1508:Cランク試験の結果
朝です。昨日は午後からあまりにもやることがないので制服に着替え、半日職場体験としてバックヤードのドロップ品整理を手伝いました。
普段自分たちがベチャッと査定カウンターに放り投げていたものが、綺麗に整理され重量や枚数、個数ごとに整理され、コンテナごとに重さや数とユニークIDを持たせたバーコードでかなり機械化された業務の中で、ひたすら出荷用トラックの前で荷物の上げ下げを行っていました。
中々良い体験ができたと思いますし、今後もドロップ品は大切に扱っていこうという気分になりました。やはり丁寧は大事ですね。
さて、今日はCランク試験の結果がみんなと共に帰ってくる日です。途中で困って連絡が入るということもなかったので、よほど試験に集中しているか、それとも順調に行っているかのどちらかでしょう。便りがないのは元気の証拠とも言いますし、本人たちの口からしっかりと聞けることを楽しみにしておきましょうかねえ。
さて、今日の朝食は洋食です。昨日は和食の美味しい店でしっかりと味わって一日和食を堪能しましたので、打って変わって洋食です。つまり、いつものトーストとバター、それとゆで卵にサラダに、最近はまり始めたフルーツとオレンジジュースで今日も綺麗な芽生ちゃんを維持していきましょう。
腹八分まで朝食を食べ終わり、ビタミンもちゃんと摂取して一層磨きをかけた私ですが、今日は一日何をしていればいいでしょうかねえ。やることは全部やりましたし、そろそろリヤカーも乾いているでしょうから、リヤカーが完成してるかどうか確認して、ペンキが乾いていたら早速六十三層辺りをうろうろすることにしましょうか。
何もせずボーっとしているよりは働いている感じを出せるような気がします。今日も目標は一億ですかね。小西ダンジョンに通ってる時に比べたら微々たるものですがそれでも何もせずにしているよりは社会に貢献している気がします。さて……
メイク、ヨシ! 今日はいつもよりノリが良かったです!
スマホ、ヨシ! 充電もきっちり! バッテリーの充電もヨシ!
スーツ、ヨシ!
お財布、ヨシ! 中身もヨシ!
お弁当、ナシ! 今日も食堂で注文! 大盛!
コップ、ヨシ!
装備、ナシ! 一式更衣室に置いてある!
指さし確認は大事です。今日も頑張っていきましょう。
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出勤して更衣室で装備一式をそろえてくると、探索課に入ってマグネットをいきなりダンジョンに移動させます。今日も世良さん達はいつも通りゴブリン退治としゃれこむはずなので、待っていることにしますか。本当なら一分でも早くエレベーター待ちの列に並びたいところですが、一応監督者という立場であるし、誰も居ないというのもそれはそれで問題です。
高野君が出勤してきたので役割を交代しても良いんですが……まあ、せっかくだしみんなが来るのを待ってからでもいいでしょう。でないとここに来た意味がありませんからね。
世良さん達Eランクパーティー組が出勤してきたのを確認すると、せっかくなので一言喋ってから自分の探索に行きましょう。
「えー、阿南さん達は七層で宿泊、多分九層に行っています。今泉君達はCランク試験中。無線封鎖をするような試験ではないはずですが、連絡がないところを見ると順調だと考えていいでしょう。世良さん達はいつも通りソードゴブリン相手に頑張ってきてください。私はちょうどやることがないので六十三層で一稼ぎしてきます」
「質問でーす。文月さんは六十三層まで潜って一回いくらぐらい稼いでくるんですか? 」
世良さんが茶化すように聞くので、本当のところを素直に白状しておく。あくまで参考価格なので気にはしないでもらっておこう。指を一本立てて皆の前に出す。
「このぐらいですね」
「一億ですか。毎日潜れば三百億を越えますね」
「地元に戻って毎日潜れば二千五百億は堅いですね。もっとも、次の価格改定で値下がりするのが解ってますから素直にその価格で稼ぎ続けるのは無理だとは思いますけどね」
二千五百……億? という感じでどよめく。そういえば洋一さんは普段通りに潜っていたとすれば私のいない間にざっくり五百億は稼いでいる感じになっているはずです。次の予定納税が途方もない金額になってそうですねえ。
「まあ、上を見ればまだまだ稼げる部署であり、稼ぐ算段をしてくれた真中長官に感謝ということで。じゃあ、今日もご安全に」
ご安全にを言い合い、ダンジョンへ潜る。高野君は四人が固まってパーティーで行動する間、自分一人では四層でどのぐらい稼げるんだろうか? というのを確かめたいらしく、一緒に四層へは行くがその後は別行動らしいです。
六人とも弁当大盛を注文して、私は乾いていた新しいリヤカーを引いてエレベーター待ちの列へ。高野君達は階段でそれぞれの場所に赴きました。しかし、私のほうが行く先はよっぽど深いのに高野君達の四層よりも先に現地にたどり着くのはなんだか納得いかないかもしれませんね。
さて、今日一日ストレス解消と、最近食道楽が続いている体をシェイプアップするためにしっかりと動きましょう。ちょっと早めに上がって今泉君達を待つ準備もしたほうがいいかもしれませんしね。
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午後四時ぐらいにダンジョンから出て、少し早めに戻ることにしました。今日はポーションが都合よく二本落ちてくれたので、時間の早さのわりに一億は確実に稼げているでしょう。
このダンジョンもその内月面マップにたどり着き、高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョン産の若返りのポーションが落ち始めるんだと思うと感慨深いものがあります。是非とも一杯利用者が増えてくれると嬉しいですね。
そこまで潜ってくる根性のある探索者がどれだけいるのかにもよりますが、深く潜れば潜るほどもうかるのがわかっている以上、お金の魅力に取りつかれて深くを目指す探索者は少なくないでしょうね。
俺は毎日これだけ稼げれば後は充分だからのんびり人生を生きるぜ、という人が居ても不思議はないですが、同じ労力でより高い収入が得られるなら、そっちに飛びつくはずです。今後の探索者の動きにも注意しながら行きましょう。
一層にたどり着き、新しいリヤカーを査定カウンターで荷物を預けてから返すと、自分の順番が来るまでしばし待ち、それから査定の結果を待ちます。五分ほどで結果が帰ってきました。やはり早帰りだと順番待ちも短くて済みますね。
査定の結果、一億千二百五十八万千円の収入でした。ここで荷物を六十三層に置きに行ったりしながら探索するならこれが一番効率がいい……重いドロップ品をその場放置しないならですが、これが限界、というところでしょう。やはり保管庫やマジックバッグの有無が関係してくるところになりましたね。
マジックバッグ……宝箱からの出現に期待されていますが、本当に出るんでしょうか。一度洋一さんとも情報を共有する必要がありそうですね。
さて、探索課に戻ってみんなの帰りを待ちますか。食堂で人数分の缶のブラックコーヒーを買うと、それぞれの机に置いて私だけ先に乾杯しつつ帰ってくるのを待ちます。
最初に帰ってきたのは高野君達でした。みんなで急いで帰ってきて一言「結果は!? 」だったのは少し苦笑いしてしまいました。どうやら他のみんなもCランク試験の結果が気になるようです。
「まだ帰ってきてませんよ。私も一足先に帰ってきて、結果を一番に聞く子になりたかったのですがさすがに時間がかかってるようですね」
「でも一階で西さんの姿をチラッと見たので、帰ってきてはいるようですよ。流石にまだ試験中だと思って声はかけませんでしたが」
「じゃあもうちょっとで帰ってきますね。じっと待ちましょう」
その間にコーヒーをみんな飲み始める。今日は私のおごりですからと伝えると一斉に手を付け始めた。どうやら急いで帰ってきて喉が渇いていたらしく、すぐにみんな飲み干してしまいました。
次に帰ってきたのが阿南さん達。みんな口をそろえて「結果は!? 」だったのはもう面白くて吹き出してしまいました。
「今一階にいるそうですよ。手続きの最中だと思いますから、多分合格してると思います。どっちにしろ十一層まで潜った実績で探索者証は黄色くなっているでしょうから、落ちた際でも再発行手続きをしなきゃいけないのは同じですが……まあ、大丈夫でしょう」
「不安になることを言わないでほしいわね。まあ、文月さんが大丈夫だというなら大丈夫なのかもしれないけど」
阿南さんが自分のことのように心配しているのはちょっと驚き……というよりどっちかというと新鮮さのほうが先に来ますね。ここまで人の心配が出来る人だという方向性でです。もう少しさらっとした人だと思っていたのですが、意外ですね。
そして、本日の主役である今泉君達が帰ってきました。四人無言でちょっとうつむきつつ、まるで落ちてきたかのような様子です。まさかとは思いますが落ちてないですよね?
「戻りました……」
「おかえりなさい、結果はどうでしたか? 」
阿南さんが代表して質問する。
「それが……無事合格しましたが……」
「が? 」
「なんかあっけなくて合格した実感がないんですよ」
全員Cランクの探索者証を見せつけはしているものの、何か浮かない顔をしている。
「あっけなかったというのは? 」
「十一層まで行くかもしれない、という話だったんですが、十層で一周回ったあと戻って仮眠をとって、その後十一層へ行って帰ってきました。オークともしっかり戦って帰ってきたのですが……」
「ですが? 」
「せっかくのオークのドロップであるオーク肉、全部試験監督者が持って帰っちゃったんですよ。せっかくの最初のドロップ肉は是非食べたかったところなんですが、それがかなわなかったのが残念で仕方ないんです」
あー、一定数監督者報酬で集めるだけ集めて帰ってきた、というパターンですか。それを思えば結衣さんは自分たちの分まで持ち帰らせてくれただけ有情、ということだったんでしょうねえ。しかし、次に十一層に潜る時にはオーク肉が出るまで粘ってみんなで食べられるようにしておくのも忘れないようにしなければなりませんね。
「とりあえず、おめでとうございます。四人は無事にCランク達成ということで」
ぱちぱち……と拍手を始めると、全員がそれに続く。四人ともこれでようやくCランクの実感が湧いたのか、だんだん明るい表情に戻ってきた。
「では、そんな四人に月曜日に特別クエスト発行です。一層から十五層まで一気に駆け下りて、ゴブリンキングを倒しに行きましょう。それが私から出題する最後の試験です。勿論私も同行します。それが終われば私は胸を張って探索者を育成しましたと真中長官にも報告できますし、そこまで行けたならば当面移動や戦闘に関して困ることはないはずです。探索者としても一人前……と呼ぶにはまだ早いですが、半人前以上の実力は確実にあると算定されるのがCランク試験ですから、そこは胸を張っていいと思います。お疲れ様でした」
四人をねぎらって飲みにでも行くべきなんでしょうかね。それとも、見えない疲れをしっかり取らせるために無理に連れまわさずに大人しく休ませるべきなんでしょうか。睡眠もダンジョン内の仮眠では不十分だった可能性もありますし、お祝いはゴブリンキングを倒してから私の送別会もまとめてやってもらうってことでも良いですし、急ぎでやる必要はないですね。
「じゃあ、みんなそれぞれ疲れているでしょうから土日はゆっくり休んでください。月曜日は二日がかりでダンジョンに潜るぐらいのつもりでいてください。十四層に宿泊施設を持ち込むかどうかですが……どうしましょうかね? 十四層でも休憩はする予定ですが、ゴブリンキングを討伐さえしてしまえば不要になるでしょうからなしでいいですかね? 」
「その辺は欲しくなったらそれぞれ導入する、で良いんじゃないかしら。十四層を拠点にしてしばらくはオークと戦うなりスケルトンと戦うなり、いきなりそのまま十七層まで向かえ、なんて言わないでしょうから大丈夫だと思うわよ」
それもそうですねえ。じゃあ今回は口出しする必要はありませんね。
「じゃあ、今週は解散ということで皆お疲れ様でした。コーヒー飲んだら随時解散ということでよろしくお願いします。私も今日は早めに帰りますので失礼します」
さて、帰りますか。私も長時間歩くだけの準備をそれなりにしておく必要があります。カロリーバーと味付きの水分だけは持ち込まないといけませんしね。流石に十五層まで味なしの自分の水魔法だけでのどを潤すのは文字通り味気がないです。なにか仕入れておきましょう。
作者からのお願い
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
後毎度の誤字修正、感謝しております。





