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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十四章:芽生ちゃん、頑張ってる!

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1492:ひとりでできるもん! 芽生ちゃんの場合

 入り込んだ六十四層、まず最初にワニ三匹とご対面。近いほうから順番にズバッズバッとご自慢の槍で切り裂いていきます。ワニは動きが速いですが、相対的に見れば私のほうが素早く動けるので噛みつかれることもなく、そのままワニをジャンプして飛び越して背中に一槍入れた後槍先から魔法矢で体の内部を直接攻撃。


 魔法矢のほうも出力は充分に余っているので爆発四散するワニを横目にしながら次に相対するワニのほうへ視線と体を向ける。遠距離から来るなら魔法矢を直接ぶつけてひるんだところを一撃で葬り去ります。


 三匹目も近づいてくる前に魔法矢だけで処理すると、ドロップ品である魔結晶を三つ拾います。一人で回っているときは魔結晶だけのドロップのほうが気が楽だというのも不思議な感覚ですが、実際に重さに比べての価値は魔結晶のほうがはるかに高いので仕方がないところです。


 もうこの三匹だけで今泉君達の二日間の稼ぎに近い金額を稼いでしまったと考えると、トップ層と半人前探索者の収入の差に歴然とするところがあります。これも次の八月の価格改定で魔結晶の査定金額が下がっていく、というのは確定事項らしいので、収入としては少し寂しいものになり、ポーションの占める割合が高くなっていくことでしょう。


 さて、次のモンスターを探しますか。索敵で近いほうを……と、二匹居るんで多分亀ですね。道なりに沿って進むとやはりいました亀二匹。まず両方の顔に水魔法をぶつけて、首を引っ込めている間にその穴から槍を差し込んで魔法矢で中身をずたずたにすることで楽に倒すことが出来ます。


 スキルの発射地点を槍先にすることで可能になる攻撃方法なので、みんなもスキルを覚える段階になったら武器の先や手元、色んな場所からスキルが発動できるように調節できるようになるのが一番でしょうね。


 同じ手順で二匹とも倒すと、また魔結晶だけのドロップ。素晴らしいですね、この調子で重たい荷物を背負わなくていいようにずんずん進んでいけると良いんですが。


 しばらく六十四層を歩き回りながら、マッピングをしていきます。前回来た時にある程度は把握していますが、せっかくなら新藤さんに地図のコピーをお願いするべきでしたか。流石に弁当を置いてきていますし、お昼には一度戻るのであと三十分ぐらいはフラフラ階段周りをまわっているだけでも充分な収入にはなるとは思います。


 深く潜っていく必要性もないので出来るだけ迷わなくて済むところと覚えている道筋だけ通って確実に懐を潤していきましょう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 お昼の時間になったのでさっさと六十三層に戻り、リヤカーに座り込んでお弁当を食べます。一人でのお弁当ですが、流石に慣れました。食堂へ行って食べることも少し増えましたが、他の部署でも一人ずつ抜けてご飯を食べて戻って交代でご飯へ行く……という流れなので、食堂でペチャクチャと喋りながら食事をとっている光景はどちらかと言えば珍しい話になります。


 これもダンジョンが二十四時間開いている弊害……害ではないですが、そう言う仕組みになっている、ということで納得するべき場所でしょう。そんなわけでぼっち飯になれた自分にとっては気楽なものです。洋一さんがいれば話しながらアツアツのシチューを食べながらこの後の予定を話しながら黙々と食べることもできるんですが、あれは便利過ぎるので例外と考えるべきでしょうねえ。


 お弁当をペロッと二個食べ終えて野菜ジュースで水分を取り、もう少し喉が渇いたのでコップに水を発生させてのどを潤すと、そのままリヤカーで少し仮眠です。三十分ぐらいゆっくりして胃袋が落ち着くのを待ちましょう。


 三十分の間にスマホの充電をしながら、お腹に無理が来ないポーズでポチポチとマニュアルの下ごしらえをしていると、六十四層から上がってくるパーティーの反応を見つけました。しばらくすると私に気づいて手を振ってきた。


「お、文月さんじゃないか。今日も一人で探索か? 」


 新藤竜也さんと新藤那美さんでした。今日はお二人だけみたいですね。


「そちらこそ、今日はお二人だけなんですね」


「他のメンバーは休憩、俺達は自己鍛錬かな。収入を気にせずスキル磨きと身体強化が上がるかどうかの実験も含めてちょっと確かめたいことがあってな」


「芽生ちゃん、食後の休憩? 」


 那美さんがスマホを覗き込もうとしていたため阻止。ダンジョン庁の機密なので見せられないと伝えると、少し残念そうにしていた。


「です。もう少ししたら昼からの作業に入ってゆっくり稼いで帰るつもりではあります」


「そっちの稼ぎは一人分で良いことになるのか……公務員なのに副業して大丈夫なのか? 後で全額供出しろとか言われないのか? 」


「そこはどうも説得が功を奏したらしくて、探索者である以上ダンジョン庁所属でも副業可能ってことになりそうという話です。なので私が今稼いでる分もギルド税以外は自分の懐に入る予定になってますね。そもそも私の場合、入庁前に稼いでいる分もあるのでどこまでを副業収入にするかどうか、という問題も発生しますし中々に難しいところではあります」


「なんでそんな面倒くさいことに首突っ込んだんだ? そのまま探索者でも良かっただろうに」


 人に言われてようやく気付くこの面倒くささ。でも、仮にダンジョン庁に入らなければここでこうやって雑談していること自体がなく、小西ダンジョンでひたすら穴倉に籠ってる作業しかしなかったはずですので、社会を知るという意味では大事なことなのでしょう。多分。


「まあ、社会に出たかったってのもありますし、ダンジョン庁の裏側を色々と見れるので勉強にはなってますよ? 詳しくは話せませんが」


 まだ詳しく話せるほどいろんな部署を巡って勉強をさせてもらったわけでもないし、今の所探索課専属だ。機会があったら他の部署の仕事も勉強させてもらうことになるかもしれませんね。


「それじゃ、こっちも今から昼ご飯だから、また今度な」


「またね」


 二人はテントのほうへ歩いていった。本当に二人だけで回っているらしい。それだけ強くなったってことですかねえ。まあ、一人で回ってる私が言えることではないんですが。


 二人と会話してる間にそこそこの時間つぶしが出来たことで、お腹のほうも落ち着いてきました。さて、続きの探索をしますか。今日の目標額は一億ですから、それに向かって邁進していくことにしましょう。もし土竜(どりゅう)で七十層まで到着出来た時には私も七十層へ直接飛び込むことができるようになっているはずですから、移動が楽で済みます。


 テントも何も置いてないので気軽なものです。日帰りで探索出来る、というのはいかに気楽なものであるかどうか、そしてどれだけ効率よく魔素を地上へ排出できるかという点で見ても、やはりエレベーターは他の誰かが思いついて実装していたのかもしれませんね。


 その時はエレベーターではなく転送魔法陣のようなものだった可能性もあるでしょうが、どっちにしろ移動設備の拡充という点では必要な行為でしょう。


 お弁当の空箱と野菜ジュースのパックをリヤカーに折りたたんで乗せたまま、午後のお仕事に向かいます。午後も変わらずワニと亀ですが、荷物が出来るだけ重くならないように願いながら……つまり、ドロップが渋いほうが美味しいという不思議な気持ちを心に持ちつつ六十四層を歩き回りましょう。


 ポーションが一本でも落ちれば充分美味しいはずですので、ポーション二本落ちるのを目標として頑張りますか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 一時間ほど戦闘を繰り返して、無事に一本目のポーションを手に入れました。その間に一往復六十三層へ戻って荷物を置きに戻る必要がありましたが、これで今日の目的の半分は達成しました。残り三時間ほど使ってもう一本手に入れて帰れたら今日一日の稼ぎとしては充分なものになります。


 ダンジョン庁にもその分だけのギルド税を納めることが出来ますし、ちゃんとダンジョン庁に利益をもたらすことが出来ている、と胸を張って言える所でしょう。


 さあ、気合を入れてもう一周行きましょう。一周して帰ってくると湧きなおしてくるようなルートを見つけたので、そのルートに沿って歩きます。一周三十分で荷物的にもちょうどいい感じに置きに行けるので荷物が多くなっても安心ですね。


 細かな動作でほんの二分程度のロスではあるものの、荷物が軽いまま戦闘が出来るのはとても大事です。背中が重くて戦闘が出来ないであるとか、うまく体が動かないのでは探索を阻害する要因でしかありません。他のパーティーや今泉君達が感じているようにドロップ品を多く持ち帰り過ぎないことも探索の秘訣であると言えるでしょう。


 まあ、今の所は私が荷上げをしてるので問題ないのですが、私がいない所でその作業をしていたらと考えると、帰り道のドロップはポーション以外捨てて帰ることになるのは目に見えています。そこはその内感謝してもらうことにしましょう。


 さて、戦闘に集中です。集中と言ってもここで一旦足踏みをさせられて散々戦った覚えのあるマップなのでかなり気を抜きながらでも戦える分、五十九層やそこらよりも戦闘経験は得られていると考えられます。


 ダンジョニウム合金製の槍はきっちり亀の甲羅も両断できるのでスキル縛りで戦ってもかなり余裕を持って戦うことが出来ますねえ。いやあ気楽な作業です。本当は七十六層辺りを水魔法でスパスパ切りながら荷物は他の誰かにお任せ……といった感じで進みたいものですが、ポーターが居ない今は荷物が邪魔に感じ始めたタイミングで上に戻る必要があります。


 でもまあ、六十四層のほうが六十五層よりも稼げる、というデータがありますし、各マップの最初よりは各マップの最後で戦闘を行うほうがモンスター密度も充分に多く、今周回するタイミングで気持ちいい程度に活動できているので文句は言わないでおきましょうかねえ。


 そこからさらに一時間ほど経ち、無事に二本目のポーションを手に入れて安心したところで六十三層に戻って荷物を置き、水分補給で一休み。これで今日の稼ぎは充分すぎるものになりました。後は延長戦で何時まで戦うかですかね。午後六時には職場に戻りたいので逆算すると午後四時半ぐらいにはここを発ちたいところです。後一時間半ほどですかね。気合入れて頑張りますか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 午後四時半になり、帰る時間になりました。結局三本目は出ませんでしたが稼ぎとしては充分でしょう。


 帰りのエレベーターでマニュアルの続きを書きつつ、今日の戦果がいくらぐらいになるかを計算する。概算では……一億六千万ぐらいになりますかね。三本目のポーションが出ていれば二億弱ってところでしょうか。これを七十六層なら一時間で稼げることになりますから、いかにポーションの収入が浮世離れしているかどうかがわかりますね。


 一層に到着し、査定カウンターまでリヤカーを引っ張って査定を受ける。白いリヤカーに気づいたのか、新人らしい査定嬢がこっそり話しかけてくる。


「いくらぐらい稼いだの? あなたもダンジョン庁職員でしょ? 」


「計算すれば解りますよ。楽しみにしておいてください。トップ層の探索者の稼ぎがわかりますよ」


 しばらく査定を待って、自分の番号が来たので受け取りに行く。今日の収入は一億四千六百八十万八千円になりました。まあ、一人で効率よく回れたとは言えませんが、このダンジョンでは相当稼いでるほうではあるんでしょう。


 リヤカーを返しに行ってから支払いカウンターで振り込みを依頼。これで今日のお仕事終……おっと、忘れていました。休憩室で冷たい水を飲んで、これで一仕事終了です。


 さて、部署に戻りますか。更衣室で槍を預けて探索課に戻るともうみんな揃っていた。


「おかえりなさい、どうでした? 最下層の様子は」


土竜(どりゅう)のお二人には会いましたよ。それ以外は貸し切りでしたねえ。おかげで伸び伸びと探索が出来ました」


「そう……ストレス解消にはちょうど良かったかもしれないわね。今度私も付き合ってもらおうかしら」


「いいですよー。行きたい階層さえ教えてもらえばお付き合いしますとも」


 気軽に約束をしてしまったものの、地図があるかどうかも含めて考えないといけないですね。ダンジョン庁では何層まで地図を売っているんでしょう?


「マニュアル作りのほうは大丈夫なの? 期限までに間に合いそう? 」


「まあ、私がこっちにいる期限は今泉君達がゴブリンキングを倒すまで、ということに延長されましたので、それまでには形になるように作り込んでいきますよ。真中長官が読んで興奮して探索した気分になれる程度にはきっちりやる予定ですが、後で皆さんにも読んでもらってわかりやすいかどうか、欲しい情報がちゃんと載っているかどうかも含めて作り込みを深めていく必要がありますね。後はそれとは別にスキルに関するマニュアルも作る予定ですし。しばらく仕事には困らなさそうですね」


「そう、ならよかったわ。じゃあ、また明日よろしくということで今日は解散で。文月さんは明日はデスクワーク? 」


「その予定です。エレベーターの待ち時間でポチポチと書いてた情報をマニュアルに落とし込んでいく作業がありますのでそれに一日従事する形になりますかねえ」


「こっちはそろそろDランクになれそうなのよね。そうなった場合装備品やテントやマットなんかを買いに行くことになるだろうから、アドバイスがあったらよろしくね。じゃあお疲れ様」


 皆がマグネットを退勤に移しながら次々に帰っていく。私も今日は帰りますかね。夕食は何を食べられるのか楽しみですねえ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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この世界での、探索者を副業として行なっている人は、高収入なので法人化しているはずなので、どのようにしているのかは興味深いですね。また、公務員の営利企業への従事禁止項目をどうするのかなど、お金命の芽生さ…
( ◠‿◠ )
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