか。目に映る範囲では存在しなかったが、もしかしたら居たのかもしれない。しかし、ケルピーの大群を処理してまで調査したいかと言われると難しいだろうな。ゴムボート片手に湖へ入り込んで出てくるケルピーを全部電気処理しながら釣竿を垂れる、というのは難しいだろう。


 とりあえずチョッキを脱ぎ保管庫に入れる。芽生さんも真似して脱ぎ出したので、それも保管庫に収納しておく。少し涼しくなったところで階段周辺を確認する。階段がある大岩からちょっと離れると砂浜になっている。そして視界に映るのは……


「芽生さん、あれ何に見える? 」

「カニですかね。大阪旅行の時にあんなサイズ見た覚えが有ります」


 巨大なカニだった。カニ料理で有名なあの看板を一回り位小さくしたぐらいのサイズだ。もちろんカニとしては充分に大きすぎると言える。索敵に指向性を持たせて確認するが、間違いなくアレはモンスターとしてのカニだ。足が十本あるのでタラバガニではないらしい。


「こうきたかぁ。だとするとドロップも手足だったりカニミソだったりしそうだな」

「随分身が詰まってそうですね。ドロップするまで試すのはまたの機会として、まずは戦闘評価ですかね」

「とりあえずこっちに呼んでみるか。もし来たら前後に挟む形でよろしく。さすがにダンジョンのカニだからと言って正面から縦に襲ってくる可能性は低いと思われる」


 パチンコ玉を飛ばし、カニに命中させる。カニは素早く反応すると、思ったよりは速いスピードでこちらへ近づいてくる。しばらく時間猶予はあるのでその間に雷撃したりしてみるが、そこそこ効いているようで、全力雷撃三発目あたりでうずくまってしまった。やはり水属性モンスターらしく、雷は効果があるようだ。もしかしたら雷撃の熱量で茹であがってしまったのかもしれないな。


 そのまま近づいて雷切で斬ってみる。流石に甲羅にそのまま雷切が通る事はなく、弾かれるわけではないがその分溶断していくかのようにじんわりと沈み込んでいく。


「これは甲羅や手足に当ててるだけ時間の無駄だな。関節を狙おう」


 肩や足の関節を狙って雷切を突きこむとさすがにサクサクと刃が入る。切り離されたところから黒い粒子が漏れ出し、両肩とも落としたところで力尽きて全部が黒い粒子に還った。ドロップは魔結晶だけだった。


「これ、私のウォーターカッターでも斬れますかね」

「関節を狙えばいけるんじゃないかな。物理で突破するのはちょっと難しいかも? 少なくとも胴体部はダメージを与えるのは難しいのが解った」


 カニは雷で茹でれば倒せる。動きはそれなりに速いが追えないほどでは無い。おそらくあの鋏にはさまれたら肉が千切られるほどのダメージを負う事は間違いないだろうが、それ以外の攻撃方法は体当たりと、後どんな攻撃が予想されるだろうか。泡攻撃か? まだまだ蓄積が足りないし、ドロップを色々と試す間は良い暇つぶしになりそうだ。


 その後も海岸にそって進んでいく。海岸の反対側は岩場になっており、さらに中央部にはヤシの木みたいなものが何本か生えている。中央部にもモンスターは居るのだろうか。もしかして海岸では無くて孤島だったりするのだろうか。だとすると中央部に向かうに当たって何かもう一種類モンスターが居そうな気はするが、索敵には引っかからない。おそらく、想定としては海岸をひたすら歩く、というように設計されているのだろう。


 空を見るが、トンビやカモメのようなオブジェクトや影は見当たらない。空中には何も居ないのか? そうすると魚なんかも居ない可能性はあるな。鳥が空を飛んで時々水面に下降するのは水中の魚を捕るためだから、居ないということは魚介類はすべてモンスターということになるだろう。


 しばらく歩くとまたカニが出てきたので、今度は芽生さんにカニの相手をしてもらう。ウォーターカッターでスッパリと両鋏と足の二、三本の関節を貫くと、カニの戦闘能力は噛みつくか逃げるかぐらいしかなくなった。すると泡を吹き始めた。カニが噴き出した泡はかなりの速度が出ている。芽生さんのウォーターカッターぐらいの勢いだ。芽生さんは回避はしているが数発は被弾し、その勢いで後ろに押される。


 次が来るかとお互い身構えてはいたが、どうやら泡攻撃は最後のあがきだったらしい。力なく前に倒れるとそのまま黒い粒子に還っていった。堅さはあるが耐久力はそうでもないってところだろうか。


「この泡結構威力というか打撃力ありますね。ダメージとしてはそこまで強くは無いですが、【魔法耐性】無かったら後ろへ吹き飛ばされていただけでは済まなかったかもしれません」

「泡というより泡の形をした水魔法ってところか。散弾みたいに飛ばしてくるから厄介だな」

「でも最後に吹いてきたって事は死なばもろともってところなんでしょうかね」

「かもしれないな。後数匹探してみるか」


 その後海岸沿いに歩いてみたが、巨大なカニが闊歩している様は中々に見ごたえもあったし手ごたえもあった。四匹ほど同じように戦ってみたが、どうやら泡を吹くのは最後っ屁のようなものであること、基本的にはサササッと近寄ってきて鋏でつかんだり殴ろうとしてくること、当たったら多分痛いだろうこと、それから、ドロップは想像通りだったということが解った。


 カニを倒した跡には、真空パックされたカニの身と同じく真空パックされたカニミソらしき物体、魔結晶があった。拾いに行って確認するがいつもの真空パックでできている。流石にモンスターとしてのカニの大きさではなく、一般的なカニよりも少し大きいか同じぐらいの大きさだ。身はずっしりと重くしかもこのカニ、殻を剥いてくれてある。真空パックのまま鍋に投入して茹でれば美味しく頂けるように配慮がされているようだ。ボリュームも中々ある。


 今回は(仮称)と頭で考えてなかったからか、保管庫にしまい込むとカニの身、とだけ表示されている。魔結晶も同じくカニの魔結晶となっている。カニミソらしき物体はそのままカニミソとなっている。このカニが正式名称が付いたときに全て変換されるのか。何という名前が付くか楽しみだ。念のため撮影もしておいたので、こんなカニがモンスターですということは解るようになっている。


「カニ鍋か、最近食べてないな」

「一応サンプル提出はしないと。階段見つけたら仮眠して、その後何パックか保持してお土産兼サンプルとしてダンジョン庁に提出して、味のほうも確認してもらいましょう」

「少なくとも中身は詰まってるようだからな。味わいがどこまでの物か解らないがその味によっては高級品になるかもしれない」

「極寒のベーリング海まで取りに行かなくていいのは良い事なのか悪い事なのか悩む所ですね」

「是非、ダンジョン庁には苦労して値段の落としどころを探ってもらいたいもんだ」


 このマップにはカニしかいないのか、と言われるとそれは否である。カニを優先的に倒しに行っただけで、もう一種類居た。人のように立ち、鱗に覆われ、左手に槍を持つ。リザードマンだな。こいつは正式名称が決まってもリザードマンのような気がしてきた。


 海岸の物陰からこっそり観察する。どうやら二匹居るらしい。身振り手振りで少し会話を楽しんでいるような、そんな感じだ。奇襲するなら喋っている今の内だろう。念のため撮影もしておく。


「両方雷撃でまず焼いてみる。刃物が通じるかどうかはその後だな」

「タイミング任せます。槍対槍で後れを取りたくないですしね」


 俺のタイミングで走りだし、まずは両方に向けて全力雷撃、ヒット、それなりに有効。プスッと黒い煙が上がる。やはり水生生物には雷が有効だな。流石に槍を手元から落とすという動作はしなかったが、こちらに向くまでにそれなりの時間がかかっている、軽いスタン状態だ。


 その間にグッと距離を縮め、相手が戦闘態勢をとる瞬間に雷切、相手の槍とぶつかる。槍は徐々に雷切に焼かれ始め、最終的に数秒の後に溶断された。この槍も中々良い材質で出来ているようだ。コレクションに欲しいな。


 槍を無効化した後雷切で皮膚を焼く。そのままスルッと、とまではいかないがそれなりに時間をかけて鱗を焼き切っていき、リザードマンを肩口から斬り込む。表面の鱗を切った後はするすると刃が入り、内部から焼かれたリザードマンは黒い粒子に還った。


 ドロップは魔結晶のみ。芽生さんのほうも同じぐらいのタイミングで終わったらしい。どうやら槍勝負は芽生さんのほうに軍配が上がったようだ。芽生さんのほうもドロップは魔結晶のみ。他には何を落とすんだろう。トカゲの皮とか……今更落とされてもあまり人気は無さそう。カメレオンダンジョンリザードの皮で十分な気がする。


「ふむ……熊と違って攻撃が槍しかない分やりやすいと見るべきか、それとも刺されたら一発アウトと考えるべきか」

「どっちにせよ、スノーベアよりも弱いモンスターという認識で良いんじゃないですかね。魔結晶の大きさ、スノーオウルと同じぐらいですし」


 なるほど、魔結晶の大きさで計るという手があったか。早速リザードマン、カニ、スノーオウル、スノーベアと並べてみる。スノーベアだけが一回り大きく、他は同じ大きさだ。


「なるほど、たしかに。ということは、もっと複数人数でリザードマンが出現する可能性もあるって事か」

「最初の階層でまだ数回しか戦闘してないのに二体連れで出てきましたから、その可能性は充分高いですね」

「カニは複数出てきても今のところ問題なし、リザードマンは……手数で押せれば何とかなるかな。他にモンスターは居ないんだろうか。砂浜沿いじゃない方面で」

「探知する範囲では居ないですね。おそらく、砂浜方面から出てくるモンスターとして設計されてるんじゃないでしょうか。森マップの逆みたいな感じで、敵は波の向こう側からやってくると」


 森マップの逆、か。とすれば砂浜から離れればここはそこそこ安全ということになる。もしかしたら砂浜から上陸したリザードマンが内部まで入り込んでいる可能性もある。油断は禁物だな。


 その後は砂浜に沿って歩き続け、取れたてのカニの身とカニミソを蓄えつつ、時々現れるリザードマンを全力雷撃で弱らせてから進む。雷のスタンが入るうちはモンスターは割とイージーゲームである。他のパーティーだと苦労するんだろうな……


 四十分ほどの間にカニを二十体、リザードマンを八体ほどたおし、カニミソは三つになった。十五%ぐらいの確率か。カニの身は六つあるので確率的には三十パーセントといったところ。


 緩やかな曲線を描いてぐるっと反時計周りに回る形になった砂浜は、途中の大岩に階段があることで四十二層への階段も砂浜から近い位置にある事が解った。やはりここは砂浜を歩いていくのが正解なんだな。少々足場に不満はあるものの、泥濘地や水中に比べたらマシだな。


「さて、モンスター密度やドロップ品の買い取り金額の予想はともかくとして、ここで一旦休憩かな。おなかも空いたからご飯食べたいし、ちょうど階段に着いたし」

「高橋さん達は先にたどり着いているんでしょうか? もしそうならエレベーターがどこかに設置されてるはずだとは思いますが」

「それも含めて確認しないとな。たどり着いてミルコが出てきたら俺達が先。お菓子を出すまで出てこなかったら先に高橋さん達が着いてた。そう言う区別をつけてもらおう」


 声に出して呼んでおくことで、ミルコが確実に聞いているであろうことを考え、出てこいとは言わないのでそういう事にしておいてくれ、と暗に伝えておく。


「とりあえず、ここまでの地形をざっと地図にしたが、どのくらいの広さがあるかまでは解らない。鳥も居ないようだしドローンを飛ばして周辺確認しておこう」


 ドローンを飛ばして風景を確認すると一つの事が解った。多分ここ、島だわ。緩やかに曲がる海岸線は見える範囲から推測するに、半径四キロメートルほどの島で出来ているらしい。今見える範囲で四分円を描いている。おそらく、四十層への階段はここからギリギリ見えない位置に当たるんだろう。向こうでもドローン飛ばしておけばよかったな。


 仮眠したら四十層の地図を作るか。砂浜の向こう側には何も見えないので、作ってないかもしくはいつも通り上下左右でループしているんだろう。これで湖という可能性はゼロに近くなり、我々はこのカニうま島に取り残された哀れな探索者ということになるんだな。まだ勇気は出ないが、後で水をなめてみよう。しょっぱいか普通か、試してみたいところだ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 同サイズの人型トカゲはなんか嫌だな、まだゴブリンの方が忌避感無さそう。 カニは中華屋行き?
[一言] カニのドロップいいですねー! 今後はカニ料理もレパートリー仕入れておきませんとなあ
[良い点] 蟹!ドロップは殻付きもお願いしたいところ。 殻付きで焼きガニ〜〜〜 お酒欲しーーーーい 焼き台で炙りながら生の身を丼にドン。 醤油と山葵持ち込んで蟹パしなきゃ。
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