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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十四章:芽生ちゃん、頑張ってる!

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1497:マニュアルの読み込み

 マニュアルを三種類、各マップとモンスターについて、スキルについて、そして人材育成方針についての三つを用意しました。


 このうち、各マップとモンスターについてとスキルについての二つに関しては外部に漏れても問題ない内容にはしてあります。ダンジョン庁として各マップの特徴やモンスターについて、それからスキルがどんなものか参考にしたい……と言われた際にダンジョン庁としてこれだけのまとめはしてあるんだぞ、という一般情報への公開も視野に入れて作ったので、機密情報に触れるような内容は記述していないはずです。


 かろうじて機密に触れるのが【鑑定】についてかな……というところですが、猛寅会(もうこかい)の南城さんが公開してしまえば機密でも何でもない話なのでいっそのこと盛り込んでおいたほうがいいだろうとして書きこんであります。【保管庫】に関しても外国語訳してある物を持って来ただけなので、オープンな情報だと言えるところでしょう。


 ただ、人材育成案についてはこれに沿って探索者も動くようになるとマップに対して探索者が散らばらなくなってしまいます。探索者の育て方みたいなサイトがあるように、その通りに実力をつけるために全体の階層に対する人口の偏りが発生してくると思いますのでこっちは非公開にしたほうがよさそうですね。


 人材育成方針について考える……というか、自分の辿ってきた道を思い返してみるが、自分は周りに他の探索者がいない状態で育ってきたので、現時点でどこの階層が混んでいるのか、どこが混んでいないのか、というものについてよく解っていない部分があります。


 少なくともわかっているのは、今でもゴブリンキングなどのボス戦に挑むパーティーは少なくはないことと、十九層と二十層はBランクに上がるための証拠品であるヒールポーションのランク3を集めるために人が集まりやすいこと。そして、三十層ではおそらくエルダートレント討伐待ちの順番が出来ているんだろうなあということぐらいは予想がつきます。


 それ以降は人数と状況によって左右されるでしょうが、とりあえず育成という意味ではBランクまで育成できれば十分だろうと考えられるので、そこまでのプランを色々と練っていかなければいけません。


 四層で地力をつけるのと九層十層を回ってお金を稼ぐのは問題ないとは思いますが、それ以降は一度回ってみないとわからない所ですねえ。どうしましょうか? 自分で潜ってみて感触を確かめるのが一番ですが、そこに割ける時間があるかどうかと言われるとちょっと厳しいですかね。


 悩んでいる間にみんなが帰ってきたらしく、足音がこっちに近づいてくる。どうやら二パーティーとも同じタイミングで帰ってきたらしい。


「おかえりなさーい」


「ただいまー。今日も頑張ってきましたよーほめてほめてー」


 ノリのいい世良さんが抱き付いてきたのでそのままいい子いい子してあげることに。しかし、油断をすると世良さんは私の胸に顔を押し付け始めたので引きはがす。


「どさくさに紛れてセクハラをするのはよろしくありません」


「はーい。今日は一日デスクワークお疲れ様でした」


 悪びれない世良さんに少しムッとしつつも、無事に帰ってきたのは確かなのできちんと褒めておく。


「ともかく無事に帰ってこれたのは何よりです。ソードゴブリンにはチャレンジ出来ましたか? 」


「できた。後、火魔法で一発だった! 」


「それは特訓の成果でしょうね。誇っていいですよ」


 後ろを見ると、いい子いい子されたい列が出来ており、こっそり男も混じっている。これは全員やらなきゃダメな奴でしょうか?


「はいはい、並んでないで散る散る。男子は普通にセクハラだから止めろ! 世良さんも怒られないうちに離れる! 」


 高野さんが散らしてくれたおかげで列は消滅した。ありがとう、今度ポーションをおごる。


「ところで見てもらいたいものがあるんですが、時間はありますかね? 」


 皆にマニュアルの出来栄えを確認してもらいたいので話題を早めに振っておく。なんだろう? と私のパソコンの周りに集まり始めたので、できたてほやほやのバージョンが1にも満たないパイロット版のそれぞれのマニュアルを読み込んでもらうことに。


「コピーして構わないのでそれぞれのパソコンで見てください。共有フォルダに入れてあります。あと、見たら破棄しておいてください。すぐに更新するし、残しておく理由がないので」


 私の手元には全て途中も含めて残してあるが、共有には常に最新の物をあげておくように心がけておかないといけませんね。マニュアルと手順が違う! という話になったらそれだけでも混乱の元です。


「ふむふむ……」


「なるほど、こういう理屈でソードゴブリンを相手にしていたわけか」


「さわり程度には聞いていたけど、身体強化のレベルアップには確かに丁度いいな」


 反応はそれぞれだが、おおむね好評らしい。彼らも理論的に構築された中でゴブリンを相手にしていたりソードゴブリンを相手にしていたり、という裏打ちがこの文章にある、と考えているらしい。


「スライム一万匹とゴブリン五百体が同程度だと考えると、今使えている身体強化のレベルは……こんなところか」


「スライムで腰を痛めた甲斐はあったってことだな」


 スライムもぶっつけの根拠もない理由ではあるが、スライム六千匹……いや、洋一さんだからそれ以上か。それだけの経験値と吸収した魔素の量がキーになって身体強化に気づくことになった。それを理論的に書き上げたのがこのマニュアル、ということになります。


 多分公的に探せば外国語の論文か何かでそういうものは目にするかもしれませんので車輪の再発明になってる可能性はありますが、日本語で文面を目にする機会はなかったので多分これが国内第一号ということになるんでしょうかねえ。


「これがB+ランク探索者の育成評価シート……というところかしら? 」


 阿南さんも戻ってきていた。午後から何をしていたんでしょう? まあ、出勤していたのは確かなので細かいことは聞かずにおきましょう。


「率直な感想が聞きたいところですねえ。完全に一からプランを練り上げるよりは、自分の辿ってきた足跡を基にして作り上げたほうがまだいくらかマシだと思いましたので、これは……私の探索者としての履歴書のようなものでもありますが」


 阿南さん的にはどうなのだろう。唯一私以外にこのマニュアルに関する部分を全部やり込んだと言えなくもない立場からの感想が欲しいところですねえ。


「そうね……Cランクに上がる段階ですでにスキルを持ってた文月さんならなんとかできるレベルではある、とは思うわ。ただ、今泉君達はまだスキル持ってないでしょう? そのあたりでどれぐらい苦戦するかが気になる所ね」


「ああ、それなら一つ心配は消えました。先ほど電話で連絡があって、【雷魔法】を拾ったので覚えましたと聞きました。私のケースと違って人数も充分居ますし、スキルが一つあるかどうかでかなり動きが変わってくると思います。その分楽はできると思いますねえ」


「それは……おめでとう、でいいのかしら? 」


「明日帰ってきたら褒めてあげてください。今夜は中で一泊のはずなので」


 後は阿南さん達が一つスキルオーブを拾えれば少なくとも一パーティーに一つはスキルを持っている探索者がいる、として安定するのは確かですが、そううまいこと拾えるタイミングに遭遇することはないでしょう。


 今回今泉君達が拾えたのは幸運中の幸運と言ってもいいはずです。九層はそれなりにまだ人が通る所なので、拾いやすさで言えば十一層十二層のほうがまだ可能性としては大きいでしょう。


 ああ、スキルオーブの欄にスキルオーブのドロップ条件とおよその確率について書き記すのを忘れていますね。早速マニュアルの改訂版を出さなければいけません。ノートパソコンのメモ帳にメモっておいて明日にでもやることにしましょう。


「しかし、こうやって実数値で比較して考えて……ってなると、まるでゲームじみてきたわね」


「まあ、ダンジョンが出現するまでは読み物かゲームの中の世界の話でしたからねえ。それにどっぷり両足突っ込んで抜け出せない所ではありますが」


「こっちも何かスキルが欲しいわね。どこかいい場所ないの? 思いつく範囲で良いから」


「そうですねえ……Dランクになるまでは何とも言えない所ですね。Dランクになってしまえば気になっている階層が二ヶ所ほどあるので、そこを狙うというのが考えられますが」


「どっちにせよ、まずはDランクになるのが優先で、それに一番早くてその間に強くなれるのが四層……というのは間違いなさそうね」


 阿南さんは諦めて持久戦の構えに入ったらしい。パーティーメンバーを叱咤するわけでもなく、今自分たちがやってる行為が最高速なんだということをこのマニュアルから察することが出来たらしい。


 五層にもっとモンスターが湧いているなら話は別だったんだろうけれど、いくら高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンといえども五層のモンスターの量は四層のそれに追いつくほどではないし、もし湧いている区域があったとしてもその区域に移動する時間分だけロスが発生するとこのマニュアルは教えている。


 そこまで計算して、そしてソードゴブリンの強さの分だけの倒した際の魔素放出量を加味して、時間当たりどれだけ強くなることができるか……という点での最適化の結果がゴブリン爆破ダッシュなのだ。


 だとすれば、ナチュラルにそれを自主的にやっていた洋一さんはどれだけ効率に心血を注いでいたのでしょう。それを間近で感想を聞いておいたのが効いていますね。


 あの時はそれ面白いんですか? と冷やかしていたものですが、実際にやってみるとこれがなかなかに効率的であることがわかってきた、というのが今更なところです。


「ともかく、Dランクになるまでの我慢……いや、その間も訓練みたいなものですか。ちゃんと強くなれてるなら充分やり続ける価値はあるし、ポーションが落ちる分だけ収入にもなるということですね? 」


「そういうことになるんでしょうね。三層でグレイウルフも込みで戦闘するよりも四層だけを出来るだけ早く回るほうが収入になるってことでしょう。早めに装備揃えてソードゴブリン相手に戦ってたほうがもうちょっとだけ早く追いつけたかもしれませんね」


「いやいや、それは無理でしょ。Fランクで四層は潜れないんだから。一層から三層で効率よくレベルアップしていくには、探し回る手間の無いスライムを大量に倒すのが最も楽ちんで、その為に熊手まで用意してスライムを潮干狩りして回ってたんだから」


 そういえば、世良さんたちはソードゴブリンに挑めるようになったということはEランクになったということになるんでしょう。


 一から始めて二週間強でEランクが早いかどうかはさておき、このままのペースならDランクになるのも時間の問題。そして一歩早く四層をグルグル回り始めた阿南さんのパーティーもそろそろDランクになってもおかしくありません。


 そうなれば、全員が七層に向けて宿泊訓練と九層での戦いや荷物をどうこうするか、という点についても色々と意見や議論、解決法を引き出す必要が出てくるんでしょうね。


 幸運なことに三パーティーとも監督役がゴブリンキングの撃破経験があるので、荷物の上げ下げについては問題なく出来るようになっている、というのが現状というところでしょう。このままいい雰囲気を維持しつつ探索に励んでほしいところですね。


「さて、探索課も全員Eランクにはなれたということで、全員Dランクになって深く潜るようになってきてからは予定が被ってくる可能性もあります。今後はみんなで揃ってダンジョンに潜るような形になるでしょうが、出来るだけパーティーごとに移動していくようにしてください。二パーティー合同で潜ると、いずれくるCランク試験やそのチェックをする時において普段と違うから調子が狂ったりする可能性があります。宿泊場所は全員同じところでも構わないとは思いますが、できるだけ各パーティーそれぞれで探索を行うようにしてください」


 念のため注意として全員に告げておく。マニュアルが全員に閲覧されたことで、今自分たちがやっている行動の裏打ちができた、ということはみんなに安心感を与えたらしく、今後も無事に探索を続けてくれそうですね。


 その後適当にマニュアルを閲覧し、誤字つぶしとその後の続きのマニュアルを閲覧していくみんなであったが、そこはまだ作ってる途中なので敢えて消した状態で見せた。


 続きは実際に体験しての今後のお楽しみということにしておいてもらいましょう。本当は実情を確かめてからマニュアル化したかった、というのが本音ですが。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
数こそ必要ですけど着実に経験を積めるスライムで経験値積むのを標準化させてから獲物を徐々に上げていって、ってのをしっかりマニュアル化したいですねえ
> ムッとしつつ」 手首を外す芽生さん > 男も混じっている」 両手首を外す芽生さん > 見てもらいたいもの」 すごく大きいものを見せる高野 > 阿南さんは諦めて」 後に、担当PTはスキルオーブ…
こんにちは。 男子「パフパフのチャンスが…( ´Д`)」←こうですねわかりますww
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