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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十一章:進歩する周囲

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733/1391

733:目指せ四十層 3/3

 林を迂回して北側に回り込み、そのまま真っ直ぐ北へ進む。目標物はもう見えているので迷う事はなく、手前にぽつぽつと存在する雪まんじゅうの数を数えながら順番に倒していく。結局三匹セットは出てこなかったな。出るとしたら次の階層か。


 三十九層を歩き終えて階段の横に着いたところで小休止。ここから先はもうちょっとばかりモンスター密度が増えるだろう。どんなマップであるかちょっと楽しみではある。高密度低難易度のマップか、それともひたすら広いのか。小西ダンジョンの特徴からして、広い可能性は割と低い。ここまでの広さで言えば三十八層が一番広いという印象を受ける。


 無限に生えている印象すらあった木は、実は非常に短い間隔でループしている可能性もあるが、それを確かめるのは今日ではないだろう。いつか気が向いた時か、俺達より後から潜り込むパーティーが木の本数を数える作業に従事してくれる事になるだろう。


 芽生さんはカロリーバーを食べながら全身を解している。俺と目が合うと、腕まくりをする仕草で問題ないと合図を送ってきた。あっちには余力がかなりあるらしい。これなら四十層も安心して回れそうだな。


 こっちも体のあちこちをチェックして力を入れたり抜いたりして、問題ない事を確かめる。よし、行けるな。小休止を終えて四十層の階段を下りる。階段を下りてみることが出来た四十層の光景は三十七層に近いものがあった。


 周辺の雪まんじゅうを処理した後、近くの木に停まっているであろうスノーオウルを剪定してドローンが攻撃される確率を限りなくゼロにする。その後でドローンを飛ばし周囲を確認だ。しっかり周囲を綺麗にしておかないと、前のワイバーンの時みたいにドローンが撃墜されてしまう恐れがある。同じことを二回繰り返すのは成長が無いからな。下手に動かさず、真上に飛ばして撮影するだけの短時間飛行で済ませる。


 結果として、南東方向に木の密度の濃い場所がある事が解った。後は西方向に点々と木が配置されている。北には階段かどうかは解らないが岩が見えている。モンスターは少なめだが密集している。南東から南西方向にかけては雪まんじゅうが並んでいるが、見えてる範囲には何もない模様。だとすると行くべきは北か西の二択ということになるな。芽生さんと二人撮った映像をにらみつけてどっちにいこう? と悩む。


「とりあえず岩へ行って階段かどうかを確かめるのが先、ですかね。岩だったらこの階層は通り抜けるだけで済む割と気楽な階層ということになりますねえ。もし岩がブラフでも、また岩を伝っていったら何か見つかるかもしれませんし」

「クマが三匹来そうな雰囲気ではあるが、一応対応は考えてあるし何とかなりそうだ。でも出来るだけ楽が出来るように一匹ずつ丁寧に釣りだすことにしよう」


 北へ行こうらんららん。ここには冬景色しかないが夢踊る北へ落ち着いて行動を開始する。道中に木は生えていないが、スノーベアが点々としており、そこそこの回数の戦闘は避けられない様子。仕方がないのである一定距離に近づいたら一匹ずつ釣りだし、二匹来るなら二匹まとめて、三匹来た場合は一匹に全力極太雷撃を加えて近寄ってこないようにしてから一対一の形へもっていく。


 そのままうまくスノーベアを倒しつつ二十分ほど。毎分一匹ほどのスピードで戦い続け、岩に近づいたが残念ながらただの岩だった。周囲に木やスノーオウルが居ないのを確認すると再びドローンで撮影。


「次は何か写ってくれるといいんだけどね」

「まあいきなり当たりってのはそうそう簡単に来ない物ですよ」


 周囲を探索した結果、更に北と北東方向に岩が見つかった。北方向へは真っ直ぐ障害物は何もないが、北東方向へ向かうには道中に数本の木が見える。二分の一だが、片方がだめならもう片方へ向かえばいい。時間はまだあるので落ち着いて探索をしていこう。ここまでの地図をハッキリとさせて、それからどっちへ行くかを相談する。


「さて、芽生さん任せた」

「えー、私の勘ですか。じゃあ北東方向へ。木も数本見当たりますし、熊に飽きることもなさそうなので」


 芽生さんの気まぐれ意見を採用して北東へ進む。進行方向に遠回りしないと避けられない範囲に三つの小山。どれかを雷撃したら全部が襲ってきそうな雰囲気。スノーベアはやはり三体同時に来ることもあるな。二人だからという理由もあるが、三体は手に余る。仕方なく、三体同時に相手する時のパターンを試してみることにした。


 一番手前の山を雷撃して呼び寄せると、遅れて後ろの二つものっそりと反応し、こちらへ向かってくる。先頭を突き進んでくる雷撃したスノーベアに極太雷撃を一定時間加えて、相手の動きが鈍るまで打ち続ける。こちらへ進む気配が無くなったところで、最初のスノーベアを他の二体が追い抜いてくる。ここまで弱らせれば充分かな。


 残りのスノーベアと格闘戦を始める。スノーベアは勢いそのままに突っ込んでくる。ここで下手に前へ出たりその場でしゃがむと顔に向かって攻撃を受けて顔面が大変になる可能性が高いので一歩後ろへ下がって全力雷撃を加えて、少し怯んだところにこちらから雷切で右前脚を切り飛ばす。そういえば熊の手は高級食材なのにこいつらは落とさないな。向こうの文明では熊は蜂蜜を取らないのだろうか。


 ん、今余計なことを考えたということはこの後楽に倒せるということだ。よし、心に余裕ができたな。落ち着いてスノーベアの動きを見て、そこから繰り出される動作を予想してその予想した範囲から体を逸らせる。そしてそのまま流れるように反撃の雷切を……前脚に決めた。後は首だ、首を落とせば大抵のモンスターは死ぬ。


 両前脚を無くして顔から地面に突っ伏しているスノーベアを今楽にしてやるからなと雷切で首を切り落とし、黒い粒子に還す。芽生さんのほうは問題なさそうだ。ならば先に痺れさせたスノーベアがそろそろ再起動するころだ、その前にカタをつけておこう。


 結局三体同時に襲ってきても何とか手順を決めることでほぼ無力化出来る事が解った。スノーオウルは出力の強い投網で、スノーベアは極太雷撃でそれぞれこちらがダメージを受けることなく処理できている。これだけダメージを負わない回避専念タイプのパーティーだと、【物理耐性】の意味は本当にあるのだろうかと今更ながら疑問に思う。


 持ってる分には問題ないだろう。今度もっと前の階層で試しにボコボコにされてみることにしよう。二十層あたりがベターかな。あの辺でダメージを負うかどうか試してみて、ダメージが無かったら効果が出ていると証明できる。芽生さんには怒られそうだが、自分の実力というか戦力評価をちゃんとするためにも必要な行動だと思う。D部隊で【物理耐性】で腕を試し折りしていたああいう感じで一つやってみるか。


 その後もスノーベアとスノーオウルを交互とまでは行かないものの順番に倒しながら更に三十分ほど。歩き続け、北東方向へたどり着いた。


 北東方向の岩は階段だった。四十層を一回で渡り切ることに成功したようだ。テンションが上がってるところで落ち着かせるためのとりあえず小休止。椅子を出して座り込み、ここまで寒い中歩き続けた足をいたわる。ココアも淹れて割と本格的にゆっくりする。


「さあ、次はどんなマップが出迎えてくれるんでしょうか。極寒じゃない事を祈ります」

「灼熱かもしれん。次はセーフエリアを含んだマップになるから、砂だらけの砂漠とかそういうのは勘弁願いたいな」

「ちょうどいい気候が良いですね。そう言う意味では二十八層と三十五層はちょっと滞留するにはあまり向かない階層かもしれません」

「十四層もそれなりに寒気はあったからな。やはり七層か二十一層ぐらいの気候が良いな」


 索敵でリポップしないように心がけているし、芽生さんとは出来るだけ別の方向を向いていてモンスターがリポップしないように目を見張らせている。流石に手慣れたものだ。ココアが入ったのでゆっくりと飲み、体を温まらせる。やはり冷え込んでいたのか、胃袋からじわっと温かさが全身に巡るのを感じる。


「しかし……遠くまで来たな」

「そうですね。エレベーターが無かったら私は大学の講義の都合でここまで深く潜ることは難しかったでしょうからここまで来れないでしょう。その場合は洋一さん一人でD部隊に混ざって潜っていたかもしれませんね」

「最初から保管庫の事をダンジョン庁に公表してたらそうなってた可能性は高いが、そうなると俺もあのマッチョたちの一員として腹筋六つに割って上腕二頭筋を見せびらかせる集団の一人になっていたかもしれんな」


 そうなった時の自分を想像してみる。四十そこそこでマッチョ。充分三十代でも通りそうな引き締まった身体とほのかにする揚げ物の香り。ワセリン塗ってテカテカにとまではいかないものの、D部隊の人たちと上半身裸になって共にポージングを決める俺。そう言う路線もあったかもしれないな。


「そこまでマッチョなのはちょっと。今のぐらいでいいですよ、程よく枯れ始めているってあたりが」

「そうか、ならこのまま大人しく年を重ねさせてもらおう。今後若返りのポーションとか出たらどうする? 」

「そうですね。内臓から何からがすべて若返るのか、若返ったように見えるのか、純粋に寿命が延びるのかにもよりますが、衰えを感じ始めた時に飲めばいいんじゃないですかね」


 衰えを感じ始めたら、養命酒みたいなものか。もっともそんなポーションが出るようになった時点で一本いくらになっているかは考えるだけでも恐ろしいし、その一本に何億でも出す人がいるだろうことは想像は難しくない。ギルドに卸さず直接お届けするほうが明らかに収入になるだろうし、そういうお得意様を見つけておくことも自分の懐を温めるには大事だろう。そこまでの事をするかどうかと言われれば、その頃のダンジョン事情がどう変わっているかにもよる、としか言えないな。


 もっとBランク探索者が増えれば変わっていくことに不思議はないし、そうなればもっとたくさんの探索者が二十二層以降に潜り始め、素材の希少価値は減少して徐々に相場が下がっていく事だろう。今の価格はほとんどが御祝儀価格だ。もしかしたらものすごく安い価格に転じる可能性がある、たとえばスノーオウルの羽根は代表格だろう。これこそ今売っておかないと後で数百万単位で損をする品物である可能性が高い。


 素材開発は安くなってから大量生産、という流れになるだろうし、好き好んで百万以上するような睡眠製品を好んで買い求める客は希少中の希少だろう。今後一年ぐらいかけて百グラム三万円ぐらいまで落ち着く可能性が高い。それを見越して考えれば今のうちに売っておいて後で集め直すのも手だ。取ろうと思えば頑張れば一日で二キロほどはとれるのだから、あまり在庫にこだわる必要はない。追加で材料を求められた時に取りに行けばいいだろう。


「うん、やっぱりスノーオウルの羽根は今回二キログラム分査定に出そう。ちょっと考えてみたが今より値上がりする可能性が非常に低い。高く売れる内に売ってしまおう」

「解りました。お任せします。相場観が無い訳では無いですが、おそらく次の価格改定までは現状価格でしょうし、取りに行くならいつでも取りに行けるし、焦って大量に仕入れる予定も無い、と考えてるところでしょうから」


 理解の早い相棒で助かる。ココアを飲みきり温まったところで椅子から立ち上がり、再度索敵、モンスターが居ない事を確認すると軽く体をほぐす。芽生さんもちょうど飲み切ったのか、二人立ち上がって軽く体のあちこちの動きのチェックとスーツの調子等を整え、椅子を片付けると階段を下り始める。


 寒い階層とはここでオサラバ出来ると良いんだが、と思いつつ階段を下り、ある境界線を越えると一気に室温が上がり始めた。冷えた体の表面が一気に温かくなるのを通り越して少し暑くなる。どうやら寒いマップ二連続というのは回避できたようだ。だが、かなりの暑さだ。周囲の注意をして安全が確認出来たらチョッキは脱ごう。


 そのまま階段を下り切る。下りた先は砂浜っぽい。砂浜だ。海沿いっぽい情景なのは確かだ。音を聞くと波の揺らぎが聞こえてくる。どうやら海岸の作りのようだ。護岸ブロックがあるわけでもなく、固められた土手があるわけでもなく。ヤシの木っぽい謎の木と階段の横に見える岩石と砂浜。岩石が砂浜にあるって事は、ここまでは波が来ず、手前で止まっているから浸食されていないのだろう。


 とにかく、四十一層から先は海沿い、もしくは湖沿いということで間違いは無さそうだ。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 逆に金持ちはそういった寝具など生活用品に関しては制限なしでかけてそうだからこういった寝具意外とバカ売れしそうな気しかしない 今でも予約待ちというのはそういうことじゃないかなw
[一言] これは……「水上歩行」スキル必須だったりしたら大変だな
[一言] あれですね。憧れの水着回(階?)が… マッチョダンディ…ツヤツヤ…
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