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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十四章:芽生ちゃん、頑張ってる!

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1499:中毒症状はありません……多分

 昼過ぎになり、電話を待ちわびながらマニュアルの追加作業。二十九層から三十二層までのマップ構成やモンスターの種類、戦い方などを記述していく。【雷魔法】が手元にあることにより、スキルを充分鍛えていれば橋の上でケルピーが飛び上がり襲ってくる状態になっても着地前に一撃で倒せることを明記しておく。


 流石にエルダートレントを【雷魔法】一発で倒すような洋一さんの真似はさせられないので、無難な攻略方法を記しておく。問題はどうやって倒していくかだけど……うん、私たちの攻略方法は真似できないから頑張ってとしか言いようがないですし、ここから先は頭の中の情報よりもネット上に散見されるエルダートレントの攻略法をいくつか引き出して書き並べておいて、対戦方法を選んでもらうほうが大事でしょう。


 一応官庁の中からのネット検索なので危ないサイトにはアクセスできないようになっていますが、海外も含めてどんな戦い方をしているかはちょっと興味があるので色々調べてみることにしましょう。


 調べものをしている途中で今泉君から通話。今七層を発ったので荷物回収よろしく、という内容でした。さて、お仕事しますか。戻ってきたら来週以降にはCランク試験も受けられる、ということも伝えなければなりませんし、【雷魔法】の強制強化もしなければいけません。仕事が一杯で嬉しいですねえ。


 早速一回分のドライフルーツとリヤカーを駆って七層へ向かいます。待ち時間は三十分少々というところでしょうか。やはり時間帯で左右されますが、三十分から一時間ほどエレベーター待ちの時間がかかってしまうのは仕方がないことなのでしょう。


 七層へたどり着き、荷物を全部リヤカーに移していつも通り七層のエレベーターの前で時間待ち。


「今日も荷物運びかい? 大変だねえ」


 顔なじみになった七層へ頻繁によく来る探索者に声をかけられる。


「まあ、これで給料もらってますからねえ。エレベーター代を考えても荷物の査定金額で充分カバーできますからこれはこれで便利ですよ」

「違いないな。エレベーターが出来る前はその量を自力で持ち上がって歩いてたんだ。どこの誰が最初に言い出したのかは知らないが、便利になったもんだな」


 ソウデスネエ。ダレナンデショウネエ。


「じゃあ、順番になったから俺達はいくよ。お嬢さんは気をつけてな。と言ってもセーフエリアだからセクハラ野郎には充分注意してくれよ」

「はい、そちらもお気をつけて」


 暇つぶしの会話にはなりましたからありがたくはありますが、こっちの方がはるか上の探索者ランクだと伝えたらどんな顔をするか、少し楽しみではあります。


 時間つぶしがてらマニュアルの続きをポチポチとスマホに入力していると、今泉君から連絡。一層に着いたらしいので、いつも通り横入りさせてもらってエレベーターに並びます。他の人たちもいつものことだとわかってくれているらしく、素直に入れてくれたので感謝です。


 一層に上がって今泉君達と合流すると、今泉君を連れて一層の端っこに行きます。


「今から今泉君には、【雷魔法】の限界にチャレンジしてもらいます」

「高野君から聞いてます。覚悟はできてますが今日とは思いませんでしたよ」

「詳しいことは後で話しますが、近々Cランク試験に参加してもらうことになるのでそれまでに一回はやっておこう、ということになりました。なら、早いほうがいいですよね? 」

「そうですね……よし、覚悟決まりました。最大出力と持久力、どっちを伸ばす方がいいんでしょうかね? 」


 今泉君は事前情報を仕入れていたようなので話が早くて助かります。早速、まずは長く細く出してもらいます。私が見たことあるイメージを今泉君に伝えて、今泉君がその通りにイメージを作って雷魔法を打ちだす。


 最初は指先からスライムに向かって一発で倒せる出力のイメージを調節してもらうと、楽しそうに周りのスライムをポンポンと打ち始めた。ちなみに待ってる時間が勿体ないので、他の三人には先に査定に行ってもらって四分割でレシートを出してもらうように頼んだので、こっち時間がかかっても査定や支払いの時間差をうまく吸収してくれるはずなので全体の行動にそれほど問題ないようにしています。


 みんなでボーっと見ているのもありだったかもしれませんが、それは四人で潜る時にいくらでもできるのでそっちはそっちでやってもらうことにしましょう。


 スライムを確実に吹き飛ばす威力のイメージを固めてもらったところで、最大出力をイメージして出し続けてもらう。今度は最大威力の持久力調査だ。多分一分ほどで力尽きるでしょうから、それが終わったらドライフルーツの開始ですね。


 予想通り一分少々の時間で最大出力のイメージを出してもらったところで今泉君が膝から崩れ落ち、頭を振るようなしぐさを見せる。多分視界が真っ白で前も見えていないんだろう。


「大丈夫ですか? 今のうちに慣れておいてくださいね。これから三十回はそれを味わってもらうことになります」

「中々きついですねそれは。でも、出来るようになった方がいい、これで確実に強くなるというのは聞いて理解しているので引き続きサポートをお願いします」


 前向きで良いですねえ。こう協力的だとこっちも鍛えがいがあります。早速今泉君にドライフルーツを一枚渡して齧らせます。丸ごと一枚をかみ砕いた今泉君がぶるぶる震えながらドライフルーツの効果を体感している。


「あぁ、これ、なんだろう、癖になりそう……」


 なんかやばい人を作り出したような気がしますが、まあいいでしょう。私も癖になって楽しんで修行してる人を一人知っていますし、他から自分でドライフルーツを入手して試してみる、という行為に及ぶかもしれませんが、そこは自分の財布と相談する、という形でなんとかやってもらいますかねえ。


「さあ、後二十九回頑張っていきましょう」

「よし、もう一回最大出力で最後の一滴まで絞り出すつもりでやるか! 」

「その意気です」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 三十回、きっちり終わらせて気持ちよさを三十回体験した今泉君が一回り成長しているのを時間できっちり確認し、最初は一分弱で終わっていた全力雷撃も三分ほどにまで伸ばすことが出来ました。これは充分に効果があったと言えるでしょう。


「お疲れ様でした。毎回やる……というほど在庫がないので一人スキルを覚えたら一回、ということにしておきますが、これでCランク試験も多少楽に進めるようになると思います。次に潜ってジャイアントアントにでも試してみて、実力が上がったことを実感しておいてくださいね」

「お付き合いありがとうございます。これで多少なりとも自信が付きましたよ」


 今泉君と二人ダンジョンを出て探索課に戻り、今泉君は支払いレシートを受け取って一階に戻って支払い手続きに行った。帰ってきたら反省会です。


 彼が戻ってきたところで反省会……というか今日の朝の朝礼で巽さんが言っていたことを繰り返し伝えます。パーティーのメンバーも、来週で九層往復が終わることと、食堂の弁当に大盛が出来るようになったことを喜んでいました。


「さて、来週二回の九層行きでCランク試験を受けられる、ということはある意味で既定路線ですので、ぜひとも体調を崩したりしないようにしっかり休んでください。後、今後の育成方針やダンジョンの攻略手法については共有フォルダにマニュアルとして下書き程度のものを作っておいたので、時間があれば目を通して、それから破棄しておいてください。現状部外秘ということになるのであくまで参考程度の資料ですが、外部に漏れるとダンジョン庁の鍛え方やダンジョンの特定の階層に人が集まったりでやりたいようにやれなくなる恐れがあります。それを防ぐためですね。あくまでこれは草案ですが、これをブラッシュアップし続けて私がいない間でも順調に探索が続けられるように期限までには作っておけるよう努力します」


 ふと、ここで手をあげる西さん。


「なんでしょうか」

「期限って前から行ってますけど、文月さんは何か理由があって今このダンジョン庁本庁にいるのですか? もしくは、既に出張する予定が入っているとかそういうのなんですか? 」


 そういえば説明してなかったっけ? それとも忘れているだけかな?


「一応私のここでの仕事は、皆さんがゴブリンキングを撃破してエレベーターを自由に使えるようになるまで、ということになっています。それが終わり次第、他のダンジョンへ戻ることになっています。その間に出来る限りのことを出来る範囲で皆に伝えて私の出来る限りの知識を叩きこんで成果物として置いていく、というのが仕事になっています」

「ということは、文月さんはゴブリンキングの撃破を確認次第、ダンジョン庁本庁からは離れる、ということになるんでしょうか」

「百%そうだ、とは言えませんがおそらくそうなると思います。そのほうがダンジョン庁全体のためになると判断されるでしょう。私自身もそうですが、阿南さんも高野君も本来自分が探索できる場所からかなり落としたランクでの探索活動になっています。本人が一番活躍できるポジションにそれぞれを持っていく、というのが合理的配慮というものではないでしょうか」


 場が一時、静まる。すると、今度は森崎君から声が上がる。


「文月さんは何層まで潜れるのですか? 純粋に参考として聞きたいのですが」

「最深部で土竜(どりゅう)の新藤さん達と気軽にハイタッチが出来るぐらいには、と答えておきます」


 正確に言うと居場所から最深層が小西ダンジョンにあるとバレてしまいますからね。最深層と言えば、そろそろフレイムサラマンダーの皮の査定価格が決まっててもいい頃合いですが、そのへんはどうなっているんでしょう。戻ったら真っ先に確認するべきでしょうね。


「時々行く最深層って六十三層なんですね……もうちょっと上のほうかと思ってました、一人ですし」

「腐っても旧B+ランク探索者ですから。高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンのダンジョンマスターとは顔合わせをしていませんが、他のダンジョンマスターなら何度か顔合わせをしてますねえ。一度会ってみたいですね、高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンのダンジョンマスター。会談ではお目見えしてましたが結構美人さんでしたし」

「シレオーネさんですか、たしかに美人でした」


 確かそんな名前でしたねえ。やはり実際にお目にかからないと他人の名前は覚えにくいところがあります。


「さて、そんなわけで皆さんには来週を乗り切って、その後のCランク試験に無事合格するべくしっかり休んでください。私はエレベーターで待ってる間に考えた文面をマニュアルに移してから帰ることにします。お疲れ様でした」

「はい、お疲れ様でした。お先に失礼します……と、一応食堂に寄ってから帰ろうかな。大盛メニューがどのぐらい大盛なのか確かめていきたいし、今日の夕飯が気に入ったら弁当で持ち帰って食べよう」

「あ、それいいな。俺もやっていこう」


 みんなは早速食堂の様子を見に行くようです。私はささっとスマホからパソコンにデータを移すと、文面を整えて……後はまた来週ですかねえ。ちょっと作業したい部分がありますが、満足いくところまで進めてしまうと帰るタイミングを逃しそうです。大人しく課題として残しておく事にしましょう。


 マグネットを……あ、みんなマグネットを移動し忘れたまま帰ってますね。もしくは帰ってきてから自分たちで反省会をする予定なのでしょうか。まあ、他人のマグネットを意思の確認をしないまま移動させるのも問題ですし、そのままにしておきましょう。


 とにかく今週も無事に乗り切れました。来週は荷物運びが二回と、気晴らしの探索を一回やって、残りはマニュアルのくみ上げに従事することにしますか。


 さて、今日は何を食べに行きましょうかねえ。ホテルの夕食でも良いですが、この辺りも食事をするところがダンジョンが出来る前と比べたらずいぶん増えたそうです。適当に入ってビール片手に何かおつまみでも良いですし、予約不要でお高級なお店へ行くのも悪くありませんね。


 食事は探索活動の中でもそれほど数が多くない楽しみの一つです。今日は結局運動をあんまりしていませんし、油ものは出来るだけ避けて通ることにしましょう。……そうすると一気に店が減りますね。この際品川駅まで出て、そこでお店を探すとしますか。


 食道楽も洋一さんの癖がうつってきたような気がしますが、美味しいものを食べて元気をしっかりつけるのは大事ですからねえ。精々ストレスの解消に役立ってもらいましょう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> 着地前に一撃で倒せる」 適正レベルではおじさんのみの所業 > エルダートレントを【雷魔法】一発」 ぶらおじさんを拡大解釈する芽生さん > 頑張って」 エルダートレント攻略法の記事が薄い > …
芽生さんももうエルダートレントのソロ討伐出来そうですけどね。 初回討伐の時もエルダートレントの攻撃はあまり苦にしてなかったし、単純に火力と持久力だけの問題だったので。
最大まで使い切ってからのドライフルーツ、癖になるには入手が難しいのがなー 芽生さんいるうちに堪能しておかないとね
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