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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十四章:芽生ちゃん、頑張ってる!

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1504:二十一層の様子

 二十層を階段に向かって歩き出す。オブジェクト間を移動するため、思ったよりは戦闘回数は多かった。どうやらこの時間に二十層から二十一層まで歩き抜ける探索者は他にいないらしく、みんなオブジェクトを中心にして探索をしているため、オブジェクトとオブジェクトの間の離れた空間に湧いているモンスターはこちらで対応することになった。


 ダンジョンハイエナについては基本的に私がまとめて対応しているので五匹居たら私が四匹倒して残る一匹を高野君に対応してもらっている。流石に二対一にはまだ慣れてるとは言えない状態なので私がかなり多めに対処しているが、実際にここで戦闘をする際には人数が居るはずなので、一対一で確実に戦う方法を身に付けてもらう。


「今更ながら悪いね、多数を相手してもらって」


「二十一層に入ったら食事する分今のうちに動いておかないといけませんからね。高野君は一対一で確実に勝てる道筋に慣れておいてください。おそらく次に来る時は他のパーティー……多分今泉君達の先導としてついてくることになるでしょうから、その際にへっぴり腰で戦っていては笑われますよ」


「そうだね、そうならないよう経験を積んでおくことにするよ。どうやら今の時間帯はそこそこ戦わせてもらえるみたいだし、その間にモンスターにも慣れておかないと」


 やる気がみなぎってるのは充分伝わったので、それだけでまあヨシとしておきましょう。そのまま一つ目のオブジェクトまで進み、二つ目のオブジェクトへ移動していきます。すれ違いになった探索者もいますが、彼らも十九層へ行くのでしょう。上から戻ってきて一階層移動した方がお得だと感じるということは、この先はさらに人口密度が高いのでしょうね。


 予想通り、次のオブジェクトへ行く間は探索者がいい感じに自分のスペースを確保し合っていて、こっちが新しく入り込むような余地は無さそうでした。


「混んでますねえ。この時間で夜間狩りでこの混み様なら、普段はもっと稼げないのかもしれません。稼げる場所を探すしかなさそうですねえ」


「ここは通り道ですしね。通り道から離れればそれなりに稼げる場所もあるんでしょうが、それは俺達が実際にここに居を構えるようになってから考える必要が出てくるでしょう。場合によっては十九層で探索をするのをメインにしていく、という流れになるかもしれませんね」


 予想されたほど混んではいないのが、月曜の夜間だからというのも理由になるでしょうが、やはりこの時間にここで探索をするのは難しいだろう、と考えるほうが良さそうですね。もしくはタイミングを見計らって花見の場所取りやオンラインゲームの狩場主張のように自分のポジションをうまいタイミングで拾いに行くのが大事になるでしょう。


 そのまま戦闘らしい戦闘もそれほどなしに次のオブジェクトにたどり着き、そして視界の先に階段が見えてきた。階段の反対側も確認して、階段を中心にして探索者が散らばっているかどうかを確認するのも大事でしょうねえ。


 階段まで歩いていった後、【索敵】と目視で周囲を観察するが、階段の周囲も含めて完全に散らばっている様子が見えたので、通り道や一部分だけが混んでいるという様子ではなく、自分のプライベートスペースとも呼ばれる範囲の中で探索をする場合は問題はない、という感じでしょう。


 二十一層への階段を下りて、ようやく目的地に到着です。やはりというかなんというべきか、こっちの二十一層も広かったですね。地図目一杯に探索者のテントや目隠しのカーテンが敷かれています。


 おそらくは各々の探索者が好き勝手に工具や大工道具、材料を持ち込んでは改装をしているため、一見するとスラムのようにも見えますがそれぞれのパーティーがプライベートスペースを作り上げてそこに住居みたいなものを構えている様子でした。ここは小西ダンジョンと同じですねえ。


 とりあえず階段に座ってご飯の時間にしましょうかねえ。今はテントも何も持ち込んでいないですし、各住居の空室がどこにあるかもわかっていません。行動を起こすのはまだ早い段階にあるでしょう。


 食事をしながらコップに水を汲んで飲んでいると、おじさん探索者が話しかけてきました。


「お嬢さん、ダンジョン庁の人だな。ついでに言えば、今水を出したってことは【水魔法】が使えるんだよな? ちょっと頼みたいことがあるんだが」


 そういうと、空っぽのタンクをこっちに見せてきた。


「こいつに水を満載してもらえないだろうか。勿論金は言い値で……とは言いたいが、ドロップ品で払えるならそれが一番ありがたいかな。今日は【水魔法】が使える奴が体調を崩して探索に来られなかったんだ。あてにしていた分喉が渇いたときにちょっと怖くてさ。頼めないだろうか? 」


 水ですか……たしかに水分不足で渇きを覚えながら探索するのは厳しいでしょうし、探索者は助け合いです。水の補充それ自体は問題はないですがそうですねえ……少し考えた後、対案を出します。


「では、報酬は情報でもらいます。普段夜間以外も潜ってるなら、二十層十九層あたりの混み具合について教えてもらえますか? 満足できるだけの情報がいただけたらその分だけお水をお分けしますよ」


「なるほど、情報の対価ってわけか。これは相当良い情報を出さないといけなさそうだな。俺の解る範囲でならこの二十一層の居住情報も含めて提供しよう」


 そして、向こう側から優先的に教えてもらった情報によると、夜間や昼間にもかかわらず、二十層は常に満員状態なので探索をするなら十九層でやるほうがまだお金になるということ。


 特に二十層の昼間は完全にキャパオーバー状態であり、歩いて二十層で狩場を見つけるよりは十九層で探索をしたほうがまだマシであるということ。


 二十一層の居住状態は階段から少し離れれば空いたスペースが相当数あるので新規で入り込みに来るにもキャパシティは充分にあること。今の所の居住率は五十パーセントほどであり、まだまだ住むには余裕があるということ。


 Bランクに上がった後でも、【索敵】を手に入れるためにわざわざ十九層二十層で戦っている探索者パーティーもいるため、慢性的にどこのダンジョンでも同じように混雑しているのではないか、ということ。その為、【索敵】ドロップに関しては求められそうにないということ。


 ここ一週間ほど引き続けて潜っているが、【索敵】ドロップの話は回ってきていないのでもしかしたら十八層辺りまで戻ったほうがかえって収入になる可能性すらでてくるんじゃないかということ。


 これらの情報で満足した、ということで【水魔法】で目一杯にタンクに補充してあげると、よろこんでおじさんは去っていきました。自分で実際に昼間に探索のためにここまで来て、混雑具合を見る必要がなくなった分だけ儲けものです。手持ちタンク一杯と言わず、ドラム缶一杯の水を提供してもいいぐらいの情報を得ることが出来ました。


「交渉に慣れてますね。流石に水と引き換えに一回昼間に来るだけの手間を省けるとは思いませんでしたよ」


「まあ、交渉ごとは隣でさんざん見てきたものではありますからね。このぐらいが出来なければあの人の相棒は務まりませんよ。これまでもダンジョン庁から注文を付けられては色々と知恵をひねり出して躱したり自分に有用なようにフラフラとしていつつも、ダンジョン庁にはちゃんと求められているものを提供し続けたぐらいですから」


「相棒との惚気話ですか、いいですね、ラブラブですね。そういう彼女がダンジョンでドロップしてくれると嬉しいんですけど」


 食事をしながら高野君がぼやいている。たしかに、こう穴倉暮らしが続くと彼女を見つけるのは難しいかもしれません。


「探索者の強みは収入ですから、高野君ならそれ目当てで女の子はいっぱい寄ってくるような気がしますけどね。もう少しすればCランク試験も始まって、探索課からも自由にゴブリンキングの角を使って十五層以降に潜れる探索者も増えてきます。その中で探索をすれば……私の体験の概算だと、丸一日探索を行って一日百万ぐらいは稼いで帰って来られるはずです。週に五回潜るとして、年収にすれば二億五千万ほどになりますし、この数字は上昇する見込みはあります。所得税や住民税、その他を差っ引いても年間一億の手取りです。よりどり見取りでしょう」


「皮算用ですが、それを目指して頑張ることにしますかね……とりあえず今日の収入は半分ですか? それとも、教育料としていくらか支払った方がいいですかね? 」


「マニュアル作りの手伝いをしてくれたってこともありますし私も一度は潜っておきたいと思っていましたので半々で良いですよ。思わない夜勤にはなりましたが目的は達成できたのでこれはこれで問題ありません」


 茶色多めの夜食を胃袋に納めると、散々歩いた足を休めます。今からなら帰りのエレベーターもそこそこ空いているようですし、仮眠をとるなら探索課に戻ってからダンジョン庁の仮眠室を使うでもホテルに戻って眠るでもいいはずです。高野君はダンジョン庁の仮眠室を体験してもらうことになるでしょうが、何事も早めに体験しておくほうがいいでしょうしね。


 二人ともが食事を終えて空箱を片付けた後、荷物を高野君と整理して確認したあとでエレベーターに向かいます。エレベーターまでは少し距離がありましたが、小西ダンジョンよりは近かったですね。後から作った分だけ便利な所に置けた、というところでしょうか。


 エレベーターで一層に上がって本日の夜間探索終了です。明日は荷物の受け取りがありますが、午前中にはそれほど差し当たって用事はないのでたまにはお寝坊でもしましょうかねえ。


 査定カウンターに荷物を渡してしばらく査定が終わるのを待ち、番号で順番が来たので受け取ります。本日のお賃金として百五十八万五千七百五十五円受け取ることが出来ました。五が多いですね。振り込みを依頼すると、高野君と探索課に戻ってマグネットを帰宅に戻した後、別れて私はホテルに戻ります。疲れたとまではいきませんが、気疲れはしましたね。


 今日の情報はエレベーターで上がっている間にメモしましたし、後は明日出勤してからでもしっかりマニュアルを作るための情報はキッチリ上げていくことができるでしょう。


 ホテルに戻りゆっくり湯船に入って今日はのんびり入浴を楽しむことにします。たまには泡風呂にして楽しむのもいいでしょう。


 しかし、予想以上の混み具合でしたね。もしかしたら今の小西ダンジョンも広さに応じてあの位の混み具合なのかもしれません。それを専属で一方的に探索出来た私たちはラッキーだったかもしれません。専用で潜らせてくれる約束しておいて正解でしたね。その後Bランクに上がるまでの間も自分達だけで使い込むことが出来たのもタイミングが良かった、ということでしょう。


 この先どうやって自分達だけで進んでもらっていくかは彼ら次第なので私が口を出すことではありませんが、無理しない程度に探索を続けてくれるのが理想ですね。それも見込んでマニュアルに書き記しておくべきでしょうかね。


 全身を泡泡にして綺麗に洗い流して、お肌の調子も整えると、後はもう寝るだけです。着替えは明日の朝にでもランドリーサービスに渡すことにしましょう。今日のところはスーツにウォッシュをかけて、それで終了です。


 さて……何時ぐらいまで寝ましょうかね。朝食はホテルで取りたいですから、その間には起きるようにしますか。ホテルの朝食は……九時まではやっていますね。シャワーを浴びてメイクする時間も含めて八時には起きるようにしますか。


 今日は一日よく働きました。明日は荷物の受け取りとマニュアル作り……途中で寝そうな仕事ですが、これも後腐れなく旅立つための置き土産としてしっかりと評価していきましょう。


 マニュアルが出来上がったらまたみんなに見てもらってより良いものにしていかないといけませんね。やることがまだある、というのは良いことです。後二週間ほどは忙しくて仕方ありませんが、土日の過ごし方を後二週間分、何かしら考えておかないといけないでしょうね。


 これもワーカーホリックって奴でしょうか。洋一さんのが感染したかもしれません。このまま土日も同じような状況が続く場合、こっそり潜るようなことをするかもしれませんから自重しないといけませんね。さて、考え事をしていると眠る暇をなくすかもしれません。睡眠は大事ですのでちゃんと取りましょう。私も若いとはいえ無理を重ねては年を取ってから苦労をすると言いますし……

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> 食事する分」 大盛り分の運動をする芽生さん > 水を出した」 所を見られた芽生さん > 【水魔法】が使える奴が体調を崩して」 水が濁ってしまった > 五十パーセント」 半径なのか面積なのかで…
ダンジョン庁が侮られるでもなく、公務員だからとサービスを求められるでもなく、ちゃんと助け合いの文脈になって良かった。
場所を選べばダンジョン内で水売りとか割と需要ありそうな商売ですよねえ 引退後の元探索者の働き口としても悪くなさそう まあ、水魔法使えなきゃダメってのがハードル高めですが
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